現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 社会
  4. その他・話題
  5. 記事

夢枕の師匠一喝、事故から復帰 全盲の落語家伯鶴さん(1/2ページ)

2009年8月8日0時8分

写真:事故から8カ月ぶりに舞台に復帰する笑福亭伯鶴さん=大阪市淀川区事故から8カ月ぶりに舞台に復帰する笑福亭伯鶴さん=大阪市淀川区

 大阪市淀川区の駅で昨年12月、電車と接触して一時重体となった全盲の落語家、笑福亭伯鶴(はっかく)さん(52)が8日、8カ月ぶりに舞台に復帰する。夢枕に立った故・笑福亭松鶴(しょかく)師匠から一喝されて、回復した。まだ後遺症があり、復帰の第一幕はトークショーだが、「落語はまたぼちぼち」と気負いはない。

 「事故の前後のこと、全然覚えてまへんねん。病院では機嫌よぉ寝てましたな」

 昨年12月1日夜。伯鶴さんは寄席の打ち合わせを終え、最寄りの阪急宝塚線三国駅ホームで下車した後に、方向を誤って電車に接触、ホーム上を約15メートル引きずられた。脳挫傷と両足骨折の重体で、意識が戻ったのは1カ月後だった。

 病院のベッドでもうろうとするなか、師匠の故・六代目笑福亭松鶴さんと「再会」した。新弟子時代のように、朝、ほうきを手に師匠宅を掃除していた伯鶴さんに、松鶴さんが声をかけた。「おい、何してんねん」。続けて「おのれの来るとこやあらへん。来るの20年早いわ。往(い)にさらせ(行ってしまえ)」と、しかりつけた。

 「けったいな夢やった。けど、あのままおったら死んでたな」。4月末の退院後、真っ先に師匠の墓参りをした。

 まだ、左半身などに後遺症が残り、外出には車いすを使う。高座には欠かせない正座は「一番つらい」。持ちネタも古典は覚えているが、新作は記憶が途切れ途切れに。

 だが、「生きてるだけでありがたい」。しゃべりや歩行のリハビリを週に1、2度続けながら、点字新聞での連載を6月から再開した。「長いこと入院してると猫舌になる。病院食ちゅうもんはとにかく冷めてまっさかいに」。苦しかった入院生活もさらりとネタに取り込む。

 親しい落語作家らが、復帰の舞台を用意した。それが伯鶴さんと妻との仲人でもあったジャーナリストの故・黒田清さんの追悼高座だ。

前ページ

  1. 1
  2. 2

次ページ

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内