2009-05-11 白い靴下への欲情

僕は今までに二回、自殺をくわだてたことがある。
人に知られれば強く非難されるのをまぬがれない、異常性欲を持っているからだ。
一度目はうら寂しい墓地に行き、二度目は田んぼに行き、酔い止め薬を多量に飲んで死のうとした。意識を失ったものの、通りがかりの人に救急車を呼ばれてしまい、二度とも失敗してしまった。
僕が生きていても本当にろくなことにならないと、自分でも思う。大学のとき、男友達を部屋に招いたことがあった。やって来た彼が、白い靴下を履いているのを見て、すぐさま性器が勃起するのを悟り、これは大変なことが起きるという動物的な予感が頭をかすめた。案の定、自室の扉を後ろ手に閉めると、衝動に突き動かされるまま彼に飛びかかった。背後から両手に力をこめて、首を強く絞めた。彼は、僕が遊んでいると思ったのか抵抗しなかったが、すぐに苦しくなったらしく、両手で僕の手を払いのけようともがき始めた。彼はひ弱な男でもないし、僕の首絞めもそう長くはもたないと知りつつ、彼の首から手が離れる最後の瞬間まで、顔を真っ赤にさせて苦しむ彼の表情をじっくり眺めて快楽に浸った。
僕はこの件で、大学を退学させられた。
一度スイッチが入ると、とても暴走を抑えられるものではない。
自殺サイトには、死にたがっている人間がこうもいるのかと、当初は驚いたものだ。僕もはじめは死ぬつもりで自殺サイトにアクセスしていた。
25歳になるその女の子も、死を求めてアクセスしていた一人である。
山奥まで車で行き、練炭を焚いて一緒に死のうという段取りだった。ひとつだけ僕の示したプランに従わなかったのは、あれだけ白い靴下を履いてくるようにと念を押してきたのに、約束を破ったことだった。カッとして怒りそうになるのをこらえ、自分で用意した白い靴下を、山奥の駐車場に着いたところで彼女に震える手で履かせた。
練炭で死ぬといっても、煙が充満すると苦しくなって思わず車のドアを開けようとし、せっかくの自殺が失敗に終わることがよくある。自殺初心者が犯しがちなミスであることを僕は知っていた。だから、手首と足を結束バンドで縛る必要があるのだと説明すると、彼女はおとなしくうなづいて同意した。僕は、後部座席に横たわった彼女の手足を縛り、自分のひざの上に彼女の頭を乗せた。
僕は練炭に火をつける代わりに、ICレコーダーの録音ボタンをONにした。
シンナーを染み込ませたガーゼを彼女の鼻と口に押し当て続けては、すぐには窒息死しない頃合いを見計らってガーゼを離すのをくり返した。できるだけ長い時間、彼女が喘ぎ、泣き叫び、呼吸が思うようにできずに苦悶の表情を浮かべるのを楽しむのだ。
1分12秒 「やめて、やめて、やめて、やめて。なんでこんなことするの!なんでこんなことするんよ!やめて、やめて、やめて、こんなことやめて!もう、やめてって!約束が違うじゃない!」
1分30秒 「お願い、だからやめて、やめて、やめて!お願いやから、やめて!聞いて!だから、信じて!」
2分21秒 「人殺し!」
2分25秒 「人殺し!やめて!人殺しはやめて!」
3分16秒 「すー、ひー、ひゅるるるるるるるるる」
3分50秒 「お願い!ちょっとだけ話聞いて!お願い!」
4分06秒 「なんでこんなことすんの!」
4分56秒 「お願いします!このままの格好でいいから!なんですか!なんですか!なんでこんなことするんですか!」
6分48秒 「ウー、ウー、わかったから!ちょっと待って!」
8分06秒 「アー、ウー、ウーン・・・・・・」
8分15秒 「もっとしっかり声を出さんかい」 (ブラを剥ぎ取り、両方の乳首をつねる)
8分20秒 「殺さないで・・・・・・」
11分34秒 「ウォーッ、ウォーッ、ウォーッ」
12分19秒 「南無妙法蓮・・・・・・南無妙法蓮」
13分46秒 「南無妙法蓮・・・・・・ウーウー」
16分49秒 「ブリブリブー」 (脱糞に伴う放屁)
17分24秒 「ハァ、ハァ、ハァ」
22分03秒 「アッ!」
22分27秒 「ハァハァハァハァハァハァ」
23分01秒 「ウッ・・・・・・・・・・・・ザーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
------
