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佐藤彰雄/スポーツEYE

2007年12月12日【ボクシング】
東洋太平洋王座を見直す意義


 プロボクシングの国際マッチメーカーでありWOWOWでの解説など評論家活動でも活躍しているジョー小泉氏と、こんな話をしたのは今年1月、新春初興行となった東京・後楽園ホールでだった。今年ももう終わりに近づいたというのに年頭の話を持ち出すのも何やら、変なことだが、ご勘弁を願いたい。

 ジョー小泉氏「今年はひとつ、意識の改革に着手したい年ですね。佐藤さん、どう思います?。東洋太平洋タイトルというのがなおざりにされていることを。私は日本、東洋太平洋という段階を踏みしめてしっかりと実績をつくり、世界に目を向けるシステムの必要性があると思いますが・・・」

 東日本ボクシング協会は今月7日の定例理事会で、世界挑戦の資格を日本、東洋太平洋タイトルの獲得経験者に限るという内規をつくることを検討、案をまとめた。この案は今月中に開かれる日本プロボクシング協会の理事会で可決されれば、来年から実施されることになる。

 協会がこの問題を検討した理由は、言うまでもなく10月11日のWBC世界フライ級タイトルマッチで王者・内藤大助(宮田)に挑戦した亀田大毅(協栄)の失態に対する反省である。大毅は日本、東洋太平洋タイトルを飛び越え、さしたる実績がないまま、プロデビューから11戦目の世界挑戦となった。しかも、井岡弘樹(グリーンツダ)が持つ国内の史上最年少世界王座奪取記録を更新するため、世界挑戦権が得られるWBCランク15位以内に無理やりねじ込んだと見られるいきさつもある。

 年頭にジョーさんとこの手の話を交わしていただけに、やはりボクシングというスポーツ、興行を最優先させて無理を重ねれば大毅騒動のようなことも起きるのだとつくづく感じたものだ。

 もっとも大毅のようなことは例外的な出来事で、もう話題にもしたくないが、全体的にこのところの日本プロボクシング界の傾向として東洋太平洋タイトルの価値が低下していることは確かだ。かつての東洋太平洋タイトルは、世界を狙う段階としての意味があったものだが、このベルトへの興味が薄れた理由のひとつとして、ある程度実績を積んだ日本人選手の世界ランカーとの対戦が容易になり、日本から東洋太平洋を飛び越して世界ランク入りする機会が増えたこともあるだろう。

 ここへきて協会側に世界戦に対する慎重論が出てきたことはいい傾向である。興行最優先の世界戦乱立、実力が伴わない急造チャレンジャーづくりなどが当たり前になってしまっては、日本のボクシング界に進歩はなくなってしまうのだから。

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