自民、民主両党が公表した衆院選マニフェスト(政権公約)について「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)が開いた検証大会で、経済、労働団体や民間シンクタンク計9団体が採点を公表した。
評価は、両党が掲げた公約についてみる「政策分野」と政権をどう動かすかの「政権運営ビジョン」の2分野について100点満点で採点したが、両党とも低い点にとどまり、辛口の結果となった。
「政策分野」の平均点は、民主党が53点に対し、自民党は47点。民主党が自民党に勝るとしたのは4団体、自民が勝るとしたのは3団体で、残る2団体は同点だった。民主党は、主要政策の工程表や所要額を明示したことが評価されたといえよう。
70点の最高点を与えた連合は「国民へのメッセージが明確。政策の基軸を『生活者重視』に切り替える内容」と評価した。日本青年会議所も「有権者に分かりやすい」とした。
しかし、子ども手当や公立高校実質無償化など家庭への支援策には、ばらまき批判や財源への懸念を指摘する声が依然として強かった。経済同友会は「国民に聞こえの良い政策のみ羅列」と厳しく批判。「大き過ぎる政府になりかねない」と不安視する声も出た。
一方の自民党は、外交・安全保障政策や現実的な経済成長政策などは評価されたが、工程や財源が不明確と減点された。民主党政策を受けてのばらまきもマイナスとなった。
PHP総合研究所は「構造改革路線の総括がなく、変わる路線は不明瞭(めいりょう)」として、国民に十分な説明がないまま小泉改革路線からの政策転換が行われたことを批判。次のマニフェストに生かすためにも、厳しく検証する必要性が強調された。
今回初めて採点された「政権運営ビジョン」の平均点は、民主党が52点で、自民党は35点。全団体が民主党に軍配を上げた。自民党は政府と与党との二元体制から「脱却に向けた姿勢が見られない」(構想日本)と批判され、政治改革の姿勢も後退とされた。政権交代を目指す民主党は国家戦略局や行政刷新会議の設置など、官邸主導による一元化を目指した内閣運営方針が高く評価された。
両党のマニフェストに足らないと指摘されたのが、中長期の成長戦略や日本の将来像である。マニフェストによって日本をどんな国にしたいのかが不透明だ。課題に踏み込み、具体的な論戦を深化させてほしい。
1962年から5次にわたり策定された全国総合開発計画(全総)に代わる「国土形成計画」が完成した。国による画一的な開発中心の全総への反省から生まれた新たな指針である。
国土形成計画は二本立てになっている。全体の方向性を示す全国計画に加え、地方独自の取り組みを尊重した広域地方計画を定めた。国主導から地域の主体性を重視した国づくりへと、方向転換する契機にしたい。
昨年7月に策定された全国計画には、東アジアを中心とする国々との連携による成長力維持や、災害に強い国土整備などが盛り込まれた。
今回、約1年遅れでまとまった地方計画には、中国、四国、首都圏など8地方ブロックごとに今後おおむね10年の地域づくりの基本方針が掲げられた。各地の自治体は実施態勢づくりなどの具体的対応を加速させる。
地方計画は各ブロック内の自治体や経済団体、国の出先機関などでつくる協議会が原案を作成。住民や有識者らの意見を募って修正を加えた。
例えば中国圏の計画では、岡山、広島両県で自動車の次世代技術の研究を集約する。日本海と瀬戸内海を結ぶ広域幹線道路網の整備促進なども図る。
地方分権の一環で道州制導入が検討される中、地方計画を踏まえた各種事業の具体化は、県境を越えた連携や調整などが実際にどこまで機能するかを占う試金石となろう。地方の力量が問われる。
重要なポイントは、役割分担と相互補完による共生の理念を貫けるかどうかだろう。各自治体が地元への利益誘導にとらわれれば、計画通りの成果は得られまい。一方で国は地方への権限や財源の委譲を徹底し、地方が独自性を発揮しやすい環境を整える必要がある。
(2009年8月11日掲載)