民主党は結党以来、沖縄政策に取り組んできた。1999年7月に「民主党沖縄政策」を発表し、2000年2月に「軍用地返還特別措置法(軍転法)改正案」を提出、同年5月には「日米地位協定の見直し案」を提示した。その後、2001年末より数次に亘り調査団を派遣し、2002年5月に「沖縄ビジョン協議会」を沖縄の有識者17名で設立し意見交換を行い、2002年8月に那覇市で「民主党21世紀沖縄ビジョン」を発表した。
今回示したビジョンは、この3年間の環境変化を踏まえ、第三次沖縄振興開発計画の進捗も考慮し、新たなメンバーを加えたビジョン協議会を立ち上げ、その議論を踏まえ改訂したものである。
沖縄は東アジアにおいて独自の地理的位置を占め、広大な海域に分布する亜熱帯性気候におおわれた島嶼地域である。
このような特異な自然的風土の上に「琉球」という独自の国家を成立させ、日本列島とは異なる歴史をたどった。その後、島津侵入(1609年)、琉球処分=沖縄県設置(1879年)という経緯を経て段階的に日本社会のうちに編成され、更に太平洋戦争後にアメリカによる統治を経験した後、住民の選択・要求の結果として日本社会へ再び復帰したものである。
沖縄は先の大戦で唯一の地上戦が繰り広げられ数多くの尊い人命が失われた土地であり、終戦後27年間は米国の施政権下に置かれたばかりか、更に1972年の復帰以降も在日駐留米軍専用施設面積の75%が集中する等の状況が続いていることが沖縄の進むべき道を妨げている。
しかし、「沖縄」を考える時に、「負の清算」にとどまるべきではない。米軍基地をはじめ軍事基地を減らしていくための絶え間ない努力を続けながら、基地経済からの脱却方法を探ることが欠かせない。
かつての環シナ海交易を通じて沖縄は、歴史的に中国本土、朝鮮半島や台湾、更には東南アジア各地と深いつながりを持ってきた。グローバル化が進む今日、東アジアの中心に位置する沖縄の地理的特性等はますますその重要性を高めている。
こうした自然と風土、歴史と文化の資産を活かし、観光・交流、研究・教育や安全保障等で沖縄があらためて自主自立の新たな道を切り開くことを通じて、沖縄はアジア、そして世界への日本の情報発信や各種貢献を実現する力強い魅力あふれる先端モデル地域になりうると考える。
民主党は「自立・独立」「一国二制度」「東アジア」「歴史」「自然」の5つのキーワードが、沖縄の真の自立と発展を実現するための道しるべになると考えている。つまり、沖縄において「自立・独立」型経済を作り上げるためには、「一国二制度」を取り入れ、「東アジア」の拠点の一つとなるように、沖縄の優位性や独自性のある「歴史」や「自然」を活用することである。そして、これらのキーワードを活用する沖縄を通じて、日本は目指すべき次なる姿を描けると考える。
本土復帰後の沖縄においては三次に亘る「沖縄振興開発計画」に基づいて振興が図られ、社会資本整備など一定の成果をあげてきたが、一方で日本の他地域同様に中央集権的で画一的な制度が適用され、中央の発想による公共事業が行われてきたといえる。このため、補助金依存体質が助長され、また、経済活動が、本土、特に東京圏主導の構造になっている。この構造から抜け出るためには、まず、沖縄が独立の気概を持ち、その気概を中央政府がくじくことなく応援をし、自立型経済構造を築き上げることが重要である。ここで敢えて誤解を恐れずに「独立」という言葉を使ったのは、「日本からの独立」という意味ではないことは言うまでもない。
この「自立・独立」を着実に進めるためには、地域主権のパイロットケースとしての「一国二制度」を全国に先駆けて導入する必要がある。既に行われているFTZ(フリー・トレード・ゾーン)※1)などが他地域と比べて優位性が見られない中途半端なものと言わざるをえない現状下では、むしろ、競うべき対象、連携すべき対象は「東アジア」の他国・他地域であるという視点での取り組みが求められる。そのため、奄美諸島を含めた琉球弧として、そして、個性豊かな伝統文化を内包する「歴史」、美しい海やサンゴ礁を有する島の魅力に根ざした、やすらぎや健康・長寿をもたらす沖縄の「自然」を最大限活かすこと、そのためのシナリオとして地域間交流、国際交流を積極的に進めること、戦争体験に基づき沖縄が取り組んできた国際平和確立に向けての取り組みを更に具体化することを目指した政策こそが、沖縄の真の自立と発展に寄与すると考える。
