キヤノンの施設建設工事を巡り約10億円を脱税したとして法人税法違反に問われた大分市のコンサルタント会社「大光」社長、大賀規久被告(65)は17日、東京地裁(朝山芳史裁判長)の初公判で「間違いございません」と起訴内容を認めた。検察側は冒頭陳述で、経団連会長でキヤノンの御手洗冨士夫会長を「キヤノン幹部」と匿名で表現したうえで「大賀被告はキヤノン幹部と親しく、工事の受注業者選定に多大な影響力を持っていたことを利用し、業者に工事をあっせんしていた」と指摘した。
腹心のコンサルタント会社社長で同法違反に問われた難波英雄被告(61)も起訴内容を認めた。
検察側は冒頭陳述で大賀被告が04年11月、大光顧問の元大分県警警部補=起訴猶予=の紹介で難波被告と知り合い、脱税に協力させる見返りに裏金の10%を報酬として渡すシステムを構築した、とした。不正の舞台はキヤノンや大分県土地開発公社が発注し大手ゼネコン「鹿島」などが受注した▽大分市のデジタルカメラ生産子会社「大分キヤノン」▽プリンター関連生産子会社「大分キヤノンマテリアル」▽川崎市幸区のキヤノン矢向(やこう)事業所の各工事などを挙げた。
そのうえで(1)鹿島から現金や商品券など約8億8000万円(2)鹿島からの下請け受注に成功した電気設備工事大手「九電工」から別の会社を介し約2億5000万円(3)造園・土木工事会社「内山緑地建設」(福岡県久留米市)から約5億8000万円を受領し裏金化したと指摘。正規のコンサルタント料などを加え35億円超の法人所得を得たのに、架空経費の計上などで脱税したと主張した。【安高晋】
06年までの2年間、大光、ライトブラック(大分市)、匠(たくみ)(東京都千代田区)のグループ3社が得た総額約35億6500万円の所得を隠し、法人税計約10億6800万円を免れたとされる。匠分(脱税額約4900万円)は大賀被告のみ、残る2社分を大賀、難波両被告の共謀としている。
「財界総理」の威光を利用した、キヤノンの大型工事の仕切り役が法廷に立った。17日、東京地裁で開かれた大分市のコンサルタント会社「大光」社長、大賀規久被告(65)の初公判。「私が紹介した会社でキヤノンの仕事が落とせなかったことはない」。検察側が読み上げた大賀被告の供述調書で、蜜月ぶりが浮き彫りになった。
「検察官が述べられた事実に間違いございません」。濃紺のスーツに緑のネクタイ。左手に数珠を握って法廷に現れた大賀被告は、裁判長に長身を折って一礼した。被告席に座ると「キヤノン幹部と親しく、01年ごろから業者をあっせんし手数料を得るようになった」と、冒頭陳述を読み上げる検察官をまっすぐに見据えた。
関係者によると、大賀被告は東京地検特捜部の取り調べに、御手洗冨士夫キヤノン会長(日本経団連会長)との関係を問われると口をつぐんだ。追及する検事に、念仏を唱えて対抗したこともあったという。4月の保釈後は大分・湯布院の会員制保養施設や大分市の自宅で、捜査資料に目を通した。「これからは『脱キヤノン』『脱ゼネコン』でやる。太陽光発電関連のビジネスに乗り出す」と早期の復帰に意欲をみせているという。【安高晋】
キヤノンは事件発覚後、大賀規久被告と関連する会社との契約を次々と打ち切り、解約可能な契約はすべて終了したという。毎日新聞は17日の初公判後、御手洗冨士夫会長にコメントを求めたが、キヤノン広報部は「会長も会社も事件とは関係がなく、コメントをする立場にはない」と回答した。
毎日新聞 2009年7月17日 21時25分(最終更新 7月17日 23時49分)