心太俳諧通信 食物連鎖おまえを食らうのは俺だ

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山中問答-心太(7/7-22:24)No.13951
 ┗┳Re: 山中問答-(7/8-08:08)No.13960
  ┗┳Re:^2 山中問答-心太(7/8-10:28)No.13964
   ┗┳Re:^3 山中問答-(7/8-12:51)No.13965
    ┗┳Re:^4 山中問答-心太(7/8-17:07)No.13969
     ┗┳Re:^5 山中問答 口語訳 1-(7/10-17:55)No.14013
      ┣┳Re:^6 山中問答 口語訳 2-(7/10-17:56)No.14014
      ┃┗┳Re:^7 山中問答 口語訳 3-(7/11-18:11)No.14035
      ┃ ┗┳Re:^8 山中問答 口語訳 4-(7/12-20:24)No.14066
      ┃  ┣━Re:^9 山中問答 口語訳 4-(7/13-22:04)No.14080
      ┃  ┗┳Re:^9 山中問答 口語訳 5-(7/13-23:41)No.14083
      ┃   ┗┳Re:^10 山中問答 口語訳 6-(7/13-23:44)No.14084
      ┃    ┗┳Re:^11 山中問答 口語訳 7-(7/13-23:45)No.14085
      ┃     ┗┳Re:^12 山中問答 口語訳 8-(7/14-23:14)No.14096
      ┃      ┗┳Re:^13 山中問答 口語訳 9-(7/14-23:15)No.14097
      ┃       ┗┳Re:^14 山中問答 口語訳 10-(7/14-23:16)No.14098
      ┃        ┗┳Re:^15 山中問答 口語訳 11-(7/14-23:17)No.14099
      ┃         ┗┳Re:^16 山中問答 口語訳 12-(7/16-20:40)No.14116
      ┃          ┗┳Re:^17 山中問答 口語訳 13-(7/16-20:41)No.14117
      ┃           ┗┳Re:^18 山中問答 口語訳 14-(7/16-20:43)No.14118
      ┃            ┗┳Re:^19 山中問答 口語訳 15-(7/17-23:43)No.14138
      ┃             ┗┳Re:^20 山中問答 口語訳 16-(7/17-23:44)No.14139
      ┃              ┗┳Re:^21 山中問答 口語訳 16-(7/17-23:44)No.14140
      ┃               ┗┳Re:^22 山中問答 口語訳 17-(7/17-23:45)No.14141
      ┃                ┗┳Re:^23 山中問答 口語訳 18-(7/17-23:46)No.14142
      ┃                 ┗┳Re:^24 山中問答 口語訳 19-(7/17-23:46)No.14143
      ┃                  ┗┳Re:^25 山中問答 口語訳 20-(7/17-23:47)No.14144
      ┃                   ┗┳Re:^26 山中問答 口語訳 21-(7/19-19:15)No.14171
      ┃                    ┗┳Re:^27 山中問答 口語訳 22-(7/19-19:15)No.14172
      ┃                     ┗┳Re:^28 山中問答 口語訳 23-(7/20-16:53)No.14197
      ┃                      ┗┳Re:^29 山中問答 口語訳 24-(7/20-16:54)No.14198
      ┃                       ┗┳Re:^30 山中問答 口語訳 25-(7/20-16:55)No.14199
      ┃                        ┗┳Re:^31 山中問答 口語訳 26-(7/20-16:56)No.14200
      ┃                         ┗┳Re:^32 山中問答 口語訳 27-(7/20-16:56)No.14201
      ┃                          ┗┳Re:^33 山中問答 口語訳 28-(7/20-23:09)No.14231
      ┃                           ┗┳Re:^34 山中問答 終わりに-(7/20-23:16)No.14233
      ┃                            ┗━Re:^35 山中問答 終わりに-心太(7/20-23:25)No.14234
      ┗┳Re:^6 山中問答 口語訳 1-心太(7/11-05:48)No.14025
       ┗┳Re:^7 山中問答 口語訳 1-(7/13-18:16)No.14078
        ┗┳Re:^8 山中問答 口語訳 1-お嬢(7/14-23:44)No.14100
         ┗━Re:^9 山中問答 口語訳 1-暁兵(7/19-06:04)No.14167


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13951山中問答 心太 URL7/7-22:24

この掲示板に掲載している奥の細道、その山中のところで
山中問答、全部を読んでないと書いたが、今日図書館で借りてきた。
全部読んでる。あんまり短いから一部だと勘違いしてしまったようだ。
笹のFAQは10年ぐらい前、連句の本を読み漁って、それから3年ぐらいほっぽって
おいて、自分の言葉になったものを書いた。
チャット連句でやくだちそうなところを少し紹介。

