きまり字

 
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一字ぎまりの歌
018 藤原敏行朝臣 住の江の岸による波よるさへや
夢の通ひ路人目よくらむ
022 文屋康秀 吹くからに秋の草木のしをるれば
むべ山風をあらしといふらむ
057 紫式部 巡りあひて見しやそれともわかぬ間に
雲がくれにし夜半の月かな
070 良暹法師 寂しさに宿を立ち出でてながむれば
いづこもおなじ秋の夕暮
077 崇徳院 瀬をはやみ岩にせかるる滝川の
われても末に逢はむとぞ思ふ
081 後徳大寺左大臣 ほととぎす鳴きつる方を眺むれば
ただ有明の月ぞのこれる
087 寂蓮法師 むらさめの露もまだひぬまきの葉に
霧立のぼる秋の夕暮
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二字ぎまりの歌
003 柿本人麻呂 あしひきの山どりの尾のしだり尾の
ながながし夜をひとりかもねむ
004 山部赤人 田子の浦にうちいでて見れば白妙の
富士の高嶺に雪はふりつつ
005 猿丸大夫 おく山に紅葉ふみわけなく鹿の
声きく時ぞ秋はかなしき
006 中納言家持 かささぎのわたせる橋におく霜の
白きを見れば夜ぞふけにける
010 蝉 丸 これやこの往くもかへるも別れては
知るも知らぬも逢坂の関
013 陽成院 つくばねの峰よりおつるみなの川
恋ぞつもりて淵となりぬる
014 河原左大臣 陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに
乱れそめにしわれならなくに
016 中納言行平 立ち別れいなばの山の峰に生ふる
まつとしきかば今かへり来む
017 在原業平朝臣 千早ぶる神代もきかず龍田川
からくれなゐに水くくるとは
020 元良親王 わびぬれば今はた同じ難波なる
身をつくしても逢はむとぞ思ふ
023 大江千里 月見ればちぢにものこそ悲しけれ
わが身ひとつの秋にはあらねど
024 菅 家 このたびは幣も取りあへず手向山
紅葉のにしき神のまにまに
026 貞信公 小倉山峰のもみぢ葉心あらば
今ひとたびのみゆき待たなむ
027 中納言兼輔 みかの原わきて流るる泉川
いつみきとてか恋しかるらむ
033 紀 友則 久かたの光のどけき春の日に
しづ心なく花の散るらむ
034 藤原興風 誰をかも知る人にせむ高砂の
松もむかしの友ならなくに
036 清原深養父 夏の夜はまだよひながら明けぬるを
雲のいづこに月やどるらむ
037 文屋朝康 白露に風の吹きしく秋の野は
つらぬきとめぬ玉ぞ散りける
040 平 兼盛 しのぶれど色に出でにけりわが恋は
ものや思ふと人の問ふまで
041 壬生忠見 恋すてふわが名はまだき立ちにけり
人知れずこそ思ひそめしか
043 権中納言敦忠 逢ひ見ての後の心にくらぶれば
昔はものを思はざりけり
044 中納言朝忠 逢ふことの絶えてしなくはなかなかに
人をも身をも恨みざらまし
046 曽禰好忠 由良のとをわたる舟人かぢをたえ
行く方も知らぬ恋の道かな
047 恵慶法師 八重むぐらしげれる宿のさびしきに
人こそ見えね秋はきにけり
051 藤原実方朝臣 かくとだにえやは伊吹のさしも草
さしも知らじな燃ゆる思ひを
052 藤原道信朝臣 明けぬれば暮るるものとは知りながら
なほ恨めしきあさぼらけかな
055 大納言公任 滝の音は絶えて久しくなりぬれど
名こそ流れてなほ聞えけれ
059 赤染衛門 やすらはで寝なましものを小夜更けて
傾くまでの月を見しかな
061 伊勢大輔 いにしへの奈良の都の八重桜
今日九重に匂ひぬるかな
062 清少納言 夜をこめて鳥のそら音ははかるとも
世に逢坂の関はゆるさじ
065 相 模 恨みわびほさぬ袖だにあるものを
恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
066 前大僧正行尊 もろともにあはれと思へ山桜
花よりほかに知る人もなし
071 大納言経信 夕されば門田の稲葉おとづれて
芦のまろやに秋風ぞ吹く
072 祐子内親王家紀伊 音にきく高師の浜のあだ波は
かけじや袖の濡れもこそすれ
073 前中納言匡房 高砂の尾の上の桜咲きにけり
外山の霞たたずもあらなむ
074 源俊頼朝臣 うかりける人を初瀬の山おろしよ
はげしかれとは祈らぬものを
082 道因法師 思ひわびさても命はあるものを
憂きに堪へぬは涙なりけり
085 俊恵法師 夜もすがらもの思ふ頃は明けやらで
ねやのひまさへつれなかりけり
089 式子内親王 玉の緒よ絶なば絶えねながらへば
忍ぶることのよわりもぞする
090 殷富門院大輔 見せばやな雄島のあまの袖だにも
濡れにぞ濡れし色は変らず
091 後京極摂政前太政大臣 きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに
衣かたしきひとりかも寝む
094 参議雅経 みよし野の山の秋風小夜ふけて
ふるさと寒く衣うつなり
097 権中納言定家 来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに
焼くや藻塩の身もこがれつつ
100 順徳院 百敷や古き軒端のしのぶにも
なほあまりある昔なりけり
