「無料」でMicrosoftをいじめる時代
2009年08月08日06時01分 / 提供:PJ
【PJニュース 2009年8月8日】相次ぐ「無料OS」の発表
2007年11月15日、米国検索エンジン大手「Google」が、携帯端末向けの基本ソフト(OS)「Android」を発表した。同時に米T-Mobile、台湾HTC、米QUALCOMM、米Motorola、NTTドコモ、KDDIなど、全世界の33社の巨大企業とのアライアンスも発表された。しかも、このプラットフォームは無料。プログラムのソースコードが広く提供されているオープンソースソフトウエアで構成され、そのプログラムソースコードはすべて無料で開示される。中核のOSはLinuxであるという。簡単に言えば携帯電話の「業界標準OS」がAndroidだ。既に現在ではこのAndroidを載せた携帯電話が内外で市販されている。
さらに2009年の7月8日、Googleは一般のPC向けの「無料OS」である「Google Chrome OS」を発表した。折りしも期を近くして、Microsoft社の次世代のOSであるWindows7の発売日が発表された。もちろん、Windows7はいわゆるインテル系プロセッサのみで動くOSであるが、ChromeOSはインテル系だけではなく、携帯電話や各種のCPUを積んだ家電製品などで使われているARMというCPUでも動く。ChromeOSもLinuxが基盤として使われている。
Windows7は「有料」だがChormeOSは「無料」。これがまず大きな違いだ。
OSとオフィスが無料だとPCは数万円安くなる
PCを買うと、ハードウエアにあらかじめインストールされたWindowsなどのOSがついてくるのは常識となっている。当然、ハードウエアに載るOSにもメーカーがその製造元であるMicrosoft社にライセンス料を払っているから、私たちは否応(いやおう)なしにこのハードウエアとOSが抱き合わせをされたものを買っている。
つまり、PCに載るOSが無料になれば、私たちが買うPCも安くなるはずである(あらかじめインストールされたOSが無料になることによってPCは数千円から数万円は安くなる、と言われている)。しかも、これにワープロや表計算、プレゼンテーションなどの一般的に使われるソフトウエアを今まではほとんど別購入していたのだから、この差はさらに広がる。つまり、Google Chorome OSでは、これらのオフィス系アプリケーションも無料で供給される、というところも大きな違いだ。
しかも、Googleは既にGoogleDocsという無料で使える「SaaS基盤」を使ったワードプロセッサ、表計算、プレゼンテーションのソフトウエアを既に供給している。これらのソフトはブラウザの上で動くアプリケーションだ。既にGoogleはブラウザも「Google Chrome」として供給しており、現在多くのユーザーを抱えている。もちろんこちらも無料だ。SaaSとは簡単に言えばブラウザの中でインターネットの向こう側のサーバで動くプログラムのことだ。ブラウザの中なので、そのプログラムの実体は手元のPCの中には無い。すべてサーバ側にそれが置いてあるし、データも「アチラ側」に置く。しかも使い勝手は今までとほとんど変わらない。
私たちは通常、PCを使うときは、「ワープロ」「表計算」「Webブラウザ」「メール」の機能を使うことが多いだろう。一般的な家庭や小さなオフィスでのPCの利用であれば、無料のOSとアプリケーションで事足りる時代が既に来ている。
つまり、Google社の描くPCの近未来は、こうなる、ということだ。
1.PCのハードウエアは数千円から数万円安くなる。
2.さらにオフィスソフトが必要でも、数万円でこれを購入する必要はない。
ただし、これには条件がつく。
1.高速で安価な常時接続のインターネット回線があること。
という条件だ。
しかし、この記事を書いている時点では、まだChromeOSの実体は発表されていない。ただし、ChromeOSの元になるかもしれない、とささやかれている無料のOSを、私たちは今試して動かすことができる。しかも、今までのWindowsの環境をそのままにして、現在あるハードディスクの中味を一切変えずに「お試し」もできるというから、使ってみない手はないだろう。
いま無料OSとオフィスを試す
そのOSとはLinuxの1つである「Ubuntu」だ。Ubuntuはこのページから無料でダウンロードできる。ここの「日本語RemixCDイメージのダウロード」でインストール・お試し用のCDのイメージファイルをダウンロードできるので、これをPCに付属しているCDを焼くツールでCDに焼きこみ、シャットダウンしてPCの電源を一度切ってから、PCの電源を入れ、CDをすぐに入れると、CDからUbuntuが立ち上がる。そして、そのままお試し版が使えるようになる。また、CDを焼くことができない場合でも、USBメモリにそれを書き込み、USBメモリから立ち上げることもできる。
Ubuntuはこの2年間で世界的に広まったOSで、インストールした直後からワープロ、表計算、プレゼンテーションのオフィスソフトが使える。加えて、これらのオフィスソフトはMicrosoft社のオフィスソフトのファイルを読み、そして書くこともできる。使い勝手も似ている。