新潮45 編集部 『悪魔が殺せとささやいた―渦巻く憎悪、非業の14事件』を読んで、「自殺サイトの死神」 堺「三人連続」殺人の感想を書こうとしたのだが、読んでいるうちに犯人である前上博の歪んだ欲望が憑依してしまった。実際には、ICレコーダの声は中学3年生の男子(14歳)だし、もっとしっかり声を出すようにと乳首をつまんだ相手は男子大学生(21歳)だが、話が長くなるのですべての出来事を最初の被害女性に押し込みさらに微妙に改変した。(私の都合で。)
「新潮45」に掲載されたときにも読んでいたが、これは本当に衝撃を受けた事件だ。白い靴下を履いている人がいると、抑えきれなくなって襲いかかるんだもんな。白い靴下を履いていた、金沢工業大学時代の友人に欲情して首を絞めるわ(1988年4月)、やはり白い靴下着用の郵便局の同僚男性をスタンガンで襲うわ(1995年2月)、その後も堺市内の路上で通行人の女性二人を窒息させようとする(それぞれ2001年3月、6月)。
白い靴下が欲望を爆発させる引き金になるのは、中学1年生のときに、教育実習に来た女子大学生に由来するという。江戸川乱歩の推理小説に窒息する場面があり、そうしたものを読むうち小学生のころから人が窒息して苦しむ姿を想像しては性的興奮を覚えてオナニーしていたのだが、この白い靴下を着用した女子大学生を窒息させる妄想でオナニーをくりかえすうちに、「白い靴下=暴走のスイッチ」が完成されたという。
自殺サイトで、獲物を物色してはおびき出し、犯行中にデジタルカメラで被害者の苦悶する様子を撮影する。殺したあとには、この画像のみならず、ICレコーダーで再生される被害者の声を再生しながらオナニーに耽る。さらに遺棄現場に出かけては、なんと死体の写真を撮影して、それを見ては射精する。
驚きの連続だったが、裁判の傍聴記 (2006年2月7日) を読んでまた腰を抜かしてしまった。
−左陪席裁判官による被告人質問−
左陪席「現在も人を窒息させて興奮する性癖は変わっていないのですか」
被告人「変わってないです」
左陪席「法廷のスクリーンで映し出された画像を見て興奮するのですか」
被告人「はい、興奮しました」
−右陪席裁判官による被告人質問−
右陪席「先ほど審理の過程で、スクリーンに写真などが映し出されるのに興奮したと言っていましたが、私もあなたの表情を上から見ているのですが、淡々としている感じがしました」
被告人「真面目に裁判を受けようと思ったのですが、写真とか見せられて犯行のことが思い出されて興奮しました。そのことで帰りのバスのなかでは落ち込んでいる自分がいました」
−下村弁護人による再度の被告人質問−
弁護人「先ほどの話だけど、法廷で興奮したあとで自慰行為をするなどという性癖は変わっていないのですか」
被告人「変わりません」
弁護人「取り調べの犯行再現が被害者を人形に見立てて、3件ともやっているけど、そのときはどうだったのですか」
(,, ゚×゚)
新潮45 編集部 関連書籍
- 『殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件』 2002年3月1日 発売
- 「少年法」の闇に消えたうたかたの家族 西宮「森安九段」刺殺事件
- 切断された「二十七の肉塊」は何を語る 井の頭公園「バラバラ」殺人事件
- 覆せない「物語」、最重要容疑者は何故釈放された 京都「主婦首なし」殺人事件
- 「行きずりかストーカーか」、見過ごされた殺意 柴又「上智大生」殺人放火事件
- 「無期懲役」で出所した男の憎悪の矛先 熊本「お礼参り」連続殺人事件
- 切り裂かれた腹部に詰め込んだ「受話器と人形」 名古屋「臨月妊婦」殺人事件
- 封印された「花形行員」の超弩級スキャンダル 埼玉「富士銀行行員」顧客殺人事件
- 警察を煙に巻いたホストと女子大生の「ままごと」 札幌「両親」強盗殺人事件
- 「自殺実況テープ」の出してはいけない中身 葛飾「社長一家」無理心中事件
- 崩壊した夫婦の黒き情欲の陰で「微笑む看護婦」 つくば「エリート医師」母子殺人事件
- 「完黙の女」は紅蓮の炎を見つめた 札幌「社長令息」誘拐殺害事件
- 現場で「異常性交」をした二十歳の自爆と再生 世田谷「青学大生」殺人事件
