★ 2009/08/13 ★ カムラ・コーポレーションの職場では、今日も和気藹々とお仕事に励んでいます。 ティリスちゃんは頑張っていますが、もうひとつ、お仕事ができません。 マカロン・ラディッツは遊び人なので、頑張っていないし、お仕事ができません。今日も遅刻してきて、椅子をくるくる回して遊んでいます。会社に何しに来ているのでしょう。 そんなカムラ・コーポレーションの期待の星はレオンくんです。他人の話を聞かないへんな人なのに、やたら仕事が出来ます。みんなの倍くらいこなします。なのに、間違うことは半分以下なのです。どうやっているのでしょうか。 今日も他人の話きーてません。仕事をしては成績表を眺めてによによしています。あやしいです。 それでも、そんなレオン君は職場で「神」と呼ばれ崇められています。 ティリスちゃんがノルマをこなせなくて、泣きながら残業していたりすると、によによしながら手伝ってくれたりするので、あっという間に終わったりするので、彼がなぜ神と呼ばれるか、わからないではありません。へんな人ですが、優しい人です。 でも、「ありがとう」と言ってもによによしているだけで、まともに挨拶も返しません。ふっ、とか、かっこつけて去っていきます。超へんです。 そして、ティリスちゃんは知っています。彼は、職場に張り出されているのとは別の成績表を作っていて、他人を手伝うと自分の欄に違う色で成果を足して、ますます、によによするのです。 「何してるの?」と聞くと、マイ成績表を指し示して、ますます、によによしています。 ティリスちゃんは、レオンくんは成績がいいのが嬉しいんだなぁと思いました。 そんな職場に、二人目の神が配属されました。青天の霹靂でした。 配属から三日後には追いつかれ、ムムっと、レオン君は頑張っていましたが、二週間後には抜かれてしまいました。 レオン君は見るからにガッカリしました。 ティリスちゃんは最近、成績表を悲しそうに見るレオン君がちょっぴり可哀相です。 でも、そんなに悲しそうにしなくてもいいのに。レオン君が出来ることに変わりはありません。 ついでに、レオン君が抜かれているのは、レオン君が他人を手伝った成績を足さないからであって、本当のレオン君の出来高は、もう一人の神にそうそう劣るものではありません。 レオン君があからさまに成績表を気にしていて、ガッカリしているので、誰からともなく、手伝ってくれた分はレオン君の成績に足したらどうかと言ってみたり、手伝ってもらうのを遠慮しようとしたのですが、レオン君は変わらず、ティリスちゃんが泣きながら残業していると、手伝ってくれるのでした。そして、やっぱりマイ成績表にしか、足さないのでした。 やがて、給与がベースアップする日が来ました。 みんな、楽しみでワクワクしています。 給与明細を見て、ティリスちゃんも「おお!」と喜びました。月給が5000円増えています。しめしめ。 レオン君も給与明細を見て、久々に、嬉しそうにによによしていました。きっと、たくさん増えたのでしょう。 しかし、神なレオン君の給与はいくらなのかと、興味津々、明細を見せてもらったティリスちゃんはびっくりしました。 レオン君はみんなを手伝って残業するので、総額は多いのですが、基本給は変わりません。 「あれ、神なのにオレとおんなじ?」 「当然だろう? 同じ部署で同じ仕事をしているのだぞ。それに何を言っている、おまえより多いぞ。ふはは」 総額を指し示して、レオン君はによによしています。レオン君が嬉しそうなので、ティリスちゃんもほっとして、嬉しくなりました。 そんなティリスちゃんの耳に、もう一人の神がマネージャーに抗議する声が聞こえてきました。 何故、他の人と同じようにしか上がらないのか、何のための成績表なのかと、ガミガミ言っています。 「昇給しているぞ、いいじゃないか? おまえはどれだけ欲しいんだ」 お、レオン君が割り込みました。 「普通に考えて、私達には倍もらう権利があるはずだろう!? こんなザルな管理をしていたら、出来る社員が他社へ逃げるぞ! おまえ、あいつと同じ給料だってことに納得出来るのか!」 彼はびしっと、マカロン・ラディッツを指し示しました。彼は今日も、椅子をくるくる回して遊んでいます。 た、確かに。 「……? 意味不明だな、倍の仕事が出来る社員に、倍の給与を出したら、その社員のコスト対効果は他の社員と同じになってしまうじゃないか。魅力的な社員じゃなくなる」 おぉ。なんか難しい単語を出してきやがりました。レオン君のくせに。 「そんな、二次元で考えるな! 他の社員は、やる気があれば私やおまえの仕事の仕方から学べるだろう!? 