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2009-08-04
■[anime]「エフエム芸術道場」細田守×村上隆「サマーウォーズ」対談・採録(後編)
2009年8月2日放送分。発言は一部を省略、簡略化しています。
- ――家族の食事シーンというのは、すごい若いアニメーターの方がやられたそうですね。
- 細田:濱田高行さんという、まだ20代後半なんですけど。親戚一同で集まってお座敷でご飯を食べるという、あまりアニメに詳しくない人が見たら普通のシーンかもしれませんけど、非常に大変で手間がかかって観察眼が必要で、あらゆるアニメーターの力を発揮しないと不可能なシーンなんですね。今回、テーマ的にもチャレンジせざるをえないときに、「僕がやります」と言ってくれて、最後まで目標を見失わずやり切ってくれたことは、本当に幸運なことだったんですね。で、アニメーションっていうのは、そういう幸運が数珠つなぎのように、濱田さんの他にも優秀なアニメーターが集まってくれてね。物量が大変なものがありますので、幸運に恵まれないと巧くいかない。
- ――現場の幸運度でいうと、これまでの作品に比べるとどうですか。
- 細田:うーん。これまでも本当に幸運に恵まれて作品を作ってきたんですけど、できた作品を観てね、「細田とだったらやってもいいかな」という、ささやかな信用を得て、そういう幸運の積み重ねで来ていると思うので、最新作の「サマーウォーズ」というのは幸運の巨大な裏打ちで作られたと。
- ――うんうん。
- 細田:さっきの棟梁論で言えばさ、映画監督って、もっと専制政治っていうか、黒澤明監督のようにスタッフを支配して鍛えぬいた果てに、何かが産まれてくるというのが一般的なイメージじゃないですか。確かに僕はそういうのとは違うかもね。
- ――このまえ「蟲師」の長濱監督にお話を聞いたんですが。監督ってひとことで言って何ですかって尋ねたら「お願いする仕事です」って。
- 細田:うんうん。
- ――その時に僕、専制君主でやるのかなというイメージががらっと変わって。で、この前「SUPER FLAT FIRST LOVE」というのを作ったとき、細田さんを凄いと思う見方が変わって。建築を好きな人が建築を見ると面白いじゃないですか。
- 細田:あー、なるほど。
- ――細田監督が、何をどう思考してここまで来たのかが見えてきて、それで、さらにへこんだんですよ。
- 細田:何を言ってるんですか。
- ――大変でしたよ、けっこう。
- 細田:でもね。アニメって、観るのも面白いけど、作るのも面白いんですよ。ものすごく大変なんですけどね。それを村上さんが感じてもらったってのは、素敵なことだと思うんですよ。
- ――いやー、大変すぎてよくわかりません。
- 細田:一作一作ごとにスタッフと一緒に積み上げていって、村上さんのアニメーションというものをね、作って欲しいと思いますね。
- ――でも、最近の日本映画ってマーケティングが大きいですよね。
- 細田:「泣ける映画」とかね。
- ――アニメだと「萌え」系とか。商品ですから、もちろんあるじゃないですか。製作者サイドが求める商品価値があって、たとえば「ONE PIECE」もそうですけど、観客の設定というのはあったんですか。
- 細田:僕はやっぱり、主人公と同じ境遇の人に観てほしいんですよね。「時をかける少女」だったら、高校生の女の子に観てほしいと思って作る。今回の「サマーウォーズ」は、ちっちゃい子供たちから90歳のお婆ちゃんまでの親戚たちが主人公なんです。だから、同じように家族みんなに観てほしいなと。それだと、マーケティング論じゃないじゃんという風になっちゃうんだけど、作る方としては、この人たちが主人公なんだからしょうがない。
- ――最近、結婚する年齢が下がってるじゃないですか。そういう結婚ブームにもあやかってるのかと思ったんだけど。うがった見方かな。
- 細田:アハハハ。あのね、企画を始めたのは「時をかける少女」が終わってからなんだけど、3年前って純愛ブームって言われてたじゃないですか。そしたらさ、世の中「婚活」ブームというのがやってきて、なんかね、この不況のなかで、信用できるものを求める時期に来ているんじゃないか、という時にですね、たまたま家族のバイタリティを描いた作品を作ったのは、まあ偶然としか言いようがないんだけど。
- ――時代が俺に追いついたと。
- 細田:やれやれ。
- ――さすがですね。
- 細田:みんながふっと立ち止まってね。根拠をどこに求めるのか、身近なものの価値を考えるような時期でもあるような気がするので、この映画が、きっかけになってくれれば嬉しいなあということはありますね。
- ――プロフィールに「サムライチャンプルー」のオープニングって書いてあったんですけど、あの若冲みたいなのって、細田さんなんですか。
- 細田:うん。
- ――そうなんだ。なんか、似てるシーンが出てきたなあって思ってたんですけど。
- 細田:「サマーウォーズ」に出てくる襖絵も若冲っぽいんですよね。
- ――どっかで見たイメージだと思って。そういう意味では、細田ヒストリーのコンプリケーションですよね。
- 細田:アハハハ。大棚ざらえといいますか、総力戦みたいなところはありますけどね。
- ――前に「映画ってのは魔物なので出来ないときは出来ないんですよ」って言ってましたけど。
- 細田:アハハハ。
- ――これが集大成だと思うんですけど、故に次はまったく違うものができそうな予感がするんですよね。
