「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)が政権実績検証大会を開いた。前回2005年衆院選で自民、公明の連立与党が掲げたマニフェスト(政権公約)の達成状況を評価するためだ。経済、労働団体や民間シンクタンク計9団体がそれぞれの採点結果を公表したが、辛口の評価が目立った。
評価は「政策」と「政権運営」について100点満点で行った。政策の総合評価は最高58点、最低30点、平均は46点だった。最低点を付けた連合は「貧困層が拡大する中、格差是正に向けた実質的取り組みはなされなかった」と手厳しい。50点を付けた経済同友会は、郵政民営化や教育改革などで「一定の成果を上げた」としたものの、与党が07年の参院選で大敗してからは「最重要課題である歳出・歳入一体改革や社会保障制度の抜本改革がすべて先送りされた」と批判した。
全国知事会は地方分権改革に限定して評価した。09年度の地方交付税増額を「高く評価」したが、「官僚の抵抗は続き、改革の実現を危惧(きぐ)」などとして56点にとどめた。
「政権運営」の総合評価は、最高58点、最低20点、平均40点と低かった。評価団体の非難が集中したのは、小泉内閣退陣後、政権投げ出しが続いたにもかかわらず、衆院選を行わずに首相交代が繰り返されたことだ。しかも、前回衆院選で、自民党は郵政民営化を最大の争点としたが、麻生太郎首相が「民営化は賛成ではなかった」と発言するなど、政権のたらい回しによって05年公約の継続性があいまいにされた。政策転換の説明不足も重なったことで、評価団体が低い点数を付けたのは当然といえよう。
マニフェストは、選挙に際し、各政党が基本政策について具体的な数値目標や実行期限、財源などを明示する。総花的でない公約を示すことで、政権を担当してから実際に公約を実現することができたかどうかの検証が可能になる。だが、小泉政権以降の内閣は公約をなし崩し的に変えてきた。これでは、公約達成状況を判断することさえ難しい。有権者への裏切りと言われても仕方なかろう。
大切なのは、マニフェストは成果がきちんと検証できなければならないことだ。あいまいさが多かったり政権途中で政策を大きく変更したりするようではマニフェストに対する信頼が失われよう。各政党は、マニフェスト選挙定着に向け、さらに内容を高めてもらいたい。
原爆症認定申請を却下された熊本県の被爆者13人(遺族含む)が国に処分取り消しなどを求めた熊本訴訟第2陣の判決で、熊本地裁は新基準で既に認定されている3人を除く未認定の10人全員を原爆症と認定した。
一連の集団訴訟で国は19連敗となった。原告側が求めている早期救済を大きく後押しする司法判断であり、国は重く受け止めねばなるまい。
原爆症認定をめぐっては、昨年4月に一定の被爆要件を満たせば、がんなど5疾病を積極認定する新基準が導入され、今年6月には慢性肝炎・肝硬変と甲状腺機能低下症も積極認定の対象に加えられた。認定者は飛躍的に増えているが、それでも依然として訴訟が終結しないのは、厳しい「放射線起因性」の条件が課せられているためだ。
今回の判決では、10人の認定理由について「残留放射線量が過小評価されている可能性があり、病状などを総合考慮すれば、旧基準の算定より被ばく放射線量は、はるかに多い」と判断。肺気腫などの疾病も初めて原爆症と認定し、起因性の条件撤廃を強く促した。
河村建夫官房長官は6月、広島、長崎の原爆の日(6、9日)までに国としての救済策を示す意向を表明。政府内で調整を進めてきたが、解決への道筋はまだ定まっていない。
集団訴訟の全国原告・弁護団は昨日、原告約300人全員の一括救済案を舛添要一厚生労働相らに提出した。5日夕までの回答を求めており、同意が得られなければ交渉打ち切りも辞さない構えをみせている。
原爆投下から64年。被爆者の高齢化は進む一方だ。これ以上の猶予は許されまい。麻生太郎首相は今こそリーダーシップを発揮し、全面解決に向けた政治決断を下すべきだ。
(2009年8月5日掲載)