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【断層】呉智英 追悼「三バカ大将」
「新左翼三バカ大将」と称された三人のうちの二人が相次いで亡くなった。五月に太田竜、七月に平岡正明である。もう一人の竹中労は十数年前に亡くなっている、三人ともその醜名(しこな)通りの人物だった。多少まともだったのは竹中。太田はバカというより、新聞では書けないアレだった。平岡はこの路線じゃ駄目だと思ったのか、昔のことは口を拭った。どっちにしろ太田も平岡もゲテモノである。ところが、七月十六日と二十三日に朝日新聞は大きく追悼記事を載せた。正気とは思えない。
平岡は一九六二年頃、犯罪者同盟を結成。私有財産否定の犯罪者革命を決行すべく古本屋で『悪徳の栄え』を万引きしたはいいが、警察に逮捕され、梅本克己や丸山真男に嘲笑(ちょうしょう)された。私はその十数年後、犯罪者同盟について平岡に聞こうとしたが、それは秘密ですとかわされた。犯罪者こそ革命家だと言うのなら、支那で略奪や強姦をして戦争犯罪者となった連中も革命家なんですね、とも聞こうと思ったが、可哀想で聞けなかった。根は善良な人なのである。
太田は完全にアレだった。初めは抑圧された無産階級に連帯し、次にはその無産階級にも抑圧されているアイヌとの連帯を叫び、その次にはそもそも人間に抑圧されている動物の解放を訴え、最後にはその動物にも抑圧されている大地の解放を唱えた。もうこれでないだろうと思っていたら、最後の最後は「ユダヤ陰謀論」だった。
共産主義のロシヤ革命も人権主義のフランス革命も、実体を調べてみればこれと同じ喜劇的悲劇の妄動なんだよと、三人は身をもって演じたのである。(評論家)
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