本来、私達には成果以上の価値があるんだぞ!」 「……? まあ、いい。ラディッツは職場の名物だからアレでいいだろう。おもしろい奴だぞ、うっかり遅刻しても、ラディッツがいるから気が楽だしな」 ――ぶはっ! なるほど、マカロン・ラディッツは見た目以上に、職場の成績に悪影響があるのかもしれません。レオン君とかが真似をするのかもしれません。 遅刻とかサボリとか? やっぱり、駄目なのでしょうか。ティリスちゃんはとりわけ、ラディッツが嫌いではなかったのですが。 「おまえな」 「私達の給与を上げるためには、ティリスたちの給与を下げないといけないだろう」 ぎゃあ! 「成果と勤務態度に差があるんだから当然だろう。ちゃんと、評価にも差がつかないと頑張る人間がいなくなる!」 「……? 別に、私はいなくならないが?」 いや、レオンはへんだから! レオンの方が好きだけど! しかし、もう一人の神の言い分がもっともなので、ティリスちゃんも含めて、みんな、居心地の悪い思いでした。みんなの給与のベースアップは、神達の成果をたかった結果と言われたら、何にも言えない気持ちです。 「まあ、いい。ラディッツの給与を下げたら、あいつは路頭に迷うだろう。いいじゃないか別に、これで」 確かに、ラディッツとか、すごく路頭に迷いそうです。むしろ、解雇されないのが不思議です。 しかし、彼がいるから気が楽なのは、みんな同じだったりしました。自分より出来ない人がいるのって、正直、ほっとします。神のおかげで稼げるとしても、神の仕事を見ていると落ち込みます。 結局、カムラ・コーポレーションの給与のベースアップは一律で、変更されませんでした。 もう一人の神は成果主義の会社に移り、いなくなりました。 カムラ・コーポレーションにとってそれが良いことだったのか、悪いことだったのかは、わかりません。 でも、レオン君は以前のように、によによ、によによと成績表を眺めるようになりました。今日もによによしています。 今日も、レオン君の成績がいちばんです。 ★ おしまい ★
格差是正に、沙にょはけっこー賛成です。別に、格差はなくていいと思うんだ。何がハッピーエンドかは、メンバー次第だと思うので、日本に格差が必要なのか、不必要なのかは、沙にょにはわからないけどね。 カムラ・コーポレーションには必要なかったようです。 ただ、格差是正を強制せよって話になると、また別の問題が出てくるし、話がややこしい。強制まではしなくていいような。社内格差(社長からパートまで)がほとんどない会社は法人税の税率をちょっと有利にしてあげるとか、そういうのでいいんじゃないかな。最低賃金1000円っていうのは乱暴なような。 社内格差を是正すれば税率が安くなるって、中小企業に生き残りの道を開くことにもなると思うんだけど、どんなもんだしょ? |
★ 2009/08/13 ★ 「なあ、レオン、どうしよう。年金が大変なんだ」 「どうした」 「少子高齢化で、働いてる人とお年寄りの人の数がどんどん近付いてて、もうすぐ、団塊の世代がもらう立場になるだろ? 火の車なんだよ。月々14,000円納めてもらって、お年寄り世帯に月々66,000円配る国民年金、もう無理なんだ。厚生年金なんてもっと無理なんだ」 ティリス姫は決算報告を見ながら泣きそうです。 「ああ。大臣が大丈夫だと言っていたぞ。60歳から給付する約束だったのを、65歳からにしただろう? 団塊の世代には給付しないつもりに違いない」 「ちょ! 問題を五年、先送りにしただけじゃんか! 五年後にどうするんだよ、同じ問題に直面するぞ!?」 「70歳からにする」 「いや待てそれ!」 「10年後には80歳からに…」 「ざけんな!!」 仕方ないなと、レオン君が態度を改めました。 「大丈夫だ、大臣が新しい手を打った」 「え、どんな!?」 目を見張るティリス姫に、レオン君が得意げに言います。 「年金というのはだな、一家の大黒柱である男たちが加入してきたものだ。つまり、おじーさんに払えばいいわけだ。そこでだ。男女平等社会をうたい、女たちも働かざるを得なくなる『男たちの低収入』を実現し、専業主婦を許さない世界を実現した。なに、家事育児はこれまで通り女がするしな、女は年金を払える程度の収入があればいい」 「待てぇえい! 女性をなんだと思ってるんだよ! だいたい、それ、女性労働者がおばーさんになる頃どうすんの!?」 「ぬかりはないと言っていたぞ。共働き夫婦は生活が苦しいので子供をつくれない。作っても少ないな。年金は確実に破綻するが、子供を作らなかったおまえたちの責任だと言えばいい」 「ざけんなぁああ!?」 