>世人俳諧にくるしみて俳諧のたのしみを知らず。附句の案やう、趣向を定るに
>心得有。工夫は平生に有。席にのぞみては無分別になるべし

連句がはじまったら歳時記なんてみるなっていったかな。

>次の句へ及ぼす心、第三の姿情なり。て留めは何の為ぞと工夫すべし。
>て留を捌きぬれば、何留にてもよきぞとなり

て留めは何のためというのは第三とは何かをいつも考えよということになる。

>一巻の変化を第一にして滞らず、新しみを心がくべし。
>妙句の古きよりはあしき句の新しきを俳諧の第一とする

連句は一句一句がいい句である必要はないんだよとか、言ったこともあったか

山中問答 すうページたらず。いつかひまをみて、全文を解説でも
してみますか。
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                 

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13960Re: 山中問答 7/8-08:08
記事番号13951へのコメント
昨日は七夕
タイトルだけ見て、ああ七夕だから心さん「李白」について書かれたんだなって
あけてみて、びっくり、そうか奥の細道か・・
でも
李白の山中問答ちょっと心さんにあうみたい(笑)

山中問答

余に問う 何の意ありてか 碧山(へきざん)に棲むと

笑って答えず 心おのずから閑(かん)なり

桃花 流水 よう然として去る

別に天地の 人間(じんかん)に非ざる 有り

海岸問答

余に問う 何の意ありてか 明石(あかし)に棲むと

笑って答えず 心太おのずから閑(かん)なり

桃花 流水 よう然として去る

別に天地の 人間(じんかん)に非ざる 有り

・・・まあ,明石にも人間は住んでらっしゃるんでしょうけど


  夕風や星なき街の星祭    晶


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13964Re:^2 山中問答 心太 URL7/8-10:28
記事番号13960へのコメント
晶さんは No.13960「Re: 山中問答」で書きました。
>昨日は七夕
>タイトルだけ見て、ああ七夕だから心さん「李白」について書かれたんだなって
>あけてみて、びっくり、そうか奥の細道か・・
>でも
>李白の山中問答ちょっと心さんにあうみたい(笑)
>
>山中問答
>
>余に問う 何の意ありてか 碧山(へきざん)に棲むと
>
>笑って答えず 心おのずから閑(かん)なり
>
>桃花 流水 よう然として去る
>
>別に天地の 人間(じんかん)に非ざる 有り
>

よう然 どうかくのかな「杳然」だろうな
一瞬「妖然」と書くのかと。久米の助の「桃妖」この詩からか
思ったが違うようだ。

>海岸問答
>
>余に問う 何の意ありてか 明石(あかし)に棲むと
>
>笑って答えず 心太おのずから閑(かん)なり

あはは 両吟の挙に使ったよ
 心閑なり海霧の春

山中問答、晶、約してみるかい。コピー送るよ。



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13965Re:^3 山中問答 7/8-12:51
記事番号13964へのコメント
心太さんは No.13964「Re:^2 山中問答」で書きました。
>晶さんは No.13960「Re: 山中問答」で書きました。
>よう然 どうかくのかな「杳然」だろうな

http://www.matsusaka-u.ac.jp/~tankei/profile/rihaku.html

字がありません、とにかくゆうゆうとして去っていくわけです

>山中問答、晶、約してみるかい。コピー送るよ。

 奥の細道のほうですね、ではためしに拝見します
 送ってくださいませ


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13969Re:^4 山中問答 心太 URL7/8-17:07
記事番号13965へのコメント
晶さんは No.13965「Re:^3 山中問答」で書きました。
>
> 奥の細道のほうですね、ではためしに拝見します
> 送ってくださいませ
>
>
郵送しました。

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14013Re:^5 山中問答 口語訳 1 7/10-17:55
記事番号13969へのコメント
心太さんは No.13969「Re:^4 山中問答」で書きました。
>晶さんは No.13965「Re:^3 山中問答」で書きました。
本日受け取りました
ではさっそく

山中問答

私、芭蕉の考えまする俳諧の道を、なんとかものにしてやろうという風なことを、
考えてくださるってな方はね、
やっぱりねえ、こう、心の持ち方っていうんですかね
そういうものが、はじめでございますね

世の中の人はいろんなこと申します
あれが得だとか、あれがいいとか悪いとか
そんな話きいちゃあいけません
馬鹿がいってるんでございます。
そんなこと聞いて、ああか、こうか、なんて迷ってちゃぁあ始まらない

