2009年8月3日14時46分
脳の幅がわかれば脳の大きさもわかる――。愛媛大の大学院生が、そんな「法則」を発見した。鳥類で当てはまる数式を見いだしたが、哺乳(ほにゅう)類など他の動物も同様の法則になりそうだという。脳の大きさは、進化を知る上で重要な指標の一つで、化石しか残っていない絶滅種などの研究に役立つと期待されている。
法則を発見したのは、修士課程2年の河部壮一郎さん(23)。飛ぶ鳥と飛ばない動物で脳に違いがあるかを調べるため、鳥類25種とワニ、シカの死骸(しがい)の頭部をコンピューター断層撮影し、大脳の最大幅と脳の容量に関連性があることに気づいた。鳥類の脳容量(立方センチメートル)は「0.328×脳の最大幅(センチメートル)の2.879乗」という数式になった。他の動物でも数字は変わるが、式の構造は同じになりそうという。
東大総合研究博物館の遠藤秀紀教授(比較形態学)は「化石はバラバラで見つかると、奥行きや高さは測れない場合が多いが、脳の幅は調べやすい。役立つ発見だ」と評価。そのうえで「誰も見向きもしなかった鳥の死体も河部さんにとっては『宝もの』。数多くの死体を計測した地道な努力の成果だ」と話す。
国立科学博物館の真鍋真研究主幹は、この法則で恐竜から鳥類への進化について明らかにできる可能性があると指摘する。「始祖鳥はこの法則に当てはまらず、脳の形が恐竜的と推測できる。そこから今の鳥類の脳になったのをたどる手がかりになるかもしれない」と話す。(松尾一郎)