既に内外の多くの自治体などがUbuntuの採用を決めている。例えば最近では経営破たんした夕張市なども行政の事務にUbuntuを使い始める、という発表を先日行っている。理由は簡単で、要するに「安い」からだ。しかも、中古のPCなどでもかなり軽く動くうえ、ウィルスの心配もほとんどないために、ウィルス対策ソフトは入れる必要がまず無い。
使い勝手はほとんどWindowsの場合と同じだが、もちろん若干違うところもある。しかし、このあたりは少々の「慣れ」の問題だろう。よほどアタマの固い人でなければ、慣れるまでに時間はかからない。
私もノートPCにUbuntuを入れて使っている。この原稿もUbuntuのノートPCで書いたものだ。
オフィスのIT費用は1/3になる
ところで、こういった無料のOSやソフトウエアを使うと、ネットワークなどの敷設やサポートなどの料金などがどのくらい安くなるのだろうか?記者はその試算をしてみたところ、現在よく知られている大手企業の同種のネットワーク敷設・設定サービスやサポートを受ける料金に比べ、おおよそその費用が1/3になる、ということがわかってきた。
多くの中小企業の会計士をやっている方にも見ていただいたが、おおよそ間違いはない、という太鼓判をいただいた。例えば、10人のオフィスを新規に作る場合、人数分のPCが10台と、インターネットの接続から、部屋の中のネットワーク敷設、さらにデータが万一飛んだときのためのバックアップ用のサーバ2台、という構成で、さらにオフィスソフト等もすべてそろえると、おおよそ1000万円くらいかかってしまう。また、毎年の維持費用も700万円くらいになる。しかしソフトウエアをすべて無料のものに取り換えるだけで、最初の費用は300万円くらいになり、毎年の費用も100万円くらいになるのだ。もちろん、現在はまだ無料OSなどを扱う専門の業者が無いので、いまこれを実現しようとすると、個人的に知っている小さな業者に頼むしかない。
既にITはどんな中小企業でも必須となり、これなしでは日々の業務も進まない。そこに訪れたこの「百年に一度」と言われている不況。こういったシステムが使えるのであれば、それにこしたことはない、と、多くの中小企業が思うことだろう。だからこそ、欧米ではこの「オープソース」が注目されている。
「無料」でよってたかって、「ジャイアン」とも言われていたMicrosoftがいじめられる時代になったようだ。いじめっ子への復讐は、どうやらかなり成功しているように見える。【了】
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2007年11月15日、米国検索エンジン大手「Google」が、携帯端末向けの基本ソフト(OS)「Android」を発表した。同時に米T-Mobile、台湾HTC、米QUALCOMM、米Motorola、NTTドコモ、KDDIなど、全世界の33社の巨大企業とのアライアンスも発表された。しかも、このプラットフォームは無料。プログラムのソースコードが広く提供されているオープンソースソフトウエアで構成され、そのプログラムソースコードはすべて無料で開示される。中核のOSはLinuxであるという。簡単に言えば携帯電話の「業界標準OS」がAndroidだ。既に現在ではこのAndroidを載せた携帯電話が内外で市販されている。
さらに2009年の7月8日、Googleは一般のPC向けの「無料OS」である「Google Chrome OS」を発表した。折りしも期を近くして、Microsoft社の次世代のOSであるWindows7の発売日が発表された。もちろん、Windows7はいわゆるインテル系プロセッサのみで動くOSであるが、ChromeOSはインテル系だけではなく、携帯電話や各種のCPUを積んだ家電製品などで使われているARMというCPUでも動く。ChromeOSもLinuxが基盤として使われている。
Windows7は「有料」だがChormeOSは「無料」。これがまず大きな違いだ。
OSとオフィスが無料だとPCは数万円安くなる
PCを買うと、ハードウエアにあらかじめインストールされたWindowsなどのOSがついてくるのは常識となっている。当然、ハードウエアに載るOSにもメーカーがその製造元であるMicrosoft社にライセンス料を払っているから、私たちは否応(いやおう)なしにこのハードウエアとOSが抱き合わせをされたものを買っている。
つまり、PCに載るOSが無料になれば、私たちが買うPCも安くなるはずである(あらかじめインストールされたOSが無料になることによってPCは数千円から数万円は安くなる、と言われている)。しかも、これにワープロや表計算、プレゼンテーションなどの一般的に使われるソフトウエアを今まではほとんど別購入していたのだから、この差はさらに広がる。つまり、Google Chorome OSでは、これらのオフィス系アプリケーションも無料で供給される、というところも大きな違いだ。