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三字ぎまりの歌
001 天智天皇 秋の田のかりほの庵のとまをあらみ
我がころも手は露にぬれつつ
002 持統天皇 春過ぎて夏来にけらし白妙の
衣ほすてふ天の香具山
007 安倍仲麿 天の原ふりさけ見れば春日なる
三笠の山に出でし月かも
008 喜撰法師 我が庵は都のたつみしかぞすむ
世を宇治山と人はいふなり
009 小野小町 花の色はうつりにけりないたづらに
わが身世にふるながめせしまに
012 僧正遍昭 天津風雲の通ひ路吹きとぢよ
をとめの姿しばしとどめむ
021 素性法師 今来むといひしばかりに長月の
有明の月を待ち出でつるかな
025 三条右大臣 名にしおはば逢坂山のさねかづら
人に知られでくるよしもがな
028 源宗于朝臣 山里は冬ぞさびしさまさりける
人めも草もかれぬと思へば
030 壬生忠岑 有明のつれなく見えし別れより
暁ばかりうきものはなし
032 春道列樹 山川に風のかけたるしがらみは
流れもあへぬもみぢなりけり
035 紀 貫之 人はいさ心も知らずふるさとは
花ぞむかしの香ににほひける
038 右 近 忘らるる身をば思はず誓ひてし
人の命の惜しくもあるかな
039 参議 等 浅茅生のをののしの原しのぶれど
あまりてなどか人の恋しき
045 権徳公 あはれともいふべき人は思ほえで
身のいたづらになりぬべきかな
048 源 重之 風をいたみ岩うつ波のおのれのみ
砕けてものを思ふころかな
049 大中臣能宣朝臣 御垣守衛士のたく火の夜はもえ
昼は消えつつものをこそ思へ
053 右大将道綱母 歎きつつひとりぬる夜の明くる間は
いかに久しきものとかは知る
054 儀同三司母 忘れじの行末までは難ければ
今日をかぎりの命ともがな
056 和泉式部 あらざらむこの世のほかの思ひ出に
今ひとたびの逢ふこともがな
058 大弐三位 有馬山猪名のささ原風吹けば
いでそよ人を忘れやはする
060 小式部内侍 大江山いく野の道の遠ければ
まだふみも見ず天の橋立
063 左京大夫道雅 今はただ思ひ絶えなむとばかりを
人づてならで言ふよしもがな
067 周防内侍 春の夜の夢ばかりなる手枕に
かひなく立たむ名こそ惜しけれ
069 能因法師 あらし吹く三室の山のもみぢ葉は
龍田の川のにしきなりけり
078 源兼昌 淡路島通ふ千鳥の鳴く声に
幾夜ねざめぬ須磨の関守
079 左京大夫顕輔 秋風にたなびく雲の絶え間より
もれ出づる月の影のさやけさ
080 待賢門院堀川 ながからむ心も知らず黒髪の
乱れて今朝はものをこそ思へ
084 藤原清輔朝臣 ながらへばまたこの頃やしのばれむ
憂しと見し世ぞ今は恋しき
086 西行法師 なげけとて月やはものを思はする
かこち顔なるわが涙かな
092 二条院讃岐 わが袖は潮干にみえぬ沖の石の
人こそ知らね乾く間もなし
095 前大僧正慈円 おほけなくうき世の民におほふかな
わが立つ杣に墨染の袖
096 入道前太政大臣 花さそふあらしの庭の雪ならで
ふりゆくものは我が身なりけり
098 従二位家隆 風そよぐならの小川の夕暮は
みそぎぞ夏のしるしなりける
099 後鳥羽院 人も惜し人も恨めしあぢきなく
世を思ふゆゑにもの思ふ身は
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四字ぎまりの歌
019 伊 勢 難波潟みじかき芦のふしの間も
あはでこの世を過ぐしてよとや
029 凡河内躬恒 心あてに折らばや折らむ初霜の
おきまどはせる白菊の花
042 清原元輔 契りきなかたみに袖をしぼりつつ
末の松山波こさじとは
068 三条院 心にもあらでうき世にながらへば
恋しかるべき夜半の月かな
075 藤原基俊 契りおきしさせもが露を命にて
あはれ今年の秋も去ぬめり
088 皇嘉門院別当 難波江の芦のかりねの一夜ゆゑ
身をつくしてや恋ひわたるべき
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五字ぎまりの歌
083 皇太后宮大夫俊成 世の中よ道こそなけれ思ひ入る
山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
093 鎌倉右大臣 世の中は常にもがもな渚こぐ
あまの小舟の綱手かなしも
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六字ぎまりの歌
011 参議 篁 わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと
人にはつげよあまのつり舟
015 光孝天皇 君がため春の野に出でて若菜つむ
我が衣手に雪はふりつつ
031 坂上是則 朝ぼらけ有明の月と見るまでに
吉野の里にふれる白雪
050 藤原義孝 君がため惜しからざりし命さへ
ながくもがなと思ひけるかな
064 権中納言定頼 朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに
あらはれわたる瀬々の網代木
076 法性寺入道前関白太政大臣 わたの原漕ぎ出でて見れば久かたの
雲ゐにまがふ沖つ白波
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