ヨーロッパで進められた水道事業の民営化に伴い、人件費や設備投資のコストダウンにより水質管理などがおざなりになったとして、民営化への批判が高まった。ベルリンを初めドイツの3つの都市を取材し、民営化がどのように進められたのかを行政、市民、企業の立場から検証。さらにヨーロッパの中でいち早く民営化を果たしたイギリスの例を取り上げ、民営化の是非を問う。
ドイツ北部キール市では2001年に民営化された。市議会は民間の力を借りなければ公共事業は競争力を失う危機感を募らせていたが、民営化で多くの人員削減が行われたうえに売却先のファンドが破綻してしまい、市は巨額の損益をこうむることになった。
ベルリンではドイツとフランスの大手エネルギー会社に株の49.9%を売却。しかし、事業の運営権も譲ったため、水道料金は値上がり。しかも、会社側は効率化を求め水道管の保守や修理を減らした。ベルリンの水源を担う川や湖には浄水場で処理しきれないレントゲンの造影剤や薬品が流れ込んでおり、水道水を危険に晒していると科学者は言う。
イギリスの水道サービスは1989年に民営化され、政府は価格調整機構のOFWATを設立し、水道料金の規制とサービスの質を絶えずチェックしている。しかし、ロンドンではヴィクトリア朝時代から使い続けている老朽化した水道管からの水漏れが激しく、建物の中・高層階には水圧が低いため水の供給が滞るケースが多い。水質の汚染による魚のメス化も進んでいた。
原題: H2O up for sale –The privatization of a human necessity
制作:
Kern TV(ドイツ)
2005年