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■ファンタジーの世界へようこそ!!■

-東京ネズミーランドの思い出-

 

 

引き出しの手紙を整理していたら懐かしい思い出が出てきたので、ここで晒します。

 

 

夢と希望とファンタジーの国。東京ネズミーランド。「千葉にあるのに東京とは・・・」と言われる皆様ご存知のあの場所です。

もう10年以上前にもなりますが、そこで稀有な体験をすることになります。

 

 

 

それは、まだ私が大学生の頃、北海道に住む叔父家族が遊びに来ました。

私が幼少の頃、叔父には本当に良く遊んでもらっていたので、せっかくの上京にそのお礼でもと考え、

叔父の子供(当時8歳くらい・男)を連れて、東京ネズミーランドに行きました。

私の住む場所から、車で30minほどの場所にある、東京ネズミーランド。

小雨が降る、肌寒い冬の日でした。

 

 

 

2人で色んなアトラクションに乗りました。

北海道育ちの純朴な8歳の少年は、初めての東京ネズミーランドに大興奮。

それにつられ、少年の純朴な気分に戻る私。

邦題「宇宙山」というジェットコースターや、海賊になって探検するアトラクションで楽しい時間を過ごし、

そして、私もまるで、幼児を連れたネバーランドのマイケルのように一緒になってはしゃいでいました。

 

 

 

そして、それは、邦題「大きな雷山」というアトラクションを終えて出口から出てきた時に起きました。

 

 

 

 

 

興奮冷めやらぬ、我々の前に1匹の大きな着ぐるみが登場したのです。

少年は、邦題「大きな雷山」ジェットコースターでの興奮もどこ吹く風、

駆け足でその「黄色くて、大きな耳がたれた」犬の着ぐるみに駆け寄ります。

 

 

 

いや、これはあくまでもイメージ画像ですから・・・・

↑イメージ画像

 

 

 

 

やさしいお兄さんの私も、急いでカメラを準備して、少年の後ろをついていきます。

そこは、現実社会を超えた、まさに夢の空間。自分が二十歳を超えていることなぞ、とうに忘れて

その8歳の少年と同じようにファンタジーな時間へと変わっていたのです。

 

 

 

 

しかし、本当のファンタジーはこの後起きたのです。

 

 

 

 

 

 

 

犬の着ぐるみの周りにはあれよ、あれよと、客が集まり始めます。

あるものは写真を撮り、またあるものは握手をし、抱き合いながらも楽しい時間が着ぐるみを中心にして広がっていきました。

 

私も乗り遅れまいと人の波を掻き分け、いとこの少年を追っかけながら、中心にいる犬の着ぐるみに近づきます。

気がつけば、子供の波に囲まれた僕と犬の着ぐるみが円の中心になりました。

 

 

 

少年とのツーショットを撮ろうと、カメラを構えたその瞬間です!

 

 

 

 

(着ぐるみの中から小さく声が聞こえて)てっ、てめぇー!!!

 

の一言を発し、

 

 

 

突然に

 

 

 

 

バシッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

そうです。犬の着ぐるみに、右ストレートを受け、私の顔面直撃です。

その瞬間、まるで「明日のジョー」の1シーンのように、構えていたカメラと私のメガネがスローモーションで吹っ飛びます。

同時に周囲は、Mr.フリーズにでもやられたかのように、一瞬にして空気が固まりました。

 

 

 

 

殴られた私も何が起きたのかわからないのですが、ひとまず殴られ地面に落ちたメガネを採りに行きます。

 

 

回りも、私も何が起きたかわからないその空間で、片方のレンズがなくなっているめがねをゆっくり拾いあげ、

その犬を眺めると、今の瞬間をそ知らぬ顔で仕事にもどり、フリーズしている子供たちを解凍しようとしているではありませんか。

そして、気がつけば、殴られた衝撃で、私の眉間からは血が流れ始めました。

 

 

 

その瞬間、感情のコントロールが得意な私も、さすがに体内中の血液が脳に達して、鼻と耳から湯気が出ました。

そして、大勢の子供に囲まれる犬をめがけてモウ突進!!

 

 

 

 

 

 

「うりゃー、てっ、てめぇー!!何しでかしてんだよぉー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで、フセインを見つけたアメリカ兵の勢いです。

犬の着ぐるみを剥がそうにも、上手くはがれず、もみ合いになっていると、

その騒ぎを見つけた「保安官」がやってきました。

 

 

「なっ、なぜ、保安官!?」

 

 

 

 

そう、ここは夢の国ネズミーランド。私が居た場所は、邦題「西洋ランド」にあるので、そこにいる従業員は保安官姿もいるのです。

 

 

保安官:「どっ、どうしました?」

 

私:「どうもこうもねぇーよ!!こいつが突然に殴りやがって、このざまだ!」

 

保安官:「だっ、大丈夫ですか?」

 

私:「だいじょうぶなわけねーだろ!!いますぐこいつに謝らせろ!てめぇー」

 

保安官:「あっ、いや、まぁー、ひとまず、眉間の血を治療しましょう」

 

 

もう、まるで、その場が一つのアトラクションのような賑わい。

肩につけてる無線でなにやら話をしている保安官に抑えられる私も、まるでそこのアトラクションメンバーの一員のような状態です。

もう、この瞬間、連れてきたいとこの少年のことなど、すっかり忘れておりましたが、不安な顔をした

いとこの少年が私のそばに寄ってきて、小さく

 

 

「大丈夫?」

 

と。

 

 

