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「『黒い雨』区域拡大を」 県・市へ要望2009年01月07日 原爆投下直後に降った「黒い雨」を浴びながら、国の援護対象の指定外となっている地域住民らでつくる県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会(高野正明会長、約1千人)が要望活動を強めている。昨年12月25日に県庁と広島市役所を訪れ、指定区域の拡大を目指し、国へ一層の働きかけるよう訴えた。市は現在進めている被害実態調査を早急にまとめ、国に要望していく考えを伝えた。 強い放射能を含む黒い雨は爆心地から北西方向の広い範囲に降り、20キロ以上離れた旧湯来町(現・広島市佐伯区)や旧加計町(同・安芸太田町)でも、多くの住民が浴びたと証言している。 ただ、援護対象になっているのは、公費で健康診断が受けられ、がんなど11種類の疾病になった場合は被爆者健康手帳に切り替えられる「第1種健康診断特例地域」に76年に指定された佐伯区や安佐南区などの一部にとどまる。53年の国の被害調査が「大雨地域」と判断したのが根拠だ。 これに対し、「小雨地域」とされた地域の住民たちは「被害者の会」を相次ぎ結成し、約30年にわたって雨域の拡大を訴え続けてきた。 広島市役所を訪れた被害者たちは、自ら見た黒い雨の実態を改めて訴えた。 佐伯区八幡2丁目の小川泰子さん(68)は自宅の庭で遊んでいて黒い雨を浴びた。多くの子たちが毒性のある雨とは思わず、むしろ「黒い雨は珍しい」と屋外ではしゃいでいたのを覚えている。白いブラウスが灰色に染まり、洗っても落ちなかった。 今、小学校の同級生の半数以上がすでに亡くなったという。小川さん自身も小学生の頃から体が弱く、現在は肝がん一歩手前の肝硬変に苦しむ。「平均寿命まで生きられないかもしれない。国が早く対応するよう、市や県は厚生労働省に立ち向かってほしい」と声をつまらせる。 広島市や県も再三、指定地域の拡大を国に要望しているが、国は「科学的根拠がない」と消極的だ。 このため市は、08年6月に全市域で始めた「原爆被爆実態調査」に期待をつないでいる。対象に選ばれた約3万5千人には黒い雨を浴びた人も含まれる。全員アンケートや約1千人を抽出した面談調査を通じて被害の実態を把握し、国に指定拡大を求める証拠にしたい考えだ。福岡美鈴・市原爆被害対策部調査課長は「市としても指定地域を広げたいとの思いは同じ。できる限り早く調査結果をまとめたい」と話す。(加戸靖史)
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