「ズッコケ三人組」シリーズは、1978年から2004年までに全50巻が刊行された児童文学の大ベストセラーだ。物語の舞台となった広島市西区のJR西広島駅前に今年4月、3人の主人公をかたどった石像が設置され、話題となった。
作者の那須正幹さんは広島市で生まれ、3歳の時に爆心地から約3キロの自宅で被爆した。年を重ねるにつれて被爆体験の継承を考えるようになり、「折り鶴の子どもたち」など原爆を取り上げた作品も書いてきた。
ズッコケシリーズは05年から一般に向け、主人公3人が40代になった「ズッコケ中年三人組」を刊行している。最新の4作目のテーマは「裁判員制度」。3人組の一人に裁判員の呼び出し状が届き、殺人罪に問われた男の裁判に臨むという推理小説仕立てのストーリーだ。
実際に刑事裁判に足を運んだり、弁護士に助言を受けるなど入念な取材をもとに執筆しており、臨場感はたっぷり。新制度の基本を楽しみながら知ることができる。
裁判員制度について那須さんは「自分が生きる社会に関心を持つことが、民主主義の第一歩」と述べている。重い言葉だ。
広島原爆の日のきのう、初めての裁判員裁判の判決が出た。国民の司法参加が、平和な民主主義社会を築く新たな一歩になることを信じたい。