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【経済】

高速道路無料化 [民主]地方から段階的に実施 [政府・与党]受益者負担を堅持

2009年8月11日 朝刊

 民主党が政権公約の目玉の一つに掲げる「高速道路無料化」。政府・与党が3月から地方で自動料金収受システム(ETC)搭載車で実施している「休日は上限1000円」は大きな反響を呼び、高速道路料金への不満の大きさを裏付けた。ただ、債務返済の原資や今後の建設費をどう確保するのか財源をめぐる難しい問題もはらむ。 (小松田健一)

 Q そもそも、なぜ高速道路は有料なの?

 A 建設費を借金でまかない、料金収入で返済する仕組みだからだ。開通によって目的地への所要時間が短縮するなど利便性が向上するため、恩恵を受けるドライバーにコストを払ってもらう「受益者負担」の考え方もある。

 Q 日本の高速道路料金は高いの?

 A 高速道路を有料としている主要国と比較すると、二〜三倍の水準。用地取得や山間部のトンネル建設などで費用がかさむためだ。旧日本道路公団時代に、需要が見込めない路線を次々に建設したことも一因だ。

 Q 債務返済が終われば無料になるのか。

 A 本来は路線ごとに返済が終われば無料化されるはずだった。しかし、一九七二年に導入された「全国料金プール制」によって、全国の高速道路を一つとみなしているため、全路線で有料の状態が続く。これには「黒字路線の利用者へ不採算路線の赤字を押しつけている」との批判がある。

 Q 民主党はどのように無料化する考えなのか。

 A マニフェストなどによると、一気に無料化すれば渋滞に拍車をかける恐れがあるので、二〇一〇年度は地方の路線から先行実施する。路線ごとに利用実態を見極めて割引率を拡大するなどして、段階的に首都高速と阪神高速以外は無料化する方針だ。

 Q 政府・与党の主張は。

 A 民主党は無料化に要する財源を年間一兆三千億円と見込む。しかし、具体的な債務返済の道筋が示されておらず、「車に乗らない人にも負担を押しつける無責任な政策だ」と批判している。

 Q 無料化した場合、どのような効果を期待できるのか。

 A 物流コストが下がり、企業活動が活発となることで家計の改善や消費促進を期待できる。観光振興もプラスに働きそうだ。一方で「休日上限千円」では、フェリーや鉄道、高速バスなど競合する交通機関の利用が減少した。無料化で深刻な影響が及ぶ懸念もある。

 Q これからの高速道路建設はどうなる。

 A 無料化すれば、必要な路線は国費で建設することになる。これまでのような「ムダな道路建設」には一定の歯止めとなりそうだ。しかし、高速道路建設を求める声は現在も地方を中心に強い。客観的で公平な建設基準を確立する必要がある。

 

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