新潟青陵大学大学院(碓井真史) /心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座) /犯罪心理学/レイプ
2009年2月25日夜、京都市内の居酒屋で京都教育大学スポーツ部のメンバーによるコンパが開かれていました。
その居酒屋の別室にて、泥酔した女子大生(当時19歳)に対して6人の男子学生が集団で暴行をはたらいたとして集団準強姦の疑いで逮捕されました。
大学は当初女子学生からの訴えを受け、男子学生らを公然わいせつの罪に当たる行為があったとして、無期停学処分にしました。大学は警察に通報もせず、処分を公にもしませんでした。
その後、女子学生が警察に通報し、6月になって男子学生らは逮捕されました。
集団準強姦罪とは
暴力的的な強姦(ごうかん)罪に対して、準強姦罪は酒や薬物などで意識が低下て抵抗できない状態にして暴行した場合に適用される。
集団準強姦罪は、早稲田大のサークル「スーパーフリー」メンバーによる女子大生集団暴行事件を受けて、2005年に作られた法律。罰則は単独犯による準強姦罪より重い「4年以上の懲役」で、有罪になれば執行猶予がつかない。
レイプは単純に性欲だけによる犯罪ではありません。恋人や妻がいたり、性風俗店に通っているような男性も、性犯罪を犯すことがあります。
レイプのような性犯罪の動機としては、次のものが考えれます。
- 女性への敵意と怒り:女性に冷たくされた男性が女性に復讐する心理
- 状況的喚起:計画性はなく、たまたま性犯罪を犯しやすい状況に出くわした場合
- 性的欲望:欲望を満たすための道具として女性を使う
- 征服と支配:女性を屈服させたい思い
- 遊びとスリル:ゲーム感覚の性犯罪
健康的な男性も性欲をもちろん持ちますが、わざと女性を傷つけるようなことはしません。力づくで女性を支配しようとはせず、社会で活躍し、女性に親切にすることで、女性からの愛と尊敬を得ようと努力することでしょう。
多くのスポーツ選手は、もちろん良い人々です。
しかし、今回京都では、2006年にも京都大学アメリカンフットボール部の元部員ら3人が女子学生を集団で暴行したとして 逮捕されています。
そして、残念ながらスポーツ選手たちによる性犯罪は少なからず起きてしまっています(『スポーツ・ヒーローと性犯罪』大修館書店)。
彼らは他のまじめな選手たちとは異なり、屈強な体と脆弱な精神の持ち主です。
彼らは男性としての強さを誤解し、体育会的な上下関係や連帯意識を悪用し、女性を支配しようとします。
他のレイプ事件もそうですが、スポーツ選手によるレイプ事件も、多くの場合被害者は加害者と顔見知りです。
彼らはスポーツ選手としての力、先輩であることや、ヒーローであることを悪用して、女性に近づきいうことをきかせ、そして犯罪行為を行います。犯人たちにとっては、そのような女性たちは、お手軽な獲物になってしまうのです。
アメリカの研究によれば、スポーツ選手によるレイプ事件のうち3割が集団レイプでした。彼らにとっては、集団レイプは性欲を満たすだけではなく、集団内で力を誇示する地位を守る手段にもなっていると考えられています。
さらに、この研究によれば被害者女性は、体力的にも人数的にも圧倒的に優位による男性たちによって圧倒され、さらに被害者女性はアルコールなどによって意識がはっきりしていない不安定な状態にさせられていることが多いとしています。
今回の、京都教育大生スポーツ部員による集団レイプ事件も、典型的なスポーツ選手による性暴力事件だったと言えるでしょう。
その後の報道によると、被害者女性は、宴会の中で何回も「一気飲み」を強要されていたということです。
レイプ犯の男性を、けだもの(野獣)のような人だということがありますが、私はこれはけだものに失礼だと思います。
ほとんどの動物は、レイプなどしません。ライオンやトラのオスが力づくでメスと交尾することなどないでしょう。
オスたちは、懸命に求愛行動を行い、メスがオスを選ぶのが、一般的な動物の行動でしょう。(人間の恋愛はなおさらのこと自由意思に基づいて、お互いがハッピーになれるはずのものでしょう。)
しかし、複雑な心を持ってしまった人間は、その心によって素晴らしいことができる反面、動物もしないような卑劣なこともしてしまうのです。
アメリカの研究によれば、レイプで告発されたスポーツ選手には次の2つの特徴があります。
