きょうの社説 2009年8月8日

◎金沢の菓子文化 スイーツの街を売り出そう
 8日に開催される「金沢ゆめ街道」で、金沢の夏の風物詩だった「白山(しらやま)氷 (ごおり)」を現代的にアレンジした創作菓子が登場し、限定販売される。藩政期以来の菓子の伝統を背景に、最近は腕の立つパティシエ(洋菓子職人)による魅力的な菓子が次々に誕生し、金沢の菓子文化、食文化を発信する大きな存在になっている。

 世帯当たりの和菓子やアイスクリームなどの消費額が全国屈指の金沢は、甘党を受け入 れる環境が十分に整っている。和と洋が競い合う「スイーツの街」を大々的にアピールすれば、女性の心をつかみ、新たな観光資源にもなろう。

 札幌ではミルク、バターなどの原料生産地として「スイーツ王国さっぽろ宣言」を行い 、スイーツの生産日本一を目指している。推進協議会を設立し、地場農産物を生かした「さっぽろスイーツ」の開発やスイーツと都市型観光の融合、洋菓子職人の育成も進めており、官民一体の組織的な取り組みは金沢にとっても参考になる。

 札幌は洋菓子が中心だが、京都、松江と並ぶ三大菓子どころと言われる金沢の場合、藩 祖前田利家以来の菓子文化の土壌が強みである。4人のパティシエが考案した今回の「白山氷」の新作菓子にしても、郷土の歴史からヒントを得た作品であり、地域に根ざした菓子づくりのアイデアは他にも見つかるだろう。

 金沢では黄金連休中に開催される「百万石菓子百工展」をはじめ、年間を通して菓子の イベントが増えてきた。今年6月にはファッションショーを組み合わせた「東京スイーツコレクション」も人気を集め、芸術性を加味した見ごたえ十分の菓子はファッションの一部と言ってもよいだろう。今年の「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭」では、モーツァルトの名曲をイメージした菓子なども特別販売され、スイーツはいまや金沢のイベントを引き立てる文化として定着してきた印象を受ける。

 能登大納言小豆や加賀野菜などを使った菓子づくりも活発で、特産品の発信に役立つこ とも大きな魅力だ。菓子職人が腕を競う場を増やし、「金沢スイーツ」のブランド力をさらに高めていきたい。

◎不況下の株高 リスクマネー回帰の動き
 日経平均株価が底値から反転し、じわじわと上昇している。7日の東京市場は2日連続 で年初来高値を更新し、平均株価は3月安値から5割近くも上昇した。「不況下の株高」と呼ばれる状況は日本だけではなく、リーマン・ショック以降、株式市場から逃げ出したリスクマネーが再び回帰する現象がみられる。

 東京市場でも欧米の年金基金など、海外からの資金流入が観測されており、比較的好調 な日本企業の4〜6月期業績にも支えられ、外国人投資家の「日本買い」が続く期待も膨らんでいる。

 日経平均株価は3月の7000円割れ寸前で底入れし、10000円台を回復した。米 国、欧州、アジアでも企業業績の底打ちなどを理由に上昇しており、中国やインド、ブラジルなどでは株価がリーマン・ショック以前の水準近くにまで戻った。さらに商品市況も上昇の兆しが鮮明になり、出遅れ気味の日本株や原油、金などに資金が回帰し始めている。

 実体経済が悪いなかで、株価が戻り基調を強めてきたのは心強い。株価上昇で金融機関 の含み益が増えると、貸し出し余力が高まり、不動産融資などに好影響を与える。地価の下落にもようやく歯止めがかかるのではないか。

 各国の金融当局は景気対策のため財政負担が増え、長期金利の上昇圧力が高まる懸念を 表明しているが、日本は物価下落によるデフレが問題視されており、金利の上昇圧力は弱い。原油や金などの商品市況が上昇した場合もデフレを打ち消し、世界一の省エネ技術が生かせるという点で、それほど不利な要素になるとは思えない。

 日本株は出遅れていた分だけ、景気回復を先取りする買いが入りやすい。実体経済が不 調でも、将来への希望の光が見えてくれば、市場参加者は自然と増えるものである。今後の注目点は、これまでさんざん売りたたかれてきたメガバンクなど金融株の動きだろう。日本株がリーマン・ショック以前の水準に戻るには、出来高の増加が必要であり、特に動きの鈍かった金融株の出来高を伴う上げが必要になってくる。