|
きょうの社説 2009年8月12日
◎小松−上海便の不振 「北陸発着便」の共通認識を
中国東方航空が経営危機に陥り、就航5年目を迎えた小松−上海便に黄信号がともり始
めた。東方航空と上海航空は先月、経営統合を発表しており、上海航空が運行する富山−上海便も同じように廃止や減便の危機にあると見なければなるまい。08年度の平均搭乗率が約40%にとどまった福島便の場合、福島県が中国人団体ツア ーの参加者1人当たり2万円以上を補助するなど、テコ入れに懸命だが、需要拡大の裏付けがない財政援助は税の無駄遣いになる。石川、富山両県は、安易な支援に踏み込まぬよう求めておきたい。 東方航空が上海航空との経営統合で、小松便や富山便をどう見直してくるかは不明だが 、今後は両路線を「北陸発着便」として考えていく発想が必要ではないか。たとえば、小松空港から上海へ出発して、富山空港に帰るという使い方ができるようになれば、たとえ減便されたとしてもダメージは少なくて済む。航空路線については県域にとらわれず、北陸発着便という共通認識を育てていきたい。 小松―上海便(週4便)の08年度の搭乗率は過去最低の47・6%、富山―上海便( 同2便)は41・6%に低迷している。6月開港の静岡空港に就航した東方航空の上海便も同月末までの搭乗率が約40%に低迷し、松山便は08年度の搭乗率が45・8%だった。上海と地方空港を結ぶ路線はどこも苦戦している。不採算路線の見直しにあたって、東方航空はしがらみを一切排し、現実主義的な対応をしてくるはずだ。こうした状況で、無理やり搭乗率を上げたとしても徒労に終わるだろう。 昨年秋、富山−福岡便が廃止されたことにより、小松−福岡便や小松―仙台便などは、 北陸三県で利用されるようになった。同じように富山―大連便、富山―ウラジオストク便は石川、福井県からの利用も少なくない。小松、富山両空港を「地元空港」として使いこなせば良いのである。 中国市場は将来性はあっても、中国から観光客が大挙して来ることは当分ありえない。 無理をせず、需要に応じた便数に落ち着くのを待つしかあるまい。
◎静岡で震度6弱 試される「東海」への備え
東海地震の可能性が長年指摘されてきた静岡県で、最大震度6弱の強い地震が発生した
。家具の固定化や建物の耐震化、自主防災組織の100%近い組織率など、他の地域以上に予算を投じて備えを講じてきた「地震対策先進県」で、これまでの準備はどこまで生かされたのか。今回の地震を通して東海地震への備えが試されたともいえ、国や静岡県は被害の復旧を急ぐとともに、対策の効果を細部にわたって検証する必要がある。たとえ被害が軽減できた部分があったとしても、発生が予測される東海地震は震度7と ケタ外れの規模であり、今回通用した対策がそのまま役立つとは限らない。「震度6弱」の経験をさらなる耐震強化につなげ、北陸でもその教訓を生かしたい。 今回の地震では負傷者が100人を超え、東名高速などの交通網がまひし、断水などラ イフラインの故障も相次いだ。けがをした原因は家具の下敷きになったり、棚からの落下物などで、十分な備えがあれば防げたケースもあったかもしれない。大動脈の東名高速は急ピッチで仮復旧の作業が進められており、そうしたノウハウは今後に反映できるだろう。 いずれ大地震が起きると言われても、周到に準備をしておくことは難しい。東海地震の 場合は発生が指摘されて久しく、どこかで気の緩みが生じてもおかしくはない。訓練やマニュアルと現実が違うことが分かっただけでも、これからの対策に生きてくるはずだ。 気象庁は11日の地震について発生メカニズムやマグニチュード(M)から東海地震に は結びつかないと判断したが、その可能性が遠ざかったわけではない。東海地震は国の中央防災会議の想定では、M8級が予想され、今回の地震で推定されたM6・5よりはるかに規模が大きい。被害は死者約9200人、建物全壊は約26万棟に及ぶと予想され、発生確率は「30年以内に87%」とされている。 今回の揺れと生じた被害は、いつ起きてもおかしくない東海地震に備える覚悟をあらた めて迫っているといえるだろう。
|