被爆地の広島に64回目の「原爆の日」がめぐってきた。きょうの「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」で核廃絶への誓いを新たにしたい。
今年は例年にもまして反核機運が盛り上がっている。米国のオバマ大統領が4月に「核兵器のない世界」を追求すると宣言し、「核兵器を使用した唯一の国として米国には道義的責任がある」と言明したのが追い風となっているのだろう。
それ以来、被爆者や平和団体からオバマ大統領に被爆地訪問を望む声が相次いでいる。服飾デザイナーの三宅一生さんも先月、ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、広島訪問を促したばかりだ。
三宅さんはそれまでの沈黙を破り、幼年時代の原爆体験を明かした。「赤い閃光(せんこう)を放ち、直後に黒い雲が上がり、人々があらゆる方角に逃げ惑った」のを目撃した。母親も被爆し、3年たたないうちに亡くなったという。
つらい体験を語れない人が何と多いことか。三宅さんが公にする気持ちになったのは、「世界から核兵器をなくすためには、原爆体験を語っていかなければならないことに気付いた」からだ。
世界の指導者に知ってほしいのはこうした語り部たちの声である。国連総会のデスコト議長(ニカラグア)が今回、広島と長崎の式典に出席する。被爆地の声をぜひ聞いてほしい。