2009年8月5日 22時9分更新
来年度から公立中学校で使われる歴史教科書について横浜市の教育委員会は、この春、国の検定に合格する一方、韓国政府などからは「過去の過ちを正当化している」と批判を受けた教科書を一部の中学校で使うことを決めました。
横浜市教育委員会は4日に開にいた会合で来年の春から2年間、市内の公立の中学校で使う教科書を決めました。
このうち歴史教科書では、市内の18の区のうち、青葉区、旭区、金沢区、港北区、港南区、瀬谷区、緑区、都筑区の8つの区で東京の出版社「自由社」の教科書を採択しました。
この教科書は「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが中心となって執筆し、これまで「扶桑社」から発行していましたが、編集方針の違いなどを理由に、ほぼ同じ内容の教科書を新たに「自由社」から発行することになりました。国の検定では、太平洋戦争当時のアジア諸国と日本の関係に関する記述などに意見がついて、いったん不合格になったあと、大幅に修正して合格し、韓国政府などが「過去の過ちを正当化している」などと批判していました。
採択のあと横浜市教育委員会は記者会見を開き、今田忠彦教育委員長は「例えば日露戦争の部分は小国日本が大国ロシアに勝利したことで日本人としての誇りを持てたことなどを愛情をもって表現している。
歴史の流れが理解しやすく、わかりやすいところが委員の共感を得られたのだと思う」と採択について説明しました。
これに対して、この教科書の採択に反対する市民や教職員などが傍聴にかけつけ、委員会が終わった後、およそ100人が参加して抗議集会を開きました。
集会に参加した歴史教科書問題に詳しい琉球大学名誉教授の高嶋伸欣さんは「戦艦大和で始まって昭和天皇の言葉で終わるような教科書には疑問を感じるし、アジアの人から非常に警戒心を持たれる。横浜市は生徒数が多く、このような教科書を選んだ影響は大きい」と話しました。
一方、この教科書の執筆者で「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝会長は「公平に評価して下されば必ず採択されると信じていましたが横浜市でその結果が出されたことはたいへんうれしい」とコメントしています。
「扶桑社」の歴史教科書は、東京・杉並区や栃木県の大田原市などで使われていますが、横浜市教育委員会などによりますと、「自由社」の歴史教科書が教育委員会で採択されたのは横浜市が初めてです。