お天道様の下のものみんな、良く見ますとね
みんな持ちまわりで釣り合っておりましょう
よくできてるもんです、釣り合うって、これがね。

それぞれ、もって生まれた持ち前ってのがあるんですよ
山は山なり、落ち着いておりますしね、川はもうこれは低いほうへ流れるってのが
持ち前
咲いたり枯れたり、生まれたり死んだり、
草や木だって、わたくしども人だって、そんなうちの一つってもんですよ、
それを忘れちゃいけません

そんな心持で花がちらちらと散ってるのも、
秋にゃ紅葉がおちるのも見たいもんです


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14014Re:^6 山中問答 口語訳 2 7/10-17:56
記事番号14013へのコメント

そういたしますとね
その心持こそが昔から申します、歌の道ってのにつながっているんでございますよ

この世の中、ほんとに変わらないものもございます
良いものは、いつの世もいいもので
また、このごろのはやり、これもまた変われど、変われど、その時々によいもの、
このどっちもが、ああいいもんだって思えるんでごさいます、

こうなったら、もう、何も思案することはございません
心の中がひろーくなりましてね
気にするものがなくなってしまいます

春夏秋冬一日一日変わっていくもの
あたりのものじっくり味わい
世間の人やら、ご政道やら、おだやかに眺めさせていただいて
人の気持ちのあったかいものまでよおくわかるようになるんですよ

これがまあ始めでございますねぇ

翁は、ゆっくりと話された



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14035Re:^7 山中問答 口語訳 3 7/11-18:11
記事番号14014へのコメント

あたくしどもの俳諧と申しましてもほかのものと何のかわりもございません

世の中のものなんでも、こう動いてるじゃぁございませんか
それこそ花や草も人の心も、世間の動きってものも
一つところにじっとしているってことはございません、変わってまいります

それと同じでしてね、
とにかくじっと立ってちゃあいけない、話を進める、これでございますね

世の中にはいろんなことを言う人がおりまして
俳諧って四角い字を弁じ立てましてね
まあ、俳諧とか誹諧とか書くんですけど
誹の字はいけないっていうんですよ、
誹は非って字の読みとおんなじだからってね、

中国の史記って本には滑稽なんてのと一緒に俳諧ってのが出てくるそうですがね
まあ誹はひとの悪口を言う、俳はふざけるってことですかね
どっちでもいいじゃありませんか
そんな、むかしはどっちの字書いたんだ、だからいいとか悪いとかっていうような
理屈

そりゃたいした知恵者だけど、そんな知恵より
それよりも、俳諧ってのは、言葉ですからね
花に遊ぶ人あり、月に遊ぶ人あり、俳諧てのは言葉に遊ぶんです
だからあたくしどもはね、誹って言って字はいってるのもいい、
あたりまえに見たとおりてことですかね、
俳も誹もどっちもいけないとは申しません

よそ様がなんとおっしゃっても、あっちが間違ってるとか何とか
そんなことを、言うものではない
この世には理屈もあれば
それとちがう、あたりまえにみたままってのもあるんでございます

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14066Re:^8 山中問答 口語訳 4 7/12-20:24
記事番号14035へのコメント
俳諧は言葉で遊ぶものでございます
難しいことを言わず、あるがままの心で言葉で遊ぶ
こういう心持をわかっている人は
俳諧のなかで、心のおもむくまま楽しんで、進んでゆかれます

また、俳だの誹だのというのもそのうちかと思いますが
どうしても、理屈が先に立つ、こういうお人もいるもんです
理屈が先に立つと、どうしてもそこで立ち止まってしまうんですな
ああだこうだと、考えて迷ってしまわれる

こうなるとあるがままの心でゆっくり楽しんでゆくってのが難しい
やれ、今の世では誰が上手の、下手の、いやあれは、本当の、嘘のと
そんなことを、みなさんで、

それは理屈なんでございます
俳諧は理屈ではございません
俳諧ってのは、まずは心持、
あるがままの心で遊ぼうっていう、これでございます

世間の嘘か本当か、それなら理屈でございます
そうではない、俳諧という遊びの中の嘘とまこと
それにしっかりと目をすえてみようという
そんなお人こそが、私のこころざしを一番次いで下さっていると
うれしくおもっているんでございますよ

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14080Re:^9 山中問答 口語訳 47/13-22:04
記事番号14066へのコメント
いいですねえ、この調子がなんともいえないです。
味わいのある文、久々のお湿りに息をついた草木のような気持ちになりました。
お手数ですが、ぜひ原文もお願いします。

