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【昭和正論座】学習院大教授・香山健一 昭和50年11月4日掲載 (2/4ページ)
≪思いつめ型国民性の短所≫
もしも国民総生産の規模の大きさや、経済成長率の高さのことだけしか考えず、とにかくGNPは大きければ大きいほどよく、成長率は高ければ高いほどよいと単純に考えていたひとがいたとすれば、その考え方は“GNP信仰”と批判されても仕方がないであろう。ところで、「くたばれ!GNP」論者たちは、“GNP信仰”を激しく非難しながら、他方で、ある極端な新しい信仰を日本全国に広めてきたように思う。私はそれを“PPM信仰”と命名したいと思う。
“PPM信仰”とは環境基準や排出基準問題を考える際に、その科学的根拠や経済社会全体とのバランスを無視し、とにかくPPM(百万分の一)の数値が低ければ低いほどよいと主張する単純な信仰である。私は“GNP信仰”が誤りである以上に“PPM信仰”はより重大な過ちを犯していると言わざるを得ない。
かねてから指摘されているように、わが国民性はひとつのことを極端に思いつめ、性急な、行き過ぎた行動を取るという短所を持っている。かつての第二次世界大戦自体が、わが国民が資源問題で思いつめ、性急な行動を取ったことの結果であり、その行き過ぎた行動の結果は敗戦と自滅であった。最近にいたる環境行政の推移を見ていると、この思いつめ型の国民性の短所は今度は環境問題に集中的に表れてきているように思われる。こうして、PPMの数値が低ければ低いほどよい、これに批判的な見解を述べるものは環境悪化を意図する「非国民」だと言わんばかりの、極端な“PPM信仰”の「空気」がマスコミと環境行政を強力に支配しつつある。
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