2009年 07月 22日
北海道大雪山系 トムラウシ山 大量遭難を考える。 追補3

考察⑤ 同時性多発性の問題~認識不足が偶然重なったのか?それとも、想定外の悪天候だったのか?

今回、北海道 大雪山系の山々で起こった山岳救急事故の特徴は、同時多発性にある。7月16日夕方~17日にかけて、美瑛岳で一グループ(一人死亡)、トムラウシ山で一グループ(8名死亡 死因は凍死)、および、単独行の男性が一人死亡(死因は凍死)しているのである。

大雪山系の山々の気候の特殊性と低体温症への認識不足が偶然に重なったのか、それとも当日は想定外の悪天候だったのか?

大雪山系は緯度が高いため2000m級の山でも気候条件は本州の3000mクラスに匹敵するという場所的な特殊性、および、夏山でも低体温症による凍死は起こりうるという生理学的な事実に関する認識不足が偶然に重なったのであろうか?それとも、 当日は、想定外の悪天候であったのであろうか?

いわゆる「気象遭難」は同時多発性の遭難を引き起こしやすい!?
気象の読み間違えというものは、誰でも起すものであり、山に人が多く入る夏山の時期では、それだけ気象を読み間違えて遭難を引き起こす登山者が発生する確率が高まる。
判断が難しい気象状況であればあるほどに、読み間違える登山者が増え、結果として、あちこちで遭難騒ぎが発生することになる。

16日夜間 気温マイナス5度
道警によると、16日夜の美瑛山頂(2052m)付近は霧で氷点下5度だった。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/177689.html

槍ヶ岳の天気 日本気象協会
穂高岳の天気 日本気象協会
北岳の天気 日本気象協会
富士山の天気 日本気象協会

※16日夜間の最低気温がマイナス5度であったというのは。日本アルプスの9月上旬頃の最低気温で、これは夏の富士山の山頂の最低気温よりも更に低いのである。

マイナス5度となると、いわゆる「秋の山に出かける格好」で行かねばならない。冬期登山までやっている登山者なら皮下脂肪の蓄えがあったり、身体のほうも寒さ慣れしているので十分耐えられるだろうが、お気楽ハイキングで、山は、早春~紅葉の山までという登山者には正直言って荷が重過ぎる気温である。
マイナス5度というのは、本州では、秋山である。本州の秋山であれば、低体温症による凍死は十分起こりうる。

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大雪山系トムラウシ山の遭難事故で、救助に向かう自衛隊員ら=17日午前、北海道新得町
http://sankei.jp.msn.com/photos/affairs/disaster/090717/dst0907171152011-p1.htm
この写真の自衛隊員の服装に注目、この格好は、どう見ても本州の夏山に行く格好ではない。秋山、それも晩秋の山にでも行くような、防寒対策がしっかりなされたいでたちである。

要するに、夏の大