- 細田:映画ってね、本当に魔物がいてね、着手しても完成するとは限らないし、資金を回収できないと次ができないし、一作一作、これが最後かもって覚悟がないと次につながりませんね。たとえば何か思いついたとき、次にとっておこうなんて余裕は全然ないんですよ。毎回が総力戦ですね、生きるか死ぬかでやらないとできないし、体力から知力から全てを試されて、かつ先の保証はまったくないという。映画ってそういうものですからね。
- ――うんうん。
- 細田:前は東映の座付き演出家だったんで、次の仕事は組織が準備してくれてた(かもしれない)けど。映画を作りたくて辞めたら、「良かったから次作っていいよ」「ダメだからもういいよ」ってお客さんに絶えずつきつけられるわけです。今現在は公開前なんですけど、次に作品を作れる保障なんてまったくないんです。だから全てを出し切らないと後悔しちゃいますね。
- ――今年は「ヱヴァンゲリヲン」があって。
- 細田:評判いいですよね。
- ――女性誌とかでもアニメーション特集が多いんですよね。
- 細田:ファッション誌とか、アニメーションからはもっとも遠い存在なのかもしれないけど、そういうところともリンクして考えることができる作品が増えてきたというか、神山さんの「東のエデン」なんかも、そうなんじゃないですかね。そうやってアニメーション映画の多様性みたいなことが、どんどん広がっていくといいなあって感じはしますね。
- ――でも、コンスタントにリリースされますよね。
- 細田:なんとか頑張って作りつづけられたらいいなあと。その時々で面白く映画として上手くまとめられていけばと希望は持っているんですけども。
- ――これは相当な話題になりますよ。
- 細田:うーん、どうなんでしょう。ノンブランドですしね。
- ――ここまでオリジナルは初めてですか。
- 細田:そうですね。心もとないんですけど、ノンブランドの心意気みたいなものを観てもらえたらなと。拠り所はないんですが、面白いんじゃないかと思うんですけどね、製作者としては。
- ――ヴィジュアル的にもたくさんの発明がありましたね。僕なんかは感動、感心して。
- 細田:「OZ」の空間なんかは、村上さんとアニメを作らせてもらったおかげですよ。
- ――細田さんの世界をパクらせていただいて。
- 細田:アハハハ。そんなことないですよ。
- ――でも、今度ね。スタジオとかのぞかせてほしいと思いました。
- 細田:ぜひぜひ。
- ――:棟梁としてどういう風に捌いているのか見たいと思いましたよ。
- 細田:ぼくも、村上さんがどう監督しているのか知りたいですよ。
- ――何もやってませんよ。サブ監督ががんばってくれただけですから。CGでやったのは、分業ができないから、ワンカットワンカット、コンポジットしやすいCGじゃないとできなかったからなんですね。
- 細田:みんなで作ることを前提にして、手描きアニメのフォーマットって組まれていますからね。
- ――:フォーマットになってるから、ある程度バジェットが読めますけど、うちみたいに一から始めると、ハイバジェットになってしまう。
- 細田:ああ、逆に。
- ――うちみたいな小さいスタジオだと、CGでやらないとおっつかないってことがありますね。
- 細田:でもさ、そういうことを積み重ねていくことで、村上さんにしか作れない作品をね。
- ――なんか、さっきからエールを送ってくれてるけど。
- 細田:CGもそうだけど、一方で、手描きにもチャレンジしてほしいと。
- ――チャンスはあってもこうはできないなって、最近わかりますね。実写やPVだと、そこに物があるから撮れますけど、アニメはまったく違いますね。設計図を引いていく作業なので。それとアニメって寿命が長いですよね。実写よりも。
- 細田:そうですか。
- ――たとえば「白雪姫」と同じ時代の作品で、同じだけ売れつづけている作品ってないですよ。
- 細田:それはあるかもしれない。
- ――芸術(ペインティング)がなぜ必要なのかは、ずーと考え続けざるをえないテーマで。人が造るものを愛でる習慣において、特に絵ってのは特別なリアクションががあるのかなって。だから、いずれは手描きもやってみたいですよ。
- 細田:うんうん。
- ――(アニメーターは)特殊技能を持っていますよね。しかし、その人たちが社会性を持っているかどうかは疑問じゃないですか。
- 細田:アハハハ。
- ――:微細なオペレーション能力が必要な、特殊な現場じゃないかってわかっちゃった。「サマーウォーズ」の食事シーンなんか、どういう設計で、どういうコミュニケーションで持っていくのか。感動しきりでしたね。
- 細田:「サイボーグ009」みたいな世界だと思うわけ。ひとりひとりが能力が違うじゃない。ひとつひとつを尊重する。アニメをやってきて面白いのはね、さっき長濱さんのお話もあったけど、別に処世術というわけでなくって、本当に「凄いな」「自分にはできないな」ってことの連続で、お願いしますって気分になるんですよね。監督って、人間に対して肯定的になれる作用があるって思いますよ。そういう気分が、そのまま内容にフィードバックしていくことはあるんじゃないかな。
- ――うんうん。
- 細田:もちろん、専制的に統括して厳しくやっていかないといけない内容や現場もあると思うんですけどね。自分は、そういうフィードバックしていく良さって感じるなあ。
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