【名護】名護市が米軍普天間飛行場の移設先キャンプ・シュワブと辺野古、豊原、久志３区の汚水などをまとめて処理する下水道整備計画の策定方針を固めたことが１日、分かった。シュワブ内の汚水処理施設は廃止され、豊原区の区有地に新施設を建設する。処理能力は移設後のシュワブの兵士や家族約６０００人を含む９０００人規模となる見通し。８月に開催予定の市議会臨時会に再編交付金で調査費を計上、本年度中の策定を目指す。「生活環境が向上する」と地元３区は歓迎する一方、代替施設建設と一体化した計画は基地の固定化・強化につながる危険性をはらんでいる。（知念清張）

　総事業費は７０億円から１００億円程度。財源に防衛省の再編交付金や、国土交通省の補助金を充てる見込みで、施設整備計画策定と平行して検討する。

　島袋吉和市長は、「下水道整備は地元の強い要望。市財政の負担が少ない形で実施したい。２０１４年の普天間代替施設建設工事の完了前に、完成させる必要がある」としている。

　現在の米軍の汚水処理施設は、代替施設の滑走路付近となることから、建て替える必要があるという。

　下水道整備は、悪臭や海域への汚水流入など生活環境上の問題から長年、地元が要望していた。新たな処理施設は辺野古区に隣接する豊原区の区有地（８０００坪）内に建設され、公園の併設も検討する。

　米軍再編が実現すれば、同基地の兵士家族を含めた人口は６０００人に上り、現在の倍となる。基地内の下水道管は沖縄防衛局が敷設するが、基地からの汚水は名護市水道部が処理する。久辺３区の人口は計３千人余り。

　名護市は下水道管敷設や処理施設の規模や費用、採算性などを検討する。

　ただ、市内には普天間飛行場移設そのものに反発があるほか、米軍施設のインフラ整備の一翼を市が主体となって担うことに異論もあり、市議会臨時会などで議論が交わされそうだ。

　沖縄大学の仲地博教授は「新基地建設は圧倒的多数の県民が反対しており、実現は不透明だ。基地機能の強化・固定化にもつながる。米軍再編の是非が問われ、沖縄の進路が分かれ道にあると指摘される時期、移設ありきで結論を急ぐのは疑問だ」と指摘している。