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【東京】扶桑社版教科書 杉並区教委が採択 激しい議論もなく2009年8月13日 二〇〇五年に引き続き、区立中学校で「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した扶桑社の歴史教科書を使うことを決めた杉並区教委。委員が激しく議論した四年前と違い、十二日の定例会は一時間で終わった。扶桑社版の採択に反対する市民団体は「十分な議論が尽くされていない」と批判の声を上げた。 午後二時からの区教委定例会。二十席の傍聴席の抽選に並んだのは三百人を超えた。抽選に漏れた人は傍聴用に開放された区役所五階の一室で、定例会の音声だけを聞いた。 採択をめぐっては、安本ゆみ委員(52)が「日本とアジアの関係を示した記述が少ない」として、帝国書院の教科書を選択。一方で大蔵雄之助委員長(77)、宮坂公夫委員(76)、大橋辰雄委員(41)、井出隆安教育長(62)の四人は扶桑社版を選んだ。 四年前も扶桑社版を推した宮坂委員は「事実の列挙だけではなく、当時の人々の考えを読み取れる」とし、「つくる会」が主導するほぼ同じ内容の自由社版についても「素晴らしい」と絶賛。井出教育長や大蔵委員長らは「二年後に新しい学習指導要領に基づく教科書が出るので、従来通りでいい」とした。 この日夕方、市民団体「杉並の教育を考えるみんなの会」は区役所近くで集会を開催。参加者たちは「扶桑社版の採択に反対する委員の意見を無視している」などと憤った。 同団体は十三日、「扶桑社版は侵略戦争を正当化しており、子どもへの教育的観点に欠ける」とした抗議文を区教委に提出し、採択撤回と手続きのやり直しを求める。 (小川慎一)
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