「どうしてころころ変えるんだろう?」
歯科医を目指す盛岡市の岩手医科大3年、平田真紀さん(25)は開口一番、疑問を口にした。近年の山積する医療の課題に対し、政府は診療報酬の引き下げや患者の自己負担増などの政策を立て続けに打ち出した。
その影響は身近なところで出ている。山あいに約1万7000人が暮らす宮城県山元町で、外科医の父が経営する病院の患者数が減ったと聞く。「初期症状のうちに受診しなければ余計お金がかかる。お金をかけないと健康を維持できないのは間違っている」と制度改革に危機感を募らせる。
医師不足に対応した医学・歯学部の定員増も、自身の進路を考えると複雑だ。「特に歯科医は盛岡のように地域によっては飽和状態。医師としては一般企業への就職も難しい」と表情は厳しい。
投票先の決め手は将来を見通せる政策があるかどうか。「素人目でもこれは実現できそう、と思える政策が一つでもあれば、そっちを選ぶ」。誰もが安心できる医療の構築を願う。【山中章子】
毎日新聞 2009年8月9日 地方版