埼玉県狭山市で起きた殺人未遂事件を審理する全国2例目の裁判員裁判で、さいたま地裁(田村真裁判長)は12日、殺人未遂罪に問われた同県吉見町の解体工、三宅茂之被告(35)に懲役4年6月(求刑・同6年)の実刑判決を言い渡した。判決後、裁判員6人と補充裁判員2人の全員が会見し「人の人生を決めることは興味本位ではできない。市民には重い制度だ」などと語った。うち2人は実名で会見に臨んだ。
裁判員を務めたのは30代から67歳までの男性6人。実名を明かしたのは、30代会社員の菊地健治さんと、補充裁判員を務めた団体職員の颯佐(さっさ)道彦さん(53)。東京地裁で開かれた1例目の裁判では、会見に応じた裁判員全員が匿名だった。
颯佐さんは「人の人生のある部分にかかわった。重大な責任をおなかの中にとどめて生きるつもりです」と真剣な表情で話した。
男性会社員(35)は裁判員が量刑判断することの難しさを挙げ「(制度の)直すべきところは直していくべきだ」と述べた。
生涯続く守秘義務について、菊地さんは「誰かに言えれば審理の時に楽だったと思う」と率直な感想を語った。67歳で最年長だった無職の男性も「完全に守れるかは疑問だ」と述べ、守秘義務が裁判員の負担になることを浮き彫りにした。【浅野翔太郎、中西啓介、銭場裕司】
▽さいたま地裁の田村真裁判長の話 台風の影響により、裁判員候補者、裁判員、補充裁判員の方々には、来られるだけでも大変だったことと思いますが、制度の趣旨をご理解いただき、ご協力いただけたことを感謝しております。3日間で非常に充実した審理を行う新しい経験ができ、今後の刑事裁判の充実につなげていくことができればと思っています。
▽さいたま地検の長崎誠次席検事の話 裁判員のご尽力に心から敬意を表します。
今回の判決は、新たな制度の下で地検として工夫に努めた主張・立証に、おおむね裁判員のご理解が得られたと考えています。今回の経験を踏まえ、今後もわかりやすく、迅速かつ的確な主張・立証に一層努めたい。
▽間川清主任弁護人の話 執行猶予が認められず残念。量刑は求刑の7~8割になり、従来とあまり変わっていない。裁判員は被告の事情を理解し、共感してくれたと思うが、検察と弁護側で争いがあった「事件までの経緯」をどう事実認定したのか、判決理由で説明してほしかった。評議の内容を全部知りたい。準備しなくてはならないことがたくさんあり、弁護人としての負担はすごくあった。
毎日新聞 2009年8月12日 15時08分(最終更新 8月12日 22時02分)