2009年8月9日13時44分
選挙ポスターには携帯電話で撮影するとサイトにつながる「QRコード」、候補者にはストーリー性を持たせ、女性の情報伝播(でんぱ)力に期待――。衆院選に向けて「選挙プランナー」と呼ばれる参謀たちが知恵を絞っている。好感度を上げようと、あの手この手の戦術を繰り出す。
「選挙はファッション」。07年東京都知事選で石原慎太郎氏を3選に導いた選挙プランナーの三浦博史さん(58)は、有権者の目を引く方法にこだわる。
例えばQRコード。最近の選挙ポスターやビラでよく見るが、サイトの閲覧数アップが一番の狙いではない。「QRコードを日常的に使う世代に、『自分たちと同じ感覚の人なんだ』と共感してもらいたい」
夜でも字が浮かび上がる蓄光塗料を使った選挙ポスターも投入する。掲示場でひときわ目立つ。夏の選挙を意識して、訴えを書いたビラ代わりのうちわも配る。「有権者の投票基準は、マニフェストより候補者のイメージで決まる」
「まず後援会員の投票率を上げて」。選挙の戦略作りにかかわって20年という渡辺強さん(48)は、依頼された陣営に助言した。熱心な支援者は、どの陣営も後援会の約3割。この割合を増やすのが鍵という。
「奥の手」もある。衆院解散が取りざたされた昨秋、渡辺さんは「女性の後援会員を20人ほど集めた勉強会を開いて」と、ある陣営に伝えた。対立候補の主張の矛盾や弱点をかみ砕いて教えるのが目的だ。「女性の情報伝播力はすごい。出席者が町内会役員や趣味教室の先生といった影響力の大きい人なら、なお効果が出る」
「手を振り返す有権者には必ず選挙カーを降り、走っていって握手を求めて」。06年滋賀県知事選で当選した嘉田由紀子氏の陣営にかかわった松田馨さん(29)は「一生懸命」「体力がある」という印象付けを狙う。「見ている人は必ずいる。小さなことだが馬鹿にできない」。暑さに弱音をはいた40代の立候補予定者も、今は助言に従っているという。
なぜ立候補し、何をしたいのか。選挙の「ストーリー作り」も重視する。ある元官僚の場合、3時間近く聞き取りをし、「霞が関の欠点を知る自分だからこそ、官僚から政治の主導権を取り戻す」と官僚批判を逆手に取るシナリオをつくった。「一貫したストーリーがイメージになって有権者を動かす」と松田さんは言う。(岡雄一郎)