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政治の課題・府内の現場から:09衆院選・京都/1 医療 /京都

 ◇産科医確保めど立たず 南丹圏、常勤医1人産休で分娩数制限

 ◇「国の取り組み」が不可欠

 亀岡市、南丹市、京丹波町の南丹医療圏で、中核病院「公立南丹病院」(南丹市八木町)の産婦人科が今月、常勤医1人の産休入りに伴い分娩(ぶんべん)数の制限を始めた。3人の常勤医でこなしていた月40件前後を、里帰り出産を中心に10件程度削減。年内の予約は既に埋まっている。

 来年1月に同病院で第3子を出産予定の亀岡市の女性(35)は6月初め「今なら予約を受けられるが、遅くなれば難しい」と言われた。他には通常分娩可能な民間診療所が市内に1カ所あるだけ。上の子2人が早産で同病院に入院しただけに女性は「他の施設は考えられない」という。

 同病院は常勤医の産休に備えて今冬から府立医大や府当局に補充派遣を要請してきたが、めどは立たない。このままでは、外来を止めないと緊急手術ができない。1人月10日前後だった当直は非常勤医の助けを借りても12~13回になる。「これでは残る常勤医2人ももたない」と西田勇人事務局長は言う。

 「以前は医局に頼めば良かったが、今はそこに人がいない」と、ある自治体の医療担当職員。新臨床研修制度で研修先を選べるようになったのが大きな要因だ。産科医相手の医療過誤訴訟の多さも背景にある。「現場の苦労で維持されていて、1人がやめれば崩れる所は他にも少なくない」

 西田事務局長は「訴訟を起こされても医師に負担がかからない体制も必要。医師確保は一病院では無理。国として考えてもらわないと」と話した。

 06年12月の国の調査では、人口10万人当たりの診療医師数は府内平均272・8人。全国平均206・3人を上回る。だが、六つの圏域別では京都市・乙訓が343・8と突出。以下は中丹200・4▽南丹165・3▽山城北153・1▽丹後151・6▽山城南114・4と偏りが大きい。救急搬送も08年度は、重症患者の2・7%(196人)は受け入れ先が決まるまで4回以上の照会を要し、最大では10回も。188人は救急車が現場に30分以上滞在した。

 冬場は一晩で50センチ以上の雪が積もることもある宮津市日ケ谷地区。高血圧症の男性(82)は隣接地区の診療所で投薬治療を続け、何度か起きた発作では約20キロ離れた府立与謝の海病院(与謝野町)に緊急搬送された。「重い脳疾患になったらどうなるか」と心配だ。

 同病院脳神経外科はかつて3人いた常勤医が3月末でゼロになり休診。7月から外部の非常勤医で週2回だけ外来を再開したが、重症や救急の患者は舞鶴市や兵庫県豊岡市の病院に搬送される。

 同地区など丹後半島山間部から両市まで1時間以上。男性は「命に直結する科の専門医は圏内の中核機関に複数配置する体制を法律で整えて」と訴える。【太田裕之、瓜生貴一】

   ×  × 

 次期衆院選の投開票まで20日。緊急に解決すべき政治課題は少なくない。府内の現場を見つめた。

毎日新聞 2009年8月11日 地方版

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