「おう!心配するな!きちんと責任は取らせる!」

 

と意気込みながら、周囲の心配の声の中、2人の保安官に治療室へ連れていかれる私と少年。

その対面には、他の保安官に連行される犬の着ぐるみが人の波に消えていきました。

 

 

 

 

恐らくネズミーランド史上初めての連行劇でしょう。

 

 

 

 

 

 

治療室ではまずは謝罪の要求を行います。当然です。

北海道から来た純朴な少年は、いとこの叔父さんが、たくさんの人の前で

犬の着ぐるみに殴られたんです。血を流す額を見て、8歳の少年は小さく怯えてすらいました。

ひたすらに事の顛末と、事態を説明し、まず、治療はいいから、

 

「とにかく、あの犬の着ぐるみに入っているヤローをここに連れて来いっ!」

 

と治療室に来た背広組な男に言い続けるのですが、一向にきちんとした返事をしないで謝るばかり。

 

そんなやり取りを何度か繰り返すうちに、厳しく迫る私に耐えかねあぐねて

その背広組がポツンと一言発しました。

 

 

 

「おっ、お客様。えっーとですね・・・・

当ネズミーランドでは、着ぐるみのように見えるあの犬は

本物の犬なんです。中に人は入っていないんですよ。」

 

 

 

「!!!!?????」

「はぁ〜??????!!!!!!本物ぉ〜?

 

 

 

 

もう、この段階で、ぼくは本当にファンタジーの世界に来たことを確信しました。

 

 

 

被害者が、眉間から血を流し、かつ、謝罪を要求したら、背広組はひたすらに

 

着ぐるみに人間は居ない・・・・ものでして..」

 

 

もうね、こいつら、なんかやってんじゃねぇーか?というAcidな疑惑すら出てくるくらいにファンタジーな回答です。

 

 

その後、何度と無く同じ謝罪を要求しても出てくる回答は同じ。

 

「人間がやったことではなく、犬が行った」との繰り返し・・・・・

 

 

……. .. …………

 

 

 

 

 

その場では一向にファンタジーな話し合いしか進まない私は、冷静さを戻すためにも

ファンタジーな背広組に、後日きちんと話し合いましょうと言い残し、治療だけを受けその場をあとにしました。

 

 

いとこの少年にしてみても、青天の霹靂。何が起きたか判らないという顔をしています。

少年は不安そうにこちらを眺め、せっかくの東京見物をかわいそうにと心配する私は、

そんな少年の心をやさしく気丈に癒しながらも、冷静に事態を思い出しながら車のハンドルを握り帰途に着きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、2日ほど過ぎたある日、郵便ポストに1通の手紙が届いていました。

 

 

それが↓

 

「おいおい、おめぇーは徳川綱吉かよっ」と突っ込みたくなります。なんせお犬様だもんなぁ〜・・・・・・

 

 

「!」

 

 

 

驚きました。詫び状という公の書類においても徹底したファンタジーな文章。

特筆すべきは、

 

 

 

 

 

この場においても、加害者はなんです。

 

 

 

 

結局、加害者からのお詫びは一つも無く、送られたのはこの手紙と優待券。

優待券いっても、ほんの20枚ほどのアトラクション使用チケットだけ。

メガネの請求はきちんとしましたが、何が欲しいわけではなく、謝罪を待てど、変わらずファンタジーな回答。

 

 

 

 

 

かっ、彼ら、いよいよ本気(きょうき)です。本気(しゅうきょうてき)にファンタジーです。

 

プロのファンタジア(もうそうぞく)です!!!

 

 

 

 

 

 

いやね、もうここまで真剣だと、さすがの私も、背筋が凍りました。

なるほど、あそこの商売が世界であんなに人気なのは、アトラクションがファンタジーでも

キャラクターがファンタジーでもなくて

あの世界そのものが、まさにファンタジーの塊なのね・・・・と…..

 

 

しかし、腹の虫が収まらない私は、詫び状が来た旨を、電話で叔父に報告したところ

 

「あっ、そか。うん。あっ、いやね、その・・・・」

 

 

と、なんとも歯切れの悪い声が聞こえるではないですか。

 

 

「いやね、子供と話をしていたら、どうも、子供が犬のぬいぐるみのケツを蹴っ飛ばしたらしんだよね」

 

「あっ、いや、ほんのいたずら心なんだろうけどさぁ」

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 

一発で理解しました。

背の小さい少年が、犬のケツを蹴っ飛ばして、振り返れど、着ぐるみの人は視野が狭くてよく見えない。

相当、痛かったのか、振り返れば、そこに佇むのは私・・・・

 

 

少年の襲撃を、私の襲撃と勘違いをした着ぐるみが、私を攻撃してきたというのでした。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

客が集まる中、犬との壮絶な言い争いとっくみあい。

お互いがガチンコ真剣勝負で、しゃべらぬ犬にひたすら罵声を浴びせた若き日の私。

プロに徹したファンタジーで大人な対応をする背広組。

 

 

 

犬の中の人がその後どのような人生を歩んだか、背広組がどのようになったかはわかりません。

その少年は、いまや20歳になり、サーフィンが趣味のさわやか好青年へとなり、

私は次なる目標を探す日々・・・・・

そうして過ぎし忘却の彼方となったあの、昔の懐かしい、青春の思い出が机から出てきたので、

ふと振り返ろうとしてみた次第です。

 

 

 

教訓

 

 

「ファンタジーに入りては、ファンタジーに従え」

 

 

 

 

 

大人の階段を登った若い日の寒い冬の1日でした。