コラム

2009年08月06日号

【ここが問題】
東京地検特捜部は、西松建設の2・6億円の国税に対する使途秘匿問題を白日の下に曝せ


●朝日新聞記事
 6日付の朝日新聞朝刊35面には「西松建設、5億円所得隠し 2.6億円は使途秘匿 国税」という見出しの次の要旨の記事があった。
 準大手ゼネコン「西松建設」(東京)が東京国税局から約5億円の所得隠しを指摘され、うち約2億6千万円を「使途秘匿金」と認定されたことが分かった。大半は海外事業でつくった裏金をめぐるもので、国内外での工事受注の工作費に充てられていた模様だ。

 同社は「当局の指摘を受け入れることにした」としている。同社は既に重加算税や地方税などを含む追徴税額が約6億3700万円に上る見通しだと明らかにしている。

 同社が5月に公表した調査報告書などによると、同社は香港などに設立した複数のペーパーカンパニーを通じて工事費を水増しするなどして約9億円の裏金を捻出(ねんしゅつ)した。

 国税局はこのうち時効にかからない08年3月期までの7年分を調査。東南アジアの工事で架空外注費を計上したり日本に持ち込まれた裏金が本社の収益に計上されなかったりしたとして、悪質な所得隠しだと指摘した模様だ。

 同社関係者によると、裏金の大半は国内での工事受注のための工作費や地元対策費などとして、政治家関係者などに渡されたという。

 しかし同社は支払先を明かさなかったため、国税局は使途秘匿金として通常の法人税に加えて40%の制裁課税をしたとみられる。裏金のうち約8千万円は使われず、プールされていたという。(中村信義、舟橋宏太)

●裏金の使い道を明らかにせよ
<解説>西松建設事件の端緒となった海外での裏金工作については、計7000万円を税関手続を経ず日本に持ち込んだとして同社元社長らが外国為替及び外国貿易法(外為法)違反の有罪判決をうけている。今回、裏金捻出行為そのものが追徴課税処分そのものが対象になったて形で、所得隠しに外為法違反事件の対象となった裏金も含まれている模様だが、肝心の浦金の使途先は明らかにされないままだ。

 捜査の焦点は小沢一郎・民主党前代表側への政治献金問題に移ったが、事件の本質は裏金に依存する同社の体質にあったと言える。同社は国内でも過去5年間に約26億円を使途秘匿金として処理していた。そして今回も使途秘匿金課税を受けた。

 使途秘匿金制度は。03ー04 年のゼネコン汚職事件の契機に、懲罰的な課税によって汚職や談合につながりがちな企業の不正支出を抑止する狙いから導入された。高額な税負担の代りに不正支出を許す趣旨ではない。

 同社は事件を契機に歳出発を目指すとし、6月に公表した調査報告書でも。使途秘匿金について「必要悪であるとの考えを捨て去ることが肝要」と述べている。そけならば。国調査に対しても。裏金の使途を隠すべきではないか」(以上朝日新聞)

●国沢時代の西松建設の体質を斬る
「朝日新聞の解説における指摘に本誌も全面的に共鳴する。朝日の解説は正に「ここが問題」と指摘するものだ。東京地検特捜部は国民に代わって西松建設に対して高額な税金を支払う見返りに、使途を明らかにしなくてもいい制度を許すのはいかがなものか。西松は明らかに制度を悪用し不正を隠匿する不正義を行っていることになるからだ。

 本誌は西松に『使途不明金の行方』を明らかにさせなければ中途半端な捜査だと思う。贈収賄の疑いも抱かしめる本筋捜査を放棄する手抜き捜査と指摘せざるをえないからだ。特捜部は西松の使途秘匿問題を白日の下に曝すべきである。それでないと、法の番人としての任務に反すると感じるからだ」


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