1 犯罪歴(特に女性に対する犯罪歴)があること。(女性に対して犯罪的な性暴力を行ったことがある)
2 アブノーマルな性行為に没頭していること(合意のうえでの通常の性行為ではなく暴力的、犯罪的な性行為でないと満足d系内など)
今回の容疑者男性は、名門教育大学の学生です。犯罪歴、補導歴については、今のところ不明です。しかし、今回の犯罪は犯罪方法をみると、偶発的というよりは、計画的に見えます。手慣れているようにも思えます。
言うまでもなく、被害者は責められるのではなく、守られ支援されるべきです。しかし、しばしば性犯罪被害者は責められてしまうことがあります(たとえば、なぜ夜道を一人で歩いていたのかなど)。
被害者は犯罪自体で傷つき、さらに社会によって傷つけられることも多いのです。
ショッキングな出来事を体験した人々は、心の傷の後遺症(PTSD)として、
1侵入(突然その時の恐怖がよみがえるなど)
2回避(自県の場所や似たような環境に近づけないなど)
3覚醒(小さなことにもびくびくしてしまうなど)
などの症状が見られることがあります。
さらに、『犯罪被害者の心の傷』によれば、犯罪被害者の場合は、次のような心の傷、症状をもちやすくなります。
- 恥:被害にあって恥ずかしいと思ってしまう。
- 自責:自分を責める。
- 服従:無力になって人の言いなりになってしまう。
- 加害者への病的な憎悪:憎むのは当然なものの常軌を逸した憎悪。
- 加害者への逆説的な感謝:ストックホルム症候群など。
- 汚れてしまった感じ:特に性犯罪の場合に陥りやすい。
- 性的抑制:男性とつきあえなくなるなど。
- あきらめ:意欲をなくしてしまう
- 二次受傷:世間からの非難中傷など。
- 社会経済状況の悪化:会社や学校を辞めざるを得なくなる。
被害者の苦しみは私たちの想像をはるかに超えて、長く深く続きます。
長期にわたる親身な支援が必要です。
その結果、長い長い時間はかかるでしょうが、被害者もその方本来の輝きを取り戻していくのです。そして、もう一度立ち上がれる時が来るのです。
☆『STAND―立ち上がる選択』 レイプ被害から立ち上がったフォトジャーナリストによる魂の記録:被害を受けた著者自身が、同じように被害を受けて、そして立ち上がってきた女性たちの写真をとりながら綴る心の軌跡。
私たちはみんな弱さを持っています。見かけ上強い人々は、なおさらのこと自分の弱さを自覚し、自制が求められるでしょう。もちろん、スポーツ選手を悪者にするつもりはありません。優等生が秋葉原で無差別殺傷通り魔事件を起こしたからといって、全国の優等生を悪者にする人はいないでしょう。
ただ、勉強であれ、スポーツであれ、すぐれた力を持っている人は、喜びも得られるでしょうが、苦しみもあるでしょう。しかいっそれでもなお、力を持った人々はその力を人々のために使う社会的責任があるはずです(ノブレス・オブリージュ)。そして、自分の力を人々の幸せのために使うことが、その人自身の幸せにつながっていくのでしょう。
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『STAND―立ち上がる選択 』
レイプ被害から立ち上がったフォトジャーナリストによる魂の記録。 被害を受けた著者自身が、同じように被害を受けて、そして立ち上がってきた女性たちの写真をとりながら綴る心の軌跡
『犯罪被害者の心の傷
』
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『犯罪心理学 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!-)』
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2008年9月緊急発行 『誰でもいいから殺したかった! 追い詰められた青少年の心理』 |
2008年8月発行 『人間関係がうまくいく図解嘘の正しい使い方:ホンネとタテマエを自在にあやつる!心理法則 |
2000年 『なぜ少年は犯罪に走ったのか』 |
2001年 『ふつうの家庭から生まれる犯罪者 |
2000年 『なぜ少女は逃げなかったのか:続出する特異事件の心理学』 |
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