なお、地域主権政策として民主党は道州制を提唱し、既に、3年前の当ビジョンでは「沖縄は歴史的にも地理的にも独自性が高く、九州と統合した単位で検討するべきでないと判断し、単独の道または州とするべき」としている。これを受けて、政府はじめ諸機関でも「沖縄」を単独の道州に位置付けてきたが、「沖縄州」としての財政的な裏づけを支えるためにも上記の5つのキーワードが重要な切り口になると考える。
日本復帰後30年以上たった今なお、在日駐留米軍専用施設面積の約75%が沖縄に集中し過重な負担を県民に強いている事態を私たちは重く受け止め、一刻も早くその負担の軽減を図らなくてはならないと考える。民主党は、日米安保条約を日本の安全保障政策の基軸としつつ、日米の役割分担の見地から米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す。
また、沖縄が平和教育の発信地となるよう、平和に関する研究を更に促進し、真にアジアの平和と安定に寄与する沖縄を目指す。
基地の対価としての補助金が沖縄経済に一定の役割を果たしているとの指摘もあるが、2002年度の一人あたりの行政投資額※2)が全国で16位程度であることからも窺えるように、決して中央政府から多額の資金が沖縄に流れているというわけではないことを認識し、基地縮小に際しての雇用を中心とした経済問題には、セーフティーネットの確保も含め十分な対策をとる必要がある。
民主党は2000年5月に「日米地位協定の見直しについて」を提示した。2004年12月には沖縄国際大学への米海兵隊ヘリコプター墜落事故を踏まえ、事故等の捜査を原則日米両当局の合同捜査とする「日米合同委員会」の議事録を原則公開とする等の内容を加筆した「日米地位協定改定案」作成に着手した。沖縄では先般の少女への事件に見られるように米兵による卑劣な犯罪等も依然発生している。沖縄県等とも連携を深めながら、航空管制権及び、基地管理権の日本への全面的返還を視野に入れつつ、大幅な地位協定の改訂を早急に実現する。
1996年、日米両政府が設置した「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」は、米海兵隊普天間航空基地の返還をはじめとする在沖米軍基地を整理・統合・縮小することに合意した。しかし、SACO合意が期待通りに進まない間に地域・国際環境は大きく変化し、米軍の軍事技術も目覚しい進展をみた。このような状況を踏まえて、SACO合意の適切な実施に向けて努力をし、また、沖縄県民の意思を最大限尊重した更なる基地の整理縮小を検討する『SACO2』の設置を目指す。
現在、米軍は世界規模での再配置(トランスフォーメーション)を進めているが、キャンプ・ハンセンの都市型訓練施設について地元の反対にもかかわらず訓練を強行するという問題も発生している。
沖縄の負担軽減という観点に立てば、トランスフォーメーションの機を逃さず早期に上記『SACO2』を設置し、市街地の兵站施設、乱立する通信施設、遊休地の返還など、更なる米軍施設の縮小を図るべきである。同時に、在沖海兵隊の海外移転を、事前集積制度(POMCUS)※3)の可能性も含め積極的に検討を進める。
普天間基地の辺野古沖移転は、事実上頓挫している。トランスフォーメーションを契機として、普天間基地の移転についても、海兵隊の機能分散などにより、ひとまず県外移転の道を模索すべきである。言うまでもなく、戦略環境の変化を踏まえて、国外移転を目指す。民主党は、既に2004年9月の「普天間米軍基地の返還問題と在日米軍基地問題に対する考え」において普天間基地の即時使用停止等を掲げた「普天間米軍基地返還アクション・プログラム」の策定を提唱している。なお、いわゆる「北部振興策」については基地移設問題とは切り離して取り扱われるものであり引き続き実施する。
思いやり予算については、2005年度で現在の特別協定の期限(5年)が切れる。経済、財政事情が悪化する一方で公共事業的支出が高まっており、基地の固定化を強めかねない。提供施設整備が過剰になっているとの指摘もあり、改訂を機に特別協定に基づく光熱水料、訓練移転費や地位協定を根拠とした提供施設整備費等について必要な削減を行う。