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14083Re:^9 山中問答 口語訳 5 7/13-23:41
記事番号14066へのコメント
一、嘘とまことって申しますがね
嘘とまこと、ないまぜになっているもの、
理屈ではどうにもならぬものはたくさんございます

古い事柄や何か、本当のように文字で書かれたものがあるかとおもえば
仏の教えもいろいろ、これも理屈ではないと申しますな
孔子様は仁義礼智、これも形と心持、どちらが先とも

まことばかりが、世の中ってものでもございません
つくりごと、いはば嘘のなかに、人の心のまことがあるものを書や歌といい、
形のなかに、まことの心こめられたものを礼智ともうします

いづれも理屈ではうつろな嘘ごとといわれましょうが、
だがこの上なく良いものでございますな

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14084Re:^10 山中問答 口語訳 6 7/13-23:44
記事番号14083へのコメント
人の世はやはり、嘘はうそ、嘘のなかにまことあるなんぞということは
少のうございます
がまた、すこし、こう、見方を変えますとな、
世間様には、嘘、絵空ごとといわれるもののなかにも
人の心や、草や木、生き物のまことの姿がよく見えているものも多いんでございま
すよ

この、絵空ごとのなかに、まことの姿を見せる、
これが私の俳諧を本当にわかってくださってるってひとじゃぁないかと思っており
ます

ははは、すこうしお話が回りくどうございましたかな

          ここでまかり出ました、あたくし北枝でございます
          翁のお話を書留させていただいてるものでございます
          いやあ、ここのお話はむつかしい
          絵空ごととまことの姿、
          このまことを見せている絵空ごと、
その中でも一番の絵空ごとは
          孔子様のほうでは荘子、
          仏様のほうではだるま大師なんてことになりますか 


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14085Re:^11 山中問答 口語訳 7 7/13-23:45
記事番号14084へのコメント
一、俳諧と新しく申しましても
むかしから、中国では詩といい、この国では歌と申しましたものと
心根は変わるもんじゃありません、
言葉のかぐわしさ、気持ちの美しさ、励むところはおなじでございます

じゃあ、俳諧なんて名をなぜ使わせていただくかと申しますとね
この国には長く和歌ってもんがございましょ
これとの区別なんでございます
俳は和歌で詠われました古い変わらないものといっしょに、
今のありのまま、動き変わっていくものも良いものといたします
それを、俳と申しましたまでで

それを、なんというんでしょうかねぇ
当座の笑い話や、つまらぬ世間のあれこれを詠んで
奇をてらいましてね
笑っていただこう、ちょっとは人をおどろかしてやろう
てなふうに、それだけが俳諧だと思ってしまうかたもございます

つまらんことですよ
俳諧の心根がおわかりではないってことですからね、
そりゃあ、みっともないことです

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14096Re:^12 山中問答 口語訳 8 7/14-23:14
記事番号14085へのコメント
一、あたくしども、毎日、起きたり寝たり、
お商売の方も、腕に付いたもので世渡りをしている方もだれもかれも、
まあ、道に外れたことだけはすまいと、思う心はおなじでございます
とはいえ、この道というもの、たやすいようでなかなか、苦労も多うて、

俳諧と申しますのはね
この道に咲いております花なんでございますよ

世渡りは理屈よりは、心持、情けが大事の世の中なんて申しましてね
利口になることはお忘れなさいまし、
なに、たやすいこと、たやすいこと
ただ、思うがまま、言葉に心を遊ばせるんですな

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14097Re:^13 山中問答 口語訳 9 7/14-23:15
記事番号14096へのコメント
一、俳諧のかたちは、気楽なものでございます
床や風呂やの仲間内のひま話、
あたりまえの暮らしのどこにでもあるような出来事
そんなものが、出て参ります

だがそれだけではない、そこが勘所でございます

ひま話のようだが、自堕落でも、わるふざけでもない
どこにでもあるような話なんだが、どこかしら目の付け所がある

この区別、紙一重のところでありながら、大事の要所でございます

今からこの道に入ろうって方ばっかりじゃございません
いくら長くお励めの方でも、これは大事
なかなか気楽とはまいらぬところでございますな

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14098Re:^14 山中問答 口語訳 10 7/14-23:16
記事番号14097へのコメント
一、俳諧をなさるかた、良く聞きますのはな
良い句の上手のと思う余り、もうなんですな
俳諧が苦労の種になってしまう、
俳諧ってのは、楽しい、良いものなんですが
そのおもしろさがわからない、ただもう苦労の種
こりゃあつまらないことで

