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特集ワイド:10歳で被爆 美輪明宏さんの目に映る日本(5/6ページ)

 「日本は石油も鉄もニッケルもない。もともと戦争できない国なのに、根性、根性、根性--。根性なんて何の役にも立ちません。軍部は知力がなく、非科学的。日本人は野蛮人だった。その愚かさの結果が原爆ですよ」

 原爆が落ちた日、美輪さんの家の屋根瓦が落ちたのは「天井板をはずせ」という町内会の通達に従ったからだ。「スパイが隠れているかもしれない、不発弾がひっかかるかもしれないからって。そんなことを真剣に言っていたんですね、当時の日本人は」

 大声で話すと(米軍の)飛行機に盗聴される、と怒られた。歌や踊り、音楽、映画、芝居は「奢侈(しゃし)に流れる」と禁止され、美しいものは軟弱という理由で排除された。着物は紺のもんぺ色、国防色のカーキ色、どぶネズミ色しか許されず、美しい色を着ていたら警察にひっぱられた。インテリは国賊。大学を出た人が徴兵されると、上官に殴られた。

 無能な上層部が国を運営して国民が疲弊した知力なき時代。美輪さんは戦後64年たっても憲法9条を変えようとする勢力にその名残をみる。「そんな時代の残滓(ざんし)である自民党が壊滅状態になるということは日本が進化している証しの一つだと思う」。美輪さん、すっきり言い切った。政治評論家だってここまで言わない。

毎日新聞 2009年8月7日 東京夕刊

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