- 「売春婦」ばかりを狙った飽くなき性欲の次の獲物 広島「タクシー運転手」連続四人殺人事件
- 『殺ったのはおまえだ―修羅となりし者たち、宿命の9事件』 2002年11月1日 発売
- 皆殺しを謀った男の父が語る「わが闘争」 大阪「池田小」児童殺傷事件
- 息子を嬲り殺した「鬼女」のおぞましき血 尼崎「実子虐待」致死事件
- 家族の連帯は「玩具」を手にして生まれた 伊勢崎「主婦暴行」餓死事件
- 炭化した「下半身」が炙り出す黒い影 恵庭「社内恋愛」絞殺事件
- 看護婦を手玉に取った「優男」の捩れた愛情 埼玉「略奪愛」殺人事件
- 「心優しき少年」はなぜ兄の胸に刃を立てた 名古屋「十七歳双子」刺殺事件
- 繁華街を暴走した新聞配達員の「暑苦しい夏」 池袋「通り魔」連続殺傷事件
- 憎しみに塗れた「無期囚」が首を吊るまで 奈良「月ヶ瀬村」拉致撲殺事件
- 高速道で轢死した少女が夢見た「家族の情景」 神戸「女子中学生」手錠放置事件
- 『その時、殺しの手が動く―引き寄せた災、必然の9事件』 2003年6月1日 発売
- 焔の中で夫と暮らした女の「その十年」 日野「不倫放火」殺人事件
- 「普通の二十四歳」カップルは心中したのか 塩尻「人気AV女優」怪死事件
- 無抵抗の女に火を放った「三十男」の興味 三島「女子大生」焼殺事件
- 当局をも巻き込んだ「隣人」の不気味な息遣い 宇都宮「散弾銃」主婦射殺事件
- 田園広がる風景を疾走した「青き性」 大分「十五歳少年」一家殺傷事件
- 「くそババァ」と罵られ馬乗りになった老婆の涙 札幌「歯科医」嫁惨殺事件
- 「赤いバスケットの女」、化粧の下の貌 稚内「冷凍庫」夫絞殺事件
- 母を想うピンサロ嬢は「虐待日記」を綴った さいたま「実娘拷問」殺害事件
- 姉を電動ノコギリで刻んだ妹が「選んだ女」 青梅「姉妹」バラバラ殺人事件
- 『殺戮者は二度わらう―放たれし業、跳梁跋扈の9事件』 2004年6月1日 発売
- 洗礼名「カタリナ」を持つ聖女、夢見た愛の報奨 神戸「風俗王」惨殺事件
- 墓場で嬲り殺された「十六歳少女」が甘受した青春 千葉「キャバクラ嬢」撲殺事件
- 二つの家族の団欒は「妊婦殺し」と自死で終わった 横浜「恋人一家」惨殺事件
- 詐欺師の手に絡め取られた「血族六人」殺意の鎖 北九州「監禁男女」連続殺人事件
- 「二人の御曹司」が情熱を傾けたそれぞれの未来 新城「資産家三代目」誘拐殺人事件
- 「立ち去り警官」は渦巻く怨嗟を目撃していた 神戸「大学院生」リンチ殺人事件
- モテたい女の声音が騙る「陳腐な恋の物語」 和歌山「メル友」絞殺事件
- 「十八歳年下」女に嵌った男が見た奈落 板橋「精神科医」患者絞殺事件
- 反省し「シャバ」に戻った少年少女のそれから 名古屋「アベック」殺人事件
- 『悪魔が殺せとささやいた―渦巻く憎悪、非業の14事件』 2008年11月1日 発売
- 夫の心変わりに牙を剥いた般若の姉さん女房 木更津「年下夫」刺殺事件
- エリート焼肉部長が殺めた二人の愛人 愛知「連続女性バラバラ」事件
- DV女と結婚した男に残された究極の選択 町田「新婚妻」絞殺事件
- 鬼が爪を研ぐ血染めの家 中津川「一家五人」絞殺・刺殺事件
- 土浦「両親・姉」撲殺事件
- 息子の嫁に欲情した刑務官の「男の自信」 大阪「母子」放火殺人事件
- 法廷の女優「セレブ妻カオリン」の終わらない演技 渋谷「夫バラバラ」殺人
- 独居老人キラー「女民生委員」の殺人奉仕 名古屋「絞殺」事件
- 虚飾に塗れた美人ママのカマキリ人生 福岡「連続夫殺し」
- 「お嬢さん」を狙った“赤い自転車の女”の性と生 名古屋「通り魔」連続殺傷事件
- 「砂人形を刺しただけ」中国人インテリ妻の憎悪の渦 滋賀「幼稚園二児」刺殺事件
- 断末魔の声に昂奮した「自殺サイトの死神」 堺「三人連続」殺人
- 「やっちゃえ!」十六歳少女が開けた地獄の釜の蓋 熊谷「男女四人」拉致殺傷事件
- ウリセンボーイを切り裂いたサド女と童貞男 大阪「三角関係」猟奇殺人
関連サイト
- だって2人とも好きなんだもん - 読書の秋ですね! (2008-11-26)
- 悪魔が殺せとささやいた - Naruhito Blog... Just what is it? (2009-02-28)