実は、句を考え、行き方を思いつきますに
ちょっとしたこつがございます

常日頃でございます、
あたりまえのような所でもよくよく見れば
面白いことも多くございます、ほう、と気付かれるのも大事
書物に親しまれるのもよろしかろう、
名人上手の句もごらんになればまたなにか
ほかにもいろいろ
これはすべて、普段の心得、普段のことでございます

一旦、席に入り、皆様と歌仙を巻くとなりますと
これみんな忘れてしまう
常日頃の、修練、みんな忘れて初めての心でのぞみます
ただただ、なにも無い心で始める、これでございますな

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14099Re:^15 山中問答 口語訳 11 7/14-23:17
記事番号14098へのコメント
一、俳諧を始めて間もない方は
みなさん、切れ字というものに、難儀なされます
つかいなれぬ言葉でございますからな

とくに、気に病むことはございません
わざわざそれと、つくらなくとも
発句は見事に決まりましたときには
気が付けば、切れというものは出来ているものでございます
 

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14116Re:^16 山中問答 口語訳 12 7/16-20:40
記事番号14099へのコメント
一、連句と申しましてもいろいろございます

たとえば、まあ本格と申しますと、百吟なんぞでございますな
次から次へと百句つづけます
百句を四つの折りにわけて順々に詠んでまいります、
表の八句、十四句づつ折々に、そうして、名残の裏が八句

これ、ただ長々と続くというのでは、ございませんでね
表には表の、一の折には一の折の、と、折りそれぞれに
趣のくふうがございます
まあ、ものごとずべてでございましょうが
ゆるゆる始めて、面白可笑しう遊んだ後は、静かに平らに収めてまいる
それぞれの折りが折ごとに、しごとをするということでございます

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14117Re:^17 山中問答 口語訳 13 7/16-20:41
記事番号14116へのコメント
句には句の勤めがまたございます
ご承知であろうが、
一巻の始め、頭に立ちます句を、発句ともうしますな
発句には発句の、おのずとこうであらねばならぬ、という
形がございまして
また、間に連なります句、これを平句ともうしますが
これにはまた、これの大事の勤めがございます

発句
これははなんといっても頭に立ちます
大きくどっしりと構えて、見上ぐるような姿、
お姿がみえただけで、お店が引き締まる大だんな様
落ち着いた、一軍率いる大将
この趣ですな
これがなくては勤まるもんじゃぁございません

平句
これには平句の勤めというものがまたございます
お店なれば、奉公人、
お店の中で、自分のお勤めは何となにとか
戦なれば兵でございますな
自分のお見方が、今どちらに流れていくのか
先駆けなのか、しんがりなのか、
お役目が読み取れないようでは、お役に立てません

この句ごとの役目、
これを大事に思うことがまずなにより第一でございます

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14118Re:^18 山中問答 口語訳 14 7/16-20:43
記事番号14117へのコメント
発句、平句、だけではございません
発句にそう脇、つづく第三それぞれがお役目を持っております


これは、発句と一つのものでございます
発句とは別に、何か変わったことをいってやろうととか
動かしてやろうとか
そういったことを考えるものではありませんな
脇はただただ、発句の高い気持ちをこう、読み取りましてな
発句に言い足し、発句の心をさらに大きく広げるのでございます

脇には五つの詠み方があると申します
相対、打ち添え、違い、心、頃留まり でございますか
まあいろいろ、分けたものでございますな
しかし、これみんな、どう発句につけるかの区別
発句の心をどう受け取り、どう広げるかの区別でございます
けっして、新しいことを詠むやりかた、ということではありませんな

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14138Re:^19 山中問答 口語訳 15 7/17-23:43
記事番号14118へのコメント
第三
これは、いうなれば、半ば脇を立てつつ、半ば新しきことを始める
それが仕事でございます
次に続く句のほうに、目配りをいたします
つぎの句が、なだらかに、続きますようにお考えになることですな
第三は形もまた次へ続くようにいたします
「て」止めともうしますな
何のためにこんなきまり字を使うっていうのか
そこが考えどころでございます
なにやらして、後が続くのございます
何が始まっても可笑しゅうは無い、
次の句に好き勝手に働ける、工夫の手広い間をおいてやる
このあたりを、飲み込めばもう勝手を知ったようなもの
留めは、「て」でなくとも、おのずと形になってまいります

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14139Re:^20 山中問答 口語訳 16 7/17-23:44
記事番号14138へのコメント

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14140Re:^21 山中問答 口語訳 16 7/17-23:44
記事番号14139へのコメント
一、俳諧百吟これは、先ほども申しました通り
四つの折、それぞれの裏表にわかれております
それぞれの折がそれぞれちがう働きをいたします
この仕事をこころえるのがまた大事の一つでございます