基地縮小後の跡地の有効活用については、沖縄の主体的取り組みを支援する。また、基地返還後の跡地利用は、今後の他の基地返還に資するよう、以下の点に留意すべきである。
在沖米軍の課題を話し合うテーブルに当事者の立場として沖縄県等も加える。また、現在、外務省に沖縄大使が設置されているが、沖縄国際大学での事故対応でも機能不全が指摘されたことを踏まえ、そのあり方、位置付け等について必要な見直しを行い、沖縄の声がより日本政府や米国に伝わるようにする。
嘉手納基地をはじめ、米軍機の騒音が基地周辺住民に健康被害と生活被害を与えていることについて、速やかに被害解消のための措置をとる。
沖縄の地理的特性を生かし、例えば東アジアを主たる活動地域とする国際機関を沖縄に誘致して、沖縄を東アジア地域に貢献する拠点とすべきである。
沖縄県における経済・産業面での活性化は、従来型の補助金や優遇措置に依存する活性化ではなく、沖縄本来の魅力や特性を最大限活用することを基本的な方向性とする。具体的には、2002年の沖縄振興計画を踏まえ、本土と比べて高い失業率を解消するために、雇用吸収力の高い観光・リゾート産業、地理的不利性が低く将来への発展が見込まれる情報通信関連産業、更には亜熱帯気候の地域特性を生かした農林水産業などを中心とした産業振興を図ることによって、安定した雇用を確保する。また、基地の存在により開発が進まなかったために保存されてきた沖縄県特有の自然資源や、離島という地理的条件などによって育まれた伝統・文化資源をフルに活用し、本土との大きな経済格差を縮め、経済的に自立した沖縄を形成する。
沖縄は、自然・歴史・文化などの観光・リゾート環境に恵まれ、ストレスの少ないスローライフ※4)を実現できる拠点としての発展が期待できる。なお、沖縄県への観光については、観光客の滞在日数の減少に加え観光客の消費が低下していることを考慮し、沖縄の観光資源を活用したプログラムの提供などにより付加価値の高い滞在型の観光・リゾート地の形成を図る。
また、沖縄の東アジアの中央に位置するという地理的特性を活かし、ビジネス拠点としての優位性を生かした既存産業の振興ならびに新たな起業の支援を行う。
情報通信関連産業を振興し、沖縄経済を引っ張る競争力ある産業に育てる。情報通信分野においては、コールセンターの集積、光海底ケーブルの陸揚げ地点などの利点を活かし、人材の育成、新規企業の立地等を進める。また、自然災害などを考慮し、全島に光ケーブルを整備すると共に衛星回線を活用し、沖縄にサイバーバンク・バックアップセンターを整備するなどして雇用を促進する。
本土に先行して、航空や海運等の運輸産業において大胆な規制緩和を実施する。航空産業においては、島嶼地域、台湾等も含め新路線の開設が容易となる環境をつくると共に、航空機燃料税の軽減の拡大による航空運賃の見直しの環境整備を進める。また、物流面では、内港海運コスト軽減による物価引き下げ等を実施するほか、那覇港における「ガントリークレーン構想」※13)など現在活用度が低いインフラを積極的に活用して、東アジアの国際物流拠点としての整備を促進する。
離島でも安心して医療を受けられる医療基盤を整備し、医療従事者の育成を図り、沖縄における保健医療の要請に応える医療福祉産業を育てる。また、沖縄の健康・長寿イメージを全国に発信し、自然と結びついた医療・福祉産業を振興する。
沖縄県は、短期入所の利用が少ない一方、入院や施設入所の利用が多く、介護保険料は日本一の高さ※14)になっている。今後は、地域福祉の整備と共に住民ネットワークを活用し、協働共生の精神のもとでの福祉活動を進める。
県と民間事業者が一体となった海外からの訪問者増加に向けたキャンペーンを実施すると共に、地理的に近い台湾に対しては観光ビザの免除をするなどの入国管理の適切な運用によって、東アジアの人的交流の拠点を目指す。その一方で、麻薬をはじめとした不法物の沖縄への流入防止に一層努め、安全で健全な沖縄のイメージをアピールする。
沖縄の既存の原油備蓄能力を活かすと共に、沖縄の地理的・自然特性を活用した、風力、太陽光・熱、潮の干満、海水揚水等に加え、環境立県沖縄のイメージとも整合する燃料電池などのエネルギー関連技術の研究開発拠点を沖縄諸島に設置し、東アジアの新エネルギー研究開発地域として位置付ける。
