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ベビーサイエンティスト 動く、見る、遊ぶ、泣く…存在が研究の源

7月29日15時27分配信 産経新聞

ベビーサイエンティスト 動く、見る、遊ぶ、泣く…存在が研究の源
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(写真:産経新聞)
 赤ちゃんをよく見てみると、自分からいろいろな運動をしたり考えたりしていることが分かってくる。教えてもいないのに、音がする方に顔を向けたり、動くものに合わせて視線を移動させたり、興味がある方向に手を伸ばしたりする。

 ベビーサイエンティスト(赤ちゃん研究員)の仕事は、まさに自由に動いたり、何かを見たり、遊んだり、泣いたりすること。彼らの存在そのものが研究の源になっているのだ。

 このため、乳児について研究している専門家は、赤ちゃんの微妙な視線の変化やしぐさにとても注目している。何を長く見ているか(選好注視)、飽きるほど同じものを見せた後で新しいものを見せたらどういう反応をするか(馴化(じゅんか)・脱馴化)などから、なんとか赤ちゃんの考えていることを知ろうと努力しているのだ。

 同志社大学赤ちゃん学研究センターの加藤正晴・准教授は「実験の方法を変えると、結果も変わる。赤ちゃんの研究は方法との戦いです」と説明する。最新の実験では、赤ちゃんの脳の血流を測る「光トポグラフィー」や、赤ちゃんの見ている場所が詳しく分かる眼球運動計測などもあり、まだ話さない赤ちゃんの能力が少しずつ解明されてきている。

 日本赤ちゃん学会の研究者には、小児科学、心理学、教育学、ロボット工学などさまざまな分野の専門家が所属しているが、共通している研究方法は「赤ちゃんをよく見ること」だという。

 家庭での育児は、ミルクをあげたり、おむつを替えたり、あやしたりと、赤ちゃんの世話をしていることが多い。でも、ちょっとだけ赤ちゃんを眺める時間をとってみてほしい。同学会理事長の小西行郎・同志社大学赤ちゃん学研究センター教授は「赤ちゃんを観察すると、新しい発見があるはず。そうすると育児を楽しむ余裕ができるでしょう」と呼びかける。

 育児や保育の現場で、長い時間赤ちゃんと暮らしていると、「どうして赤ちゃんはこんなしぐさをするのかなあ」などの疑問がわいてくることがあるだろう。その疑問から研究が始まり、観察と実験(赤ちゃんとの遊び)の積み重ねが赤ちゃん学研究の基礎になっている。実際に、研究者は、保育・育児現場に入り込むことで、新たな研究テーマを見つけているのだ。

 家庭や保育園でも、「赤ちゃんと遊んであげる」と大人側が積極的に働きかけるより、赤ちゃんが何をするのかをよく見てから、赤ちゃんからの働きかけに対して反応してほしい。赤ちゃんは自発的に動いたり声を出したり考えたりと、さまざまな行動を示していることが分かり、今以上に赤ちゃんに対して興味がわいてくるはずだ。(武部由香里)

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最終更新:7月29日15時27分

産経新聞

 
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