歌仙は簡略に三十六句、折りは二つ、それぞれに裏表でございますな
歌仙は二番目の表、このあたりがいわば、話の山場、俳諧が言葉遊びならば
遊びののうちの遊びはこのあたり
思い切って詠んでくだされ

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14141Re:^22 山中問答 口語訳 17 7/17-23:45
記事番号14140へのコメント
さて、百吟を考えてみますに
最初の折
初折りと申しますが、これは、そろそろと始めまするな
身の回りの様子、今の景色、などなど落ち着いた句をもっぱらに
素直にあっさりと詠んだものをつないでまいります

なにやら、人を驚かすようなもの、人の気持ちを落ち着けないものは
遠慮いただきたい、ということで
恋句なんぞもそのうちでしてな、人の心がこう、動こうというもので
よいもので、なくてはならぬものではあるとは申すものの
初折りに出るものではございませんな
おだやかにおだやかに、でございます




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14142Re:^23 山中問答 口語訳 18 7/17-23:46
記事番号14141へのコメント
二の折
ここになりますと、初折りのこう裃着たような気持ちが
すこし、ゆるんでまいりますな
なかば、しずしずと、落ち着いていながら、なかば話が動いてまいります
礼儀、礼儀ともうしますが、何のための礼儀でございますかな
人とひととの間を、まるく、気持ちよくするためのやりようということでございま

礼儀のやりように心のはいっておりません、やたら固いばかりのお方、
こういうかたは困り者、
なにごとも、なんのためにと、本と末を見ることが大事
そのあたりでございますな、二の折の心得とは
礼儀を守りつつ、気持ちよく、話をひろげ、
一座の方も気心のしれたお仲間になってまいります

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14143Re:^24 山中問答 口語訳 19 7/17-23:46
記事番号14142へのコメント
三の折
ここは、俳諧の俳諧らしいところと申しましょうか
歌仙で言えば二の表、
華やかな、きらきらしい句や、ひとを驚かす、おかしがらせる
そんな句はここが出所でございます
腕の振るいどころ、競いどころでもございましょうか
ぞんぶんに言葉で遊ぶ、楽しいものでございます

まあ、しかしでございます
ここの心持も、本のところでは、他の折とかわるもんじゃありません
悪ふざけの、そしりの、人の気持ちの苦しくなるようなものは
はなから、あたくしどもの俳諧ではございません
うちとけて、座は盛り上がりましょうが
人の礼儀はお忘れなく、句の姿はうつくしく、このあたり
何より大事とまあ、わすれず肝に銘じて遊ぶということで

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14144Re:^25 山中問答 口語訳 20 7/17-23:47
記事番号14143へのコメント
名残の折
最後、四番目の折となります
ここは、一巻のまとめ、せっかくの勢いの付いた流れ
ここで、留めてしまわぬように
さらさらとまいります
とくに、名残の裏の花、匂いの花なんぞともうしますが
みなさまもう、座も長くなり、また、なんといっても最後の華やかな花の句
何が出てくるかと、今か今かとお待ちになるのは人情
また、最後の挙句も同じ
花もことなく出て、長い一座もこれにておわり
お疲れも出ましょうし、また、百吟は長い旅のようなものとも
おわりに無事行き着くことをまっておりますわな
これこそは、さらさらと滞りなく詠むもので、
お客様を待たせるのは無礼というものでございますよ

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14171Re:^26 山中問答 口語訳 21 7/19-19:15
記事番号14144へのコメント
俳諧は遊びだってさきほどから申しておりますがね
この遊び、一人じゃぁ出来かねるってのがまたおもしろさの元でございまして

一人のお楽しみ、二人でする遊びもあればたくさんお集まりになってのお遊び、
遊びもいろいろでございます、

俳諧というもの、人々より集いましての言葉遊び
つっぱっていたり、こう裃を着たようになっていたのでは始まりません
よく知らないお方同士でも、一巻詠み進みますうちに
だんだんと打ち解け、心根のよくわかったなじみになってまいります
詠んだ句は繕うことなく、お人柄が出るものでございますのでな

それが、なんとこの俳諧というあそびの眼目のひとつ

見事な句を詠んで、一座の方をあっと言わせてやろうとか、
うならせて見せようとか、それは俳諧の本筋とはいいかねます
見事は見事だけど、もう見事、立派過ぎて、だれも付けようがない
一座の方ただただ驚きいってみなさんだまってしまわれる
そんな句はいりません

