きょうのコラム「時鐘」 2009年8月13日

 お盆の「1000円高速」が始まり、帰省がピークを迎える。ふるさとに向かう人も、出迎える方も、心が浮き立つ

作家の村松友●(示へんに見)さんが小紙「かげろう日記」で、茶屋街のおかみの「ながいこって」というあいさつを取り上げていた。3年前に会った人にもさっき会った人にも、お座敷ではそう言う。「さっきも、あんやと」「この前もお世話になって」などと、連れの客が余計な勘ぐりをするような野暮は言わない

逆に、初対面の作家に「いつも、ありがとう」と、あいさつされたことがある。人違いされたと思って初めての取材だと告げた。「だけど、書いた物を読んでくれているんだろう。それなら礼を言わなきゃ」。こんな心配りもある

「ながいこって」「いつも、ありがとう」と、帰省の折にも、そんな言葉が交わされる。半年前に会ったばかりでも、待つ家族には「ながいこって」である。久しぶりの対面でも、「いつも、ありがとう」と相手を思いやる言葉が出る。ふるさとでの再会は格別である

不景気風がやまぬ折だから、なおのこと。そんなあいさつで、互いに元気を注入したい。