プリント表示ブログに書く by kwoutブログに書くソーシャルブックマーク
次の記事へ 前の記事へ

news016.jpg

コラム

小寺信良の現象試考:「ネット」を政治の争点にしよう (1/2)

間もなく総選挙が実施される。何を重視して投票するかはそれぞれだが、情報通信政策という視点だってあっていい。若い人ほど関係の深い「ネット」についての意向を、国政へ伝えるまたとないチャンスだ。

 7月21日に衆議院が解散となり、真夏の総選挙が決定した。今回は民主党による政権交代の可能性を巡って、壮絶な選挙戦が予想される。筆者の経験で過去一番壮絶だったのが、1993年に連立政権で細川内閣が発足したときの選挙である。それ以前も自民党に逆風がふいた選挙は数々あるが、この時ばかりはいよいよ、という雰囲気があった。

 今回の選挙は、7月13日の都議選で民主党が初の第1党となったこともあり、久しぶりに政権交代の機運が高まっている。いったい誰に投票すればいいのか。もちろん、各個人が重視しているポイントは、税金の無駄遣い、景気回復、医療、福祉など、それぞれあるだろう。その中で、情報通信政策という視点も、あっていいはずだ。

 先日ICPF(情報通信政策フォーラム)NPO マニフェスト評価機構が共催した「自民党と民主党に情報通信政策を聞く」というセミナーで、自由民主党は世耕弘成参議院議員、民主党は内藤正光参議院議員に、各党の情報通信政策の方向性を伺う機会があった。今回はここでのお話を絡めながら、ネットと政治について考えてみたい。

 先日、自民党のマニフェストのドラフトが発表された。さらに資料としては「経済財政改革の基本方針2009について」(→リンク先PDF)と、今年6月にIT戦略本部が発表した「i-Japan 戦略2015」がある。民主党はすでにマニフェストのドラフトは発表したが、これには情報通信政策に関しては記載されていない。その代わり「民主党政策INDEX」が発表されているので、こちらが参考になるだろう。

IT推進に異論はないが……

 近年、政策がらみでネットの問題は実に多い。例えばテレビ放送の二次利用、医薬品のネット販売、児童ポルノ単純所持規制、出会い系サイト規制法による一般SNS取り締まりなど、ネットの利活用と言いつつも、実際には規制することしか決まっていないのが実情である。

 世耕議員も内藤議員も、情報通信政策に関しては推進派で、自民、民主のスタンスにはそれほど大きな違いはないだろうとする。例としてテレビ番組の二次利用に関しては、いわゆる過去に「ネット法」と呼ばれた類の方法論、すなわち何らかの第三者機関を設けて利用を推進していくことは、すでに超党派で取り組んでいくということになっているので、おそらくこの方向で進むだろう。

 その上で世耕議員(自民)は、最近の情報通信政策は、安全安心を理由に後ろ向きになってきていると懸念する。例えばネットの医薬品販売にしても、現状どおり維持するべきという考えだ。また医療制度改革として、レセプト(診療報酬明細書)請求のオンライン化が先送りされた点も指摘した。この点に関しては、今後も戦っていくという。

 医療分野のIT化は、両党とも積極的に推進する構えだ。自民党は、支持基盤である農村地域へのIT遠隔医療を以前から訴えているし、民主党は電子カルテと検査システムの連携で、病院の受け入れ患者数の増加を検証データとして上げている。

 内藤議員(民主)は、自民党政権におけるIT戦略本部のあり方に問題があるとする。IT担当大臣が他の大臣を兼務するのではなく、先端的に担う大臣が必要として、行政改革と一緒に推進すべきとした。

 さらに行政改革としては、誰もが情報発信できる時代においては、放送と通信は権力からの独立性が大事だとする。国を監視するメディアそのものを、国が管轄しているのは矛盾であるとし、総務省から放送通信行政を切り離して、第三者機関を作るとしている。すなわち「日本版FCC」(FCC:連邦通信委員会)を作るというプランが、民主党政策INDEXに記載されている。

 これに対し世耕議員は、米国のFCCは行政府の意向が強く反映されており、理想だとは思っていないと反論する。それよりも情報通信と産業を担う、情報産業省を作るべきとしている。現時点では、総務省と経産省で通信行政が割れており、これが政策を進める上でのネックになっているということのようだ。

 過去にダウンロード違法化や医薬品ネット販売など、規制に反対するパブリックコメントが大半を占めたにもかかわらず規制が強行された点について、IT時代へ向けてなにか新しい民意を組み上げる仕組みが必要ではないかと、質問してみた。これに対して世耕議員は、寄せられたパブリックコメントなどはオープンに公表し、透明な中でやっていくことに尽きると述べた。