そんな句よりも、
あたりまえの、普段のことばで、普段の気持ちを呼んだ句でいて、
それでいて、流れの中では、
前の句をひきたて、後の句に工夫のしどころをご用意する、
そちらのほうに、心をくだくことが大事の心得でございます
それでこそ、みなさまとよいお仲間にもなれるというもんですな

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14172Re:^27 山中問答 口語訳 22 7/19-19:15
記事番号14171へのコメント
百吟であれ、歌仙であれ、
一巻の中では、
折ごとの移ろい、景色や気持ちの変わりように心を配って、
立ち止まらぬよう、話を進めることがなによりの大事
同じ景色のなかでうろうろと、長話が続くのは、そりゃあなりません

俳諧のなかで、つぎつぎに、あたらしい景色が広がり、新しい話がはじまり、
新しい気持ちになっていく、ここが勘所とおもってくださいまし

同じような景色のままの見事な句より、
新しいものが開けておりますまずい句のほうが、俳諧ではまずは上といたします
おわかりですかな

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14197Re:^28 山中問答 口語訳 23 7/20-16:53
記事番号14172へのコメント
一、一巻通して、一つ一つの句に忘れてはならぬことがございます

俳諧というもの、古くからございます良いもの、美しいもののほかに、
移り変わる今のくらしのあれこれ、普段のあたりまえの出来事など
読み込みまして、俳ともうします
こんなものを詠みまして、句といたしますとき
何よりも忘れてはならぬものが、
どのようなものの中にもある、美しいもの、人の心を動かすものを見つける心でご
ざいます

花はうつくしゅうございます、また月もしみじみと美しく、人の心に感じ入ります

ですがな、月や花だけのことではございません、
世の中のもの、なんにいたしましても、よくよく見れば、月花と同じように、
それ以上に、しみじみと美しく、よいところがございます、
ともあれ見つける心を忘れぬことが大事でございます

さて、見つけると申しましても、よいものと申しましても、雲をつかむような話
で。
まずは、俳諧には俳諧の目の付け所がございましてな

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14198Re:^29 山中問答 口語訳 24 7/20-16:54
記事番号14197へのコメント
まずは色、あたくしこれを「さび」なんぞと皆様にお話しておりますが
古くとも古ければこそ出てまいります落ち着いた味わい、
汚れておりましてもそれなりに物語のございます色は、味わいのあるものでござい
ます、
句の色合い、言葉のなかにこの味わいをわすれてはなりません

生きておりますものはみな、それぞれの苦労がございます
人だけに限りませんことで、畜生も草や木もいきておりますれば、
それなりの憂いはあるというもので
何を見ましても、それを思ってやるんでございます
あたくしも、あなたさまも、みんな一緒でございます
この憂いから逃れられるってもんじゃぁありませんな
相憐れむってもうしましょうかねぇ、その気持ち、
「しほり」なんぞと申しておりますが、しっとりと思いやるということで

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14199Re:^30 山中問答 口語訳 25 7/20-16:55
記事番号14198へのコメント
俳諧に志す方が、なにかを見ておりますと、これはおもしろいと思われるものに
でくわしますな、ちょっとしゃれた、ちょっとひょうきんな、
そんなものも俳諧では何よりのものと句にいたします
この見つけたときでございます、見つけたものを更によく眺めましてな
その後ろにある、人情や季節の趣、おもしろさまで目をやるんでございます
細かいもの、ささいなことから目を広げて見えぬものまでみる
「ほそみ」なんぞともうしておりますな

なにごとにつけ、力自慢はみっともないことでございます
本当のところ、まことの力なんぞ、あるようでないもんでございますからな
お互い至らぬもの同士、力の無いもの同士
それで世の中釣り合っているという気持ち、
肩で風切るの、思い上がるの、は俳諧ではございません
「しほらしき」気持ちを大事にいたすのでございます

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14200Re:^31 山中問答 口語訳 26 7/20-16:56
記事番号14199へのコメント
一頭の牛がございます、
牛というもの、そばで見れば、大きいばかり、泥もついてるわ、よだれもたらして
おるわ、
ハエなんぞもたかっておりましてな、においもなかなか、
そう美しいの、いとしいのというものではございませんな、あれは

ですがな、よおく心の目で見ておりますとな、
動きは鈍いがよう働きます、働いての上のどろまみれでございますな

かわいい目をしておりますな、あれをみておりますと
暑さ寒さも人と同じように思いましょうし
畜生には畜生なりの、うれしさ、つらさもあろうと、おもいやるのでございます

畑から帰ってまいりますれば、
人と同じく一日の働きをおえて、夕方の風を楽しんでいるようにも見えます
やせ牛でも大事な働き手、かわいがられて、手入れなどされているのも
また、みていてよいもので、
お百姓家に牛がいれば、そのお家は落ち着いた暮らし振り、
ひと一人、牛ほどの働きができるもんでもありませんからな