しかも、Googleは既にGoogleDocsという無料で使える「SaaS基盤」を使ったワードプロセッサ、表計算、プレゼンテーションのソフトウエアを既に供給している。これらのソフトはブラウザの上で動くアプリケーションだ。既にGoogleはブラウザも「Google Chrome」として供給しており、現在多くのユーザーを抱えている。もちろんこちらも無料だ。SaaSとは簡単に言えばブラウザの中でインターネットの向こう側のサーバで動くプログラムのことだ。ブラウザの中なので、そのプログラムの実体は手元のPCの中には無い。すべてサーバ側にそれが置いてあるし、データも「アチラ側」に置く。しかも使い勝手は今までとほとんど変わらない。
私たちは通常、PCを使うときは、「ワープロ」「表計算」「Webブラウザ」「メール」の機能を使うことが多いだろう。一般的な家庭や小さなオフィスでのPCの利用であれば、無料のOSとアプリケーションで事足りる時代が既に来ている。
つまり、Google社の描くPCの近未来は、こうなる、ということだ。
1.PCのハードウエアは数千円から数万円安くなる。
2.さらにオフィスソフトが必要でも、数万円でこれを購入する必要はない。
ただし、これには条件がつく。
1.高速で安価な常時接続のインターネット回線があること。
という条件だ。
しかし、この記事を書いている時点では、まだChromeOSの実体は発表されていない。ただし、ChromeOSの元になるかもしれない、とささやかれている無料のOSを、私たちは今試して動かすことができる。しかも、今までのWindowsの環境をそのままにして、現在あるハードディスクの中味を一切変えずに「お試し」もできるというから、使ってみない手はないだろう。
いま無料OSとオフィスを試す
そのOSとはLinuxの1つである「Ubuntu」だ。Ubuntuはこのページから無料でダウンロードできる。ここの「日本語RemixCDイメージのダウロード」でインストール・お試し用のCDのイメージファイルをダウンロードできるので、これをPCに付属しているCDを焼くツールでCDに焼きこみ、シャットダウンしてPCの電源を一度切ってから、PCの電源を入れ、CDをすぐに入れると、CDからUbuntuが立ち上がる。そして、そのままお試し版が使えるようになる。また、CDを焼くことができない場合でも、USBメモリにそれを書き込み、USBメモリから立ち上げることもできる。
Ubuntuはこの2年間で世界的に広まったOSで、インストールした直後からワープロ、表計算、プレゼンテーションのオフィスソフトが使える。加えて、これらのオフィスソフトはMicrosoft社のオフィスソフトのファイルを読み、そして書くこともできる。使い勝手も似ている。
既に内外の多くの自治体などがUbuntuの採用を決めている。例えば最近では経営破たんした夕張市なども行政の事務にUbuntuを使い始める、という発表を先日行っている。理由は簡単で、要するに「安い」からだ。しかも、中古のPCなどでもかなり軽く動くうえ、ウィルスの心配もほとんどないために、ウィルス対策ソフトは入れる必要がまず無い。
使い勝手はほとんどWindowsの場合と同じだが、もちろん若干違うところもある。しかし、このあたりは少々の「慣れ」の問題だろう。よほどアタマの固い人でなければ、慣れるまでに時間はかからない。
私もノートPCにUbuntuを入れて使っている。この原稿もUbuntuのノートPCで書いたものだ。
オフィスのIT費用は1/3になる
ところで、こういった無料のOSやソフトウエアを使うと、ネットワークなどの敷設やサポートなどの料金などがどのくらい安くなるのだろうか?記者はその試算をしてみたところ、現在よく知られている大手企業の同種のネットワーク敷設・設定サービスやサポートを受ける料金に比べ、おおよそその費用が1/3になる、ということがわかってきた。
多くの中小企業の会計士をやっている方にも見ていただいたが、おおよそ間違いはない、という太鼓判をいただいた。例えば、10人のオフィスを新規に作る場合、人数分のPCが10台と、インターネットの接続から、部屋の中のネットワーク敷設、さらにデータが万一飛んだときのためのバックアップ用のサーバ2台、という構成で、さらにオフィスソフト等もすべてそろえると、おおよそ1000万円くらいかかってしまう。また、毎年の維持費用も700万円くらいになる。しかしソフトウエアをすべて無料のものに取り換えるだけで、最初の費用は300万円くらいになり、毎年の費用も100万円くらいになるのだ。もちろん、現在はまだ無料OSなどを扱う専門の業者が無いので、いまこれを実現しようとすると、個人的に知っている小さな業者に頼むしかない。
既にITはどんな中小企業でも必須となり、これなしでは日々の業務も進まない。そこに訪れたこの「百年に一度」と言われている不況。こういったシステムが使えるのであれば、それにこしたことはない、と、多くの中小企業が思うことだろう。だからこそ、欧米ではこの「オープソース」が注目されている。
「無料」でよってたかって、「ジャイアン」とも言われていたMicrosoftがいじめられる時代になったようだ。いじめっ子への復讐は、どうやらかなり成功しているように見える。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 三田 典玄
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