 ご存じの方もあるかもしれないが、現在情報公開請求は、ITベースで行なうことができるようになっている。しかし公開される情報は、請求者本人に「紙」で渡される。そもそもこういうところから改善していかなければ、情報のオープン化は難しい。

 一方で内藤議員は、審議会のあり方そのものに問題があるとする。役人が下案を作って、1人はうるさい委員を入れて残りは役人に従う委員を選ぶというあり方を、根本的に作り直していかなければならないと述べた。

 ただ、あまりいっぺんになんでもぶち壊してしまうと政府が機能しなくなってしまうので、もっと具体性のある実現可能な計画が欲しいところだ。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2009 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


おすすめPC情報テキスト

モバイルショップ

日本初!NVIDIA ION搭載ノートPC
HD動画再生に対応!高い描画力を実現するクラスを超えた高性能!

最新の高性能PCが最短翌日届く!
ドスパラは土日もスピード出荷!複数台のご注文もご相談下さい!

キャリアアップ

ピックアップ

news021.jpg 「1万チョイまで」で幸せになるカナル型イヤフォン16選
ポータブルオーディオの最も簡単かつ効果的なチューニングはイヤフォンの変更。最近ではバリエーションも充実しており、ちょっと財布のひもを緩めればシアワセになれる。今回は人気のカナル型を集めてみた。

news022.jpg 価格比較:夏の水辺はコレで撮る――今夏の防水デジカメ徹底チェック(後編)
今年は防水デジカメの当たり年。今シーズンに登場した防水デジカメの仕様と価格を比較する。

news065.jpg 価格比較:高級コンパクトデジカメ、価格を比較
最近ではハイビジョン動画や個人認識、さらには超高速連写など、デジタルであることを前面に押し出した製品も増えているが、“撮ることの楽しさ”を前面に押し出した高級コンパクトデジカメもいちジャンルを築いている。各社製品の価格を比較した。

news097.jpg 価格比較:充実のエントリーデジタル一眼、価格を比較
最新のエントリー向けデジタル一眼は撮像素子も10メガを越えたほか、ライブビューやHD動画機能なども備えており、その充実ぶりは目を見張る。お買い得感の高いダブルズームキットで価格を比較した。

news102.jpg 価格比較:ハイアマ向けミドルクラス一眼、価格を比較
撮像素子はAPS-Cサイズながら、各種装備やスペックを充実させた中級デジタル一眼レフの価格を比較した。エントリー向けに比べやや高価にはなるが、いわゆる写真愛好家を対象とした製品だけに、充実した製品がそろっている。

news063.jpg 価格比較:あこがれを手に入れる、フルサイズ一眼の価格を比較
これまでフルサイズ機といえば、プロ向けの高価な製品しか存在していなかったが、今では少し背伸びをすれば狙える。とはいえまだまだ高価。最新価格のチェックは欠かさずにいたい。

news038.jpg 価格比較:エコポイント活用、ハイエンド機も充実の50V型以上テレビ価格一覧
50V型以上ともなると、各社のハイエンドモデルと録画機能付きテレビのオンパレード。プラズマテレビも選択肢が増え、画質・機能ともに充実した製品が並ぶ。

news098.jpg 価格比較:エコポイント活用、満足度の高い46V/47V型テレビ価格一覧
“価格比較”3回目は、46V型と47V型に注目。液晶テレビではプレミアムモデルの比率が高まり、プラズマテレビも選択肢が増えてくる。画質や機能は欲ばりたいが、出費はなるべく抑えたい――そんな人にぴったりのサイズだ。

news111.jpg 価格比較:エコポイント活用、売れ筋40V/42V型テレビ価格一覧
売れ筋の40V型、42V型の薄型テレビからエコポイント対象製品を取り上げ、実売価格を比較する。エコポイントは2万3000点。

news073.jpg 価格比較:エコポイント活用、最新37V型テレビの価格一覧
前回の40V型/42V型に続き、今回は1まわり小さい37V型を取り上げる。最新注目機種の中から、エコポイント対象製品をピックアップ。

news104.jpg 価格比較:エコポイント活用、録画対応モデルも充実の32V型テレビ価格一覧
リビングルームのメインテレビとして、また書斎や寝室におくパーソナルテレビとしても注目される32V型液晶テレビ。ここ1年ほどで倍速駆動や録画機能を備えた製品が増えているのも特徴だ。今回は各社のエコポイント対応製品16機種をリストアップ。

news092.jpg 価格比較:エコポイント活用、個室にちょうどいい26V型以下の液晶テレビを比較
パーソナルサイズと位置づけられる26V型以下だが、最近は上位モデルの機能を一部取り込む形で個性的な製品が増えている。個室やベッドルームなど、シチュエーションに合わせて検討したい。