那覇港や中城港に設置されている現在の自由貿易地域(FTZ)のような限定的・象徴的なものではなく、全県を範囲とする本格的な自由貿易政策を行う。沖縄県の地域振興という位置付けのみではなく、香港、上海、台湾、釜山等の東アジア各地との経済交流拠点とすることを念頭においた構想とする。
名護市全域が対象となっている金融特区※15)については、現在、インフラ整備、人材育成、事業研究などの活動※16)が行われている。金融特区を従来型のハコモノ建設のイベントに終わらせることのないように留意すると共に、金融特区を本格的に活用、発展させていくために、税制面の対応などを検討する。
本土における1銀行4公庫に相当する業務を一元的に取り扱っている沖縄振興開発金融公庫の貸付制度等については、その実情を精査すると共に、政府系金融機関全体の見直しを通じ、地元の企業・自営業者に更に使い勝手の良い機関にするようスクラップ&ビルドに努める。
観光・環境・福祉・教育等の分野は、女性に「比較優位」があると考えられる。これらの分野のNPOや女性起業家の支援のため、マイクロ・クレジット(小規模貸付)の活用など、沖縄独自の起業家支援制度を整備する。
また、自立型経済の形成には、基礎的な就業能力はもとより、法務、財務、マーケティングなどの専門能力などが必要となることから、能力開発面を重視し既存の高等教育機関(高校、大学、専門学校)を強化する。
自立的な経済循環を形成して地域経済を活性化させ、地域通貨(エコマネー)を活用することでコミュニティの再生を促進し、介護・福祉、環境などの問題を地域内で解決する。
沖縄経済の競争力向上、雇用能力の開発などを進めるため、沖縄科学技術大学院大学や琉球大学と産業との連携を図る。また、沖縄には世界的に希少性の高い海洋生物が豊富なことを生かし、産業(水産業)とも連携した海洋研究所の設置を進める。
沖縄県は離婚率が高い傾向にあり、それに伴って母子家庭数も多い。沖縄の産業発展を見越した母子家庭の就業環境整備が必要である。沖縄県で今後発展が期待されるITや金融に関するビジネス、観光・リゾート産業などにおいて、比較的フレキシブルに対応できる就業環境を整える。
例として、インターネットを活用して職場のみならず家庭でも仕事ができる職種(例えば、語学教育やIT技術の取得と連動した翻訳やプログラム開発など)や、ホテルに保育所を併設し、ホテルの最繁忙時間であるチェックインやチェックアウト等の業務を集中的に行える環境づくりを進める等が想定できる。
沖縄独特の伝統的な織物を活用し、沖縄県の正装に指定されている“かりゆしウェア" ※17)を全国に定着させ、将来的には日本の夏の正装の一つとして認知するよう積極的な働きかけを行い、省エネ・地球温暖化対策に貢献する。
本土からの観光客の活動時間を長くできるなど観光産業にメリットをもたらすため、本土との間に時差を設けることを、企業経営の負担等も勘案しつつ検討する。
沖縄独自の自然と風土、歴史と文化を生かして東アジア、更には世界の知性が集まり交流する「学問・研究の沖縄」を目指す。
このため、言語や環境、芸能分野の教育に力を入れ、戦争体験に基づく国際平和の追求等、本土にはない特性を伸ばす。また、こうした沖縄の特性を生かしつつ大学院大学を設置し、自然に囲まれた住みよい研究・教育環境の整備等を図る。
沖縄の地理的、歴史的、社会的特性を踏まえて徹底した英語教育を行うと共に、中国語などの学習も含め、沖縄の「マルチリンガル化」を促進する。
沖縄県下全小学校での、英語などの語学教育の実施を推進する。
沖縄の豊かで広大な自然を生かしてエコ体験をカリキュラムに入れるなど環境教育を徹底し、自然環境に対し負荷の少ない観光を普及し、地域経済への寄与と自然環境保全とを両立させる「エコ・ツーリズム(環境体験型観光)」の普及を進める。具体的には、体験学習として学校給食の残飯を沖縄で盛んな有用微生物群(EMなど)処理で堆肥にすることなどが考えられる。
また、伝統手工芸などのものづくり教育を強化して観光産業を活性化させる、沖縄修学旅行とタイアップした平和教育を更に充実させる、コンピュータ操作の修得、校内LANの整備などによりIT教育を促進するなど、沖縄ならではの教育を進める。