まったくもって仕方がないなと、レオン君が態度を改めました。 「なに、女性労働者がおばーさんになる頃を待たず、年金は火の車だ。安心しろ」 「なんにも安心できねーよ!」 「すでにM党大臣が手を打つつもりだ。G党大臣には任せておけんと言ってな。M党大臣がなぜ、異様に外国人や外国人労働者を我が国に入国させたり、参政権を持たせたりしようとしていると思う」 「え!? そんなことしてんの? 初耳だけど?」 「マニフェストには書いてないな、外国人を国内に入れたり、外国人の生活や権利を保障したりしたいという政策は、有権者の反感を買いやすいからな。こっそり、政策集の方に書いてある。『こんなはずじゃなかった』展開になりそうなわけだが、ぬかりはないぞ。M党を選ぶのは国民だ、政策集も公開されているのに、マニフェストしか読まなかった国民が悪いのだ、それが民主主義というものだ、と言えばいい」 ティリス姫は鳥肌が立ちました。 「あのさぁ、オレ、どんどん大臣が嫌いになってくるんだけど…」 「なんでだ、年金のためだぞ」 「はぁ!?」 「女性を納付者に加えても足りないから、外国人労働者を招いてだな、年金にも加入できるようにすればいい。で、払わせるのだ」 「待てよ! その人達がお年寄りになる頃どーすんの!? 加入させたら、給付もしないといけないじゃんか!」 「馬鹿め。遥か先の未来ではないか、大臣たちは化け物じゃないんだ、その頃には豊かな老後を十分に楽しんだ上で、この世を去っているな」 つまり、責任を取る気はないということですか。 「その頃にはその頃の大臣がいる、その頃の大臣がなんとかするのだ」 「いや……どう考えても、バブル期に大儲けしてた人達が、就職氷河期や不景気に苦しんでる若手を延々と食い潰す構図なんですけど……」 「そう思うか?」 「思うに決まってるだろ!」 「実は、僕もそう思ってな。年金はもう諦めて、オレオレ詐欺もなくならないし、現物支給にしたらどうかと言ってみたのだが」 「お?」 「配給制というのは不自由な代わりに無駄がないので、低コストで回る。戦時などによく採用されるのだ。昨今の不景気で小売店が潰れて、買い物に苦労しているお年寄りも多いし、月々66,000円の国民年金で二人暮しは生活が苦しかろうし、お年寄りに支給する現物の生産とか配達とか、雇用対策にもなるしな。ちゃんと、働き手に金が回るようになる」 「おお、おまえにしてはまともな」 「うむ、しかし、老後に見返りがある約束で高い年金を納めてきたのに、今さら現物支給で我慢せよとは何事かと、相手にされなかった」 ティリス姫は困り果てた顔で、立ち尽くしました。 「そんなこと言ったって、仕方ないじゃんか。今の若手だって一生懸命働いて納めてるのに、お金稼ぐのが昔より難しくなっちゃったから、お金がなくて結婚も出来ないカップルとか、結婚しても子供をつくれない夫婦とか、いっぱいなんだぞ。我慢してもらうしか……」 「うむ、若手としては、現物支給でもあるだけましだと思うがな。我々は、どんな見返りも受けられそうにないわけだしな。しかし、月々30万も40万も給付される約束で、そーゆー額を納めてきたじーさんたちは、納得できないのだ。じーさんはじーさんでも、国民年金のじーさんたちは喜んでくれると思うのだがな」 「……」 ティリス姫はいよいよ困り果てた顔で、ため息をつきました。 「なぁ、三十年後にどーなんの?」 「日本人労働者と外国人労働者が入り乱れて年金破綻にくだを巻く、地獄絵図が見える気がするな。三十年後の大臣がどうにかするんだろう」 「どうにかなんの?」 「三十年後の大臣がどうにかする」 「それって、出来るとか出来ないとか、ぐだぐだ言う前にやれ! ってやつ? カッコイイ口ぶりだけどさ、こんだけ、最初から破綻が見えてる年金を押し付ける口実に使われてもなぁ……破綻が見えてるなら、外国人労働者は入れて欲しくないなぁ……破綻した時の混乱が増すっつーか、血みどろの地獄絵図になるっつーか、不景気で派遣切りにあって祖国に帰るに帰れない外国人労働者の問題も解決してないのに、明るい未来が見えないな……」 ニュース畑から裏を取らずにネタを拾っています。間違いがあったら、こっそり教えて頂ければ訂正しておきます。 何が言いたいかって、ネットでの発言なんて信用ならないものだと思うよ? ということ。 沙にょの発言も含めてです。 考えるきっかけにするべきであって、丸呑みにするのは禁物です。 でも、沙にょはこのレオティ談義に間違いを見つけられなくて、背筋が寒いです。沙にょが何か間違ってることを祈ります。 ◆ このページは選挙前には削除する予定です ◆ |