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【09総選挙 三重ニュース】現場から(3)医療 地域の救急体制崩壊2009年8月13日 「この辺にはもう住めない」。志摩半島の先端にある町では最近、そんな声が聞かれる。地元で唯一の総合病院である県立志摩病院が、救急の受け入れを次々に縮小しているからだ。隣の伊勢市の病院までは、救急車で曲がりくねった山道を経て1時間半も走らなければならない。 山川義春さん(58)は弟がバイクで事故に遭った6年前を思い出す。頸椎(けいつい)損傷の大けがだったが、運ばれた志摩病院で脳神経外科医の治療を受け、無事に回復できた。「素早い処置で助かった。伊勢まで運ばれていたらきっと後遺症が残っていた」と思う。 いまの志摩病院は、状況が違う。脳神経外科は2005年に2人の専門医が津市の三重大付属病院に引き揚げて以来、救急の受け入れができない。 医師の定員49人に対して現在、研修医を含めても33人。特に内科系医師が不足し、3月に休日・夜間の救急受け入れを大幅に減らした。昨年、担当医が1人になった小児科も救急と入院を休止したままだ。小西邦彦院長(65)は「すぐ処置が必要な患者でも、伊勢に回さなければいけないことがある」と苦悩する。 人数が減れば、残った医師の負担が増す。疲弊した医師がさらに病院を去るという悪循環。地域の救急医療も、そのあおりを確実に受けている。 ◇ きっかけは、04年に始まった新臨床研修制度だった。新人医師が研修先を自由に選べるようになり、好条件のそろった都市部へ流出。毎年50人以上の新人がいた三重大付属病院では05年、研修医の採用数がわずか3人で、全国の大学病院で最低となった。人手不足に陥った診療科は、地方へ派遣していた医師を引き揚げざるを得なかった。 「将来設計を意識させる研修が足りなかったのでは」。卒後臨床研修部は5年間の反省をもとに、個々の研修医の目標に沿って選択できるプログラムを用意した。その甲斐あって、来年の研修希望者は定員を大きく上回る40人以上。県内の医療を担う人材確保に、ようやく道筋をつけつつある。 4月に「地域医療研修センター」ができた御浜町の紀南病院など、地方と協力して研修医を育てる試みも始まった。昔のように、医局の強制的な人事権で地方へ医師を配置することは難しい。竹田寛病院長(60)は「発想を転換し、へき地医療を理解してくれる人材を育てたい」と言う。 医師不足に悩むこの国で、いかに地方に医師を残すのか。処方せんを描く取り組みは、ようやく緒に就いたばかりだ。 【臨床研修制度】 医学部を卒業した新人医師が基本的な診療能力を身に付けられるよう、2年間の研修が2004年に義務付けられた。研修先はマッチング制度により自由に選べる。 全国の募集定員が実際の採用数より約3000人も多く「医師の偏在につながっている」との指摘があり、厚生労働省は定数削減などの見直しを進めている。 ◆各党マニフェスト自民 医師数を増やし思い切った補正予算で地域医療の再生。診療報酬は来年度プラス改定 民主 医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬を増額。医師養成数を1・5倍に 公明 医療費と医師数の水準を引き上げ。研修体制の見直しと医師派遣システムの強化 共産 医学部定員を1・5倍に。診療報酬の改革。国公立病院などへの支援を強める 社民 公的病院の統廃合・民営化は行わず、小児・産科・救急などの地域医療を守る
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