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悪い流れ、投打で断つ 明豊・野口昴平投手

2009年08月09日

 「粘れ」。6回表、野口昂平投手は、大悟法久志監督に言われて救援のマウンドに向かった。「4点なら取れる。自分が0点に抑えれば勝てる」。なぜか自信があった。

写真興南―明豊 9回裏明豊2死二塁、野口は左越えにサヨナラ打を放つ。投手島袋=杉本康弘撮影

 先発は投打で注目を浴びる今宮健太選手。緩い変化球を狙い打ちされ、守りも乱れて、5回までに3失点。打線も、相手エース島袋洋奨(ようすけ)に2安打に抑えられていた。

 野口は落ち着いていた。6回は要所で変化球を決め、二つの空振り三振と一ゴロで三者凡退にした。チームの雰囲気が変わった気がした。

 その裏、先頭打者で打席に向かう途中、次打者の平井徹右翼手と言葉を交わした。「おれたちで1点取ろうぜ」

 3球目、止めかけたバットにうまく球が当たり、左前に転がった。反撃ののろしが上がった瞬間だった。続く平井が送り、砂川の左前安打で1点目のホームを踏んだ。

 好救援は好守備も呼び込む。8回表1死二塁、右中間を抜けそうな当たりを懸命に追いかけた平井が、片手を思い切り伸ばして捕球した。「野口を助けたいという一心だった」というファインプレーに、スタンドから歓声と拍手が起きた。野口は「あれが抜けて1点入っていたら負けてたかも」と振り返る。

 同点の9回裏。チームは送りバントを2度失敗させられ、悪い流れで打順が回ってきた。二盗が決まった後の4球目。真ん中高めの直球を思い切り振り抜くと、打球は左翼手の頭上を抜け、二塁走者稲垣翔太がサヨナラのホームを踏んだ。一塁を回りながら、抱き合う平井と稲垣を見て、思わず笑みがこぼれた。

 試合後、大悟法監督は「今日の試合を作ったのは野口。期待以上」とねぎらった。「実は先発したかった」というエースの意地が、チームを救った。(水野梓)


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