BLADEMAN

戦わない。逃げない。
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私のラブレス・ナイフ
私のラブレス・ナイフ

私のラブレス・ナイフ

私のラブレス・ナイフ。R・W・ラブレス作・セミスキナー ステンヒルト/レッドスタッグ
R・W・ラブレス作・セミスキナー ステンヒルト/レッドスタッグ


もう12年も前のことであるが、私がラブレス氏の来日を取材した時の話である。

氏は腕時計やカメラ、セスナやバイクなどにも造詣が深いことで有名だ。

この来日の際に、ラブレス氏が探していたのが世界限定200台の一眼レフカメラ「ペンタックスZ−1」だった。

この台数だから、すでに完売してしまっていてペンタックス社のショールームにも工場にも参考展示の1台づつがガラスケースに置かれているのみで、お金を出しても入手できる物がなかった。関東中を散々、探して歩いたそうである。

氏が意気消沈されてナイフの展示会場に戻られた所へ、ちょうど私が取材に押しかけたかっこうになった。

私がカメラをかまえてラブレス氏の方へ近寄った時に、よろよろと立ち上がり、なにかにとりつかれた様に、というかまるで唖然とした表情で、氏の方から私に近寄って来られた。

私のカメラを指さし、声にならないしわがれ声で「あぁぁ、あった。これだ!」と、おっしゃった。

まぎれもなく、私が取材で持参したカメラが、なんとその世界限定200台の「ペンタックスZ−1」だったのである。

この時67歳になられていた氏は、無心でまるで子どもの様に私のカメラを離さず、ずっと手に取っていじっておられた。

この真剣なこだわりがあのナイフたちを産むんだな。・・・と、私は思いつつ。しばらく取材にならなかった。

私は、大ファンでもありナイフを少しでも知っている人なら誰でも当たり前に尊敬している「近代ナイフの神様」R・W・ラブレス氏の願いであるので、このカメラを差し上げたいと申し出た。
信じられない様な顔をした氏の大きな目を、今でもはっきりと覚えている。

3か月ほどして、私のもとに届いたのがこのナイフである。

スタイルはラブレス氏の名作「セミスキナー」。仕様が特殊である。さらにナイフ、シース共に本来シリアルナンバーを入れる部分に、私の名前が彫り込んである。
オーダーしても3年待ちの時になんとたった三月ですっ飛んできた。

96年8月13日の日付けであった。


作家やアーティスト、職人の作った物で、その作品に強い情念を感じる物はとても少ない。
ギターやナイフと、幾つかのカテゴリーでその頂点に接することが出来た私はとても幸せである。

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