本年9月に設立される沖縄科学技術研究基盤整備機構、そして2年後に開校予定の沖縄科学技術大学院大学については、建設自体を目的とする「ハコモノ行政」とならないよう、地元がその企画・構成に参加できる仕組みを確立する。
また、科学技術だけでなく、環境教育、国際交流、エコ・ツーリズムなどの拠点としての活用を図り、国際的な認知度の高い大学院大学を目指す。また、沖縄の特性を活かし、環境・海洋・観光学の他、安全保障に関連した研究分野が県内の大学等で率先して研究されるよう基盤整備をする。
2004年に沖縄工業高等専門学校が開校したが、沖縄を産業創出、インキュベーションの拠点とするため先端技術の集積を図り、大学、多国籍企業、国立・民間の研究機関が立地する、国内外から研究者が集うサイエンスパーク・学術研究都市の形成に努める。研究やビジネス面のみならず、自然や健康などの優位性を活かし、本人やその子弟にとっても住み良い沖縄をつくり、家族で移住できる環境を整備する。
方言や伝統芸能など独自で貴重な文化を教育の中でしっかりと継承する。これは、観光資源を継承することにもつながる。
アメラジアン※18)だけでなく、無国籍児など多様化している国際児の教育を受ける権利の確立のため、公的助成を含めた教育環境の整備、及び養育費を確保するための米国との協定締結等の措置の実現を図る。
沖縄の豊かで多様な自然環境は、その亜熱帯気候・島嶼性などの地理的特性から、わが国の誇りであるにとどまらず世界的にも貴重な財産であり、沖縄の自立的発展の基礎的な条件である。
このような観点から西表島ややんばる地域に代表される、貴重かつ希有な自然環境の保護を図る必要がある。とりわけ、世界有数のサンゴの死滅は自然喪失の重大な警鐘であり、この対策に重点的に取り組む必要がある。
また、都市地域及び周辺についてもこれまでの開発等で失われた環境を回復し、軍用地跡地等をコアに個性的で魅力ある人間と自然の多様な共生環境を再生する。
沖縄の自然環境を活かした有用微生物群に関する技術などの積極的活用により、赤土の健全化、流出防止など環境保全を目指す。また、同時に新たなライフスタイルの創造によるリサイクル型社会の構築を目指す。
沖縄のサンゴ礁は最も多くの希少生物種が確認されていることなどで、世界一のサンゴ礁と評価されている。しかし、そのサンゴ礁が、沖縄の気象、土壌条件を無視した公共事業や農業による赤土流出、更にオニヒトデの増加などにより、壊滅の危機に瀕している。将来の世代のためにも、世界的にも貴重な沖縄のサンゴ礁保全を21世紀初頭における最重要課題の一つと位置付け、これに全力で取り組む。
また、
特に、北半球最大・最古のアオサンゴ群落のある石垣白保のサンゴ礁は貴重であり、西表国立公園への編入、世界遺産登録を目指す。
新石垣空港の計画については、この貴重なサンゴ礁生態系だけでなく、小型コウモリ類等の保全との両立を図る。
川田干潟埋立てによる特別自由貿易地域(新港地区)の分譲用地は、1999年から公募が行われているが、未だ全93区画のうちわずか3区画しか入居しておらず、計画は頓挫している。また、泡瀬干潟の埋立て計画は中城湾港の
やんばる地区の国立公園指定を推進し、観光客の立ち入り許可区域と禁止区域の線引きを明確にし、沖縄の自然保護のため総量規制、入域規制等を検討をする。広域基幹林道などの開発に際しては、動物園や水族館とも協力し、専門家が環境ファクターを監視しながらジュゴン、ノグチゲラなど沖縄に特有な動植物の保護に万全を期す。
本土と同じ基準での公共事業が貴重な自然環境を破壊してきた。2002年から全国で「自然再生型公共事業」が実施されているが、全国のモデルケースとして沖縄では独自の基準による「自然環境再生型公共事業」を積極的に推進する。また、電柱の地中化など、台風の通り道に当たる沖縄の気象条件に対応した公共事業を推進する。
基地返還跡地の土壌汚染は深刻である。土壌汚染問題は全国的な問題でもあり、土壌汚染対策のモデル地域としての先進的な対策を講じる。
風力、太陽光、バイオマス※19)、小規模水力発電等の自然エネルギーや、燃料電池などを含めた新エネルギーを積極的に導入することによって、沖縄からエネルギー自給自足に向けた革命を起こす。将来的には燃料電池車の普及により、排気ガスのない「エコ・アイランド沖縄」を目指す。
100万県民の暮らす人口
以上