それやこれや、見方一つで、俳諧の句になっていくのでございます

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14201Re:^32 山中問答 口語訳 27 7/20-16:56
記事番号14200へのコメント
この見る心というものが無いとどうなりまする

なるほど句は詠まれましょう
がしかしでございますね
心がないと、その句はただの話、床や風呂屋の世話ばなしというだけでございます
またぎくしゃくと、情の無い句となり、
人の心にいやなものを残す、薄汚い句、牛はただ汚れた大きいものとだけの句です

詠む方の、心根が見透かされるような
そういうものしか詠めないものでございます

また、心がないと、理屈に落ちますな、
牛は大きい、汚い、臭い、なるほどそうでありましょうよ
しかし、それは理屈でございます、
前にも申しましたでしょうが、理屈は世のまことであっても、俳諧のまことではご
ざいません
理屈に落ちれば、俳諧の本筋からとうに離れてしまうのでございます

俳諧の道に志せば、この道を参ろうと思われれば
これだけは何よりの大事、俳諧の大本でございます
なによりも、この俳諧の目ということ、大切に励むことでございます

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14231Re:^33 山中問答 口語訳 28 7/20-23:09
記事番号14201へのコメント
俳諧は能、お謡と思ってくださいまし
ワキが名乗って歩み、シテに会い、シテが名乗って物語がすすんでまいります
穏やかなワキの旅は、シテと出会いましてシテの物語になり、思いがけぬ話が始ま

そののち、またワキは旅を続けてまいるというような話、ようございますな

俳諧の、百吟であれ歌仙であれ一巻はこの旅でございます
詠まれる方は、役者でございます、そうなれば、
筋を読み、前句の景色に溶け込み、その心を読んで答える
至極あたりまえのことと存じます
役者というもの、神代の昔より、世のつれづれをその世の人々になりきり
面白おかしゅう、ときには、悲しゅうに語り、ひとを楽しませるものでございます
まいか

役者には自らというものはございませんな、
ただただ、あるのは話の中で、なりきっておる人ばかり、

俳諧の心ここにございます、
ご自分の聞こえ、名人の上手のといわれたいがばかりに
一巻の趣や、流れを台無しにしてしまうやら、
また、自分のお好み、好き嫌いなど、句に見え隠れして
せっかくの句のよいものまで、なしにしてしまう
自らが、演じております役からはずれているのでございますなぁ

このようなことは、いつも心しておかれますよう
これは終わりに、固く固く申し上げておきます



山中温泉にて翁の、つれずれにお話くださいました ことども
たまたま、お聞きいたしましたあたくし北枝が概略のところ
書き留めさせていただきました


 元禄三年               金城
                           北枝 記す
              

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14233Re:^34 山中問答 終わりに 7/20-23:16
記事番号14231へのコメント
これで、口語訳はおわりです
これから、何らかの形で、原文をここに掲示したいと思っています
原文を読んでいただくと、すぐおわかりだと思いますが
この口語訳は、あたくしの勝手な解釈がたくさんはいっております
ほとんどそればっかりといってもいいほど

芭蕉は、そんなこといってるんじゃないとか
考えすぎとか
原文を読んでのご意見なども頂きたいと思います

よんでくださった方ありがとうございました
もう少し、おつきあいくださいませ
                     晶

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14234Re:^35 山中問答 終わりに 心太 URL7/20-23:25
記事番号14233へのコメント
お疲れ様でした。流暢な口語訳でした。

ただ晶の名調子でふくらみすぎたところもあるかな。
おてすうですが原文をよろしくお願いします。

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14025Re:^6 山中問答 口語訳 1 心太 URL7/11-05:48
記事番号14013へのコメント
とても洒脱な訳です。
晶の素養が開花したなと感じます。
あとで原文も併記したいですね。

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14078Re:^7 山中問答 口語訳 17/13-18:16
記事番号14025へのコメント
晶さんが目前で語っておられるようで楽しかったです。是非原文をつけてく
ださい。

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14100Re:^8 山中問答 口語訳 1 お嬢7/14-23:44
記事番号14078へのコメント
とても楽しいです。
晶さん 素敵なことしていただいて 勉強もこんな風だとどんどん興味がわくのに
ね。
楽しみにしています。

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14167Re:^9 山中問答 口語訳 1 暁兵 URL7/19-06:04
記事番号14100へのコメント
晶さん流石ですね。
これは教科書、ダウンロードしておかなくちゃ。