きょうのコラム「時鐘」 2009年8月11日

 自民47点、民主53点という「通知表」が載った。経済、労働団体や有識者グループなど9団体が政権公約を採点した。平均点は辛い

点数を付けるのは、なかなか厄介である。どっちの顔も立つようなさじ加減や、時に身びいきが入り込む。低い点しか与えない一徹者もいる。満点でない限り、採点される側は大概、不平、不満を抱く

金沢出身の仏教思想家・鈴木大拙は、学生には決まって65点を与えた、と教え子から聞いた。京都・大谷大の人気教授で、教室にはよその大学からも大勢が詰めかけた。授業の最後はリポートの提出である

その評価が全員65点。「おかしい」と、文句が出たが、大先生に直談判する猛者などいない。合格ギリギリの点数で、みんな引き下がったという。全員65点は、学校の勉強などはその程度だよ、という大拙の厳しさと思いやりとが交じる採点だろう

行き過ぎた期待も失望も、共に戒める。大拙にならい、私たちの政権公約の採点も、そう心掛けたい。それにしても、「識者」の点数の低いこと。まだ絵に描いたモチの公約にして、軒並み「落第点」とは、ふがいない。