長野市の松代大本営地下壕を特集している「ビッグイシュー日本版」最新号=東京・銀座 |
首都圏などでホームレスの人が販売し、売り上げを自立資金に充てる雑誌「ビッグイシュー日本版」が、発売中の最新号(1日発売)で長野市松代町の松代大本営地下壕(ごう)を特集している。終戦記念日を前に「戦争遺跡を市民文化財にする」をテーマに編集。市民主体で保存活動を行ってきた松代を主な題材に、戦争遺跡を通じて戦争の記憶の継承などを考えている。
松代大本営地下壕は5ページにわたり特集。「松代大本営の保存をすすめる会」の大日方悦夫さんと一緒に地下壕を歩いてのリポートで、保存運動の歴史や意義を紹介している。
また、中高生のころに保存運動にかかわった長野市出身の女性3人も登場。香山啓(ひろみ)さん、白沢史那さんには当時から今につながる松代への思いのインタビューを行い、英国でジャーナリストとして活躍する馬場千奈津さんからはエッセイを寄せてもらった。
ビッグイシュー日本版では、毎年8月に平和を考える特集を企画。発行元の「ビッグイシュー日本」(大阪市)の佐野章二代表(67)は「日本がかかわった戦争遺跡は数十万あるが、ほとんどが放置され、戦争は終わっていないと感じた」と話す。1990年代以降、各地で市民による保存運動が広がってきたが「若者の感性で始まった松代の保存運動は遺跡保存だけでなく、市民が平和を継承しようとする先駆的な試み」と評価。特集は「戦争を文化財にすることで戦争を終わらせ、戦争を永遠に忘れないとの願いを込めた」とする。
ビッグイシューは英国発祥でホームレスの自立を支援する雑誌。毎回、国内外の著名人が表紙を飾り、社会問題や識者インタビューなど「若い世代の立場から社会を考える」(佐野代表)内容が多い。
一冊300円で、160円が販売者の自立資金になる。全国で約150人の販売者がおり、東京の主要駅周辺などで立ち売りしている。毎月1日、15日に発行。長野県内では販売していない。