発想の転換で医療の「バリュー」面に着目を−財務総合政策研究所
財務総合政策研究所の「持続可能な医療サービスと制度基盤に関する研究会」(座長=貝塚啓明・東大金融教育研究センター長)はこのほど、昨年12月から今年3月までの議論の成果を報告書にまとめた。このうち「病院経営が抱える諸問題」と題して一章を執筆した亀田隆明・医療法人鉄蕉会亀田総合病院理事長は、医師や看護師の絶対的不足など医療の供給体制の問題や医療費抑制政策による不採算経営などを指摘。問題解決のためには、医療を「コスト」の面からとらえるだけでなく、「バリュー」としての側面にも目を向けるといった発想の転換が必要だと強調している。
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同研究会は「国民にとっても、関係者にとっても安心のできる医療サービス供給体制」と「適切な費用負担の下での持続可能な医療保険制度」について検討することが目的。昨年12月から今年3月までに4回の会合が開かれ、現状分析や諸外国との比較を基に議論した。
同研究会のメンバーは、貝塚座長をはじめ、大森正博・お茶の水女子大大学院人間文化創成科学研究科准教授、上昌広・東大医科学研究所特任准教授ら計9人。
報告書は第7章まであり、▽高齢化と医療需要の変化(第1章)▽医療関係者の論文(第2−4章)▽医療制度分析(第5−7章)−の3部構成。同研究会のメンバーが検討結果を踏まえ、分担執筆している。
このうち、上氏は「医療現場の諸問題」の章の中で、病院の医師不足の原因は長時間勤務や非正規雇用の拡大などにあると指摘。また、看護師や薬剤師などのコメディカルも不足しているが、医療費削減による事務職員などの雇用の減少から、事務作業を医師や看護師で担わざるを得ないとして、こうした現状を問題視している。さらに、医療費削減により生じた問題に対して「診療報酬ではなく補助金や基金の設立で対応する手段では、医療現場は荒廃する」とした。
大森氏は「日本の医療制度の問題点と医療制度改革の方向性について」と題して執筆。「日本の医療制度は社会経済の変化に十分に対応できていない」と指摘した上で、限られた資源の中で増加する医療費に対応するための「プライマリ・ケア医療制度や専門医制度の導入」や、「公的医療保険制度の積立方式への移行を検討する必要性」などについて論じている。
報告書は財務省1階の閲覧室で読むことができるほか、同省ではコピー用の原本貸し出しも行っている。
詳しくは、財務省03(3581)4111(代表)まで
更新:2009/08/10 17:39 キャリアブレイン
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