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’09衆院選:民主マニフェスト修正 縦割り霞が関流 政権運営に懸念も

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 民主党は7日、衆院選マニフェスト(政権公約)を修正し、「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結」とした部分を「交渉を促進」へと後退させた。地方分権改革分野でも、「国と地方の協議の法制化」を追加する。先月27日に発表したばかりの公約が相次ぎ修正された背景には、決定過程に各分野の政策担当者を関与させず、一握りの幹部だけで決める「秘密主義」が影を落とす。「省庁縦割りの打破」を掲げる同党だが、官僚同様、内部の意思疎通の不十分さが招いた結果とあって、民主党政権が誕生したとしても政権運営に影響するとの懸念が出ている。【野口武則、小山由宇】

 ◇農村議員ら悲鳴

 「自民党の一部が、即農業を破壊するという非常に短絡的な主張を繰り返す。そういう誤解を招くとすれば本意ではない」。民主党の菅直人代表代行は7日の記者会見で、FTA部分の修正理由をそう説明した。

 民主党のマニフェスト発表翌日の7月28日、自民党の加藤紘一総合農政調査会最高顧問らが「FTA締結」の表記を「農業崩壊を招く」と批判し、全国農業協同組合中央会など、団体ぐるみの民主党攻撃が始まった。

 これには同党の農村部選出議員らが悲鳴をあげた。筒井信隆「次の内閣」農水担当は、直嶋正行政調会長に「国内農業を損なうFTAは民主党の方針からそもそもあり得ない」と修正を直談判。当初、民主党は地方分権の項目のみ見直す考えだったが、4日になって菅氏がFTA部分の修正方針を明言した。

 しかし、軸足がぐらついた感は否めない。「麻生太郎首相を批判している場合じゃない。我が党のオウンゴールだ」。「次の内閣」農水担当OBの議員は、今回の執行部の対応のまずさを嘆く。

 FTAは従来、農家への戸別所得補償制度創設とセットでマニフェストの農業分野に位置付けていたが、今回は外交分野に切り離された。「違う分野だからチェックが不十分になった。政治主導の政策決定過程が確立しないうちに、役人と同じ(縦割りの)ことをやっている」(同議員)

 ◇調整不足あらわ

 大阪府の橋下徹知事の問題提起が火を付けた、地方分権改革部分の修正も尾を引く。7日に東京都内で開かれた全国知事会との公開討論会。玄葉光一郎・党分権調査会長は冒頭で「国と地方の協議の法制化も最終的には記述する」と述べ、首相を議長とする新組織の創設にも言及するなど、知事側への配慮を示さざるを得なかった。

 地方分権を巡るどたばたも、執行部と担当者間の調整不足が原因だ。玄葉氏はこの分野の責任者だが、マニフェストの最終稿を見ることはできなかった。

 結局、執行部は橋下氏と将来連携する芽を残すことをにらみ修正を決めたものの、討論会終了後、玄葉氏は記者団に「(失点を)どこまで挽回(ばんかい)できたか。(執行部から)事前に相談があればよかった」と無念さをにじませた。

 ◇「至らない所も」

 「マニフェストを書く時にはあまりオープンにできない。限られた政調のメンバーを中心に詰めたので、やや表現が至らない所があった」。岡田克也幹事長は7日、広島市での記者会見で「秘密主義」の誤りを認めた。

 それでも、同日は麻生首相に「あれは正式じゃないと言ってみたり、やっぱり正式だったとかいろいろ言われる」と批判されるなど、与党に付け入るスキを与えた格好。民主党の若手議員からは「政権を取った後もこんなことをやっていてはいけない」との危機感が口をついて出た。

毎日新聞 2009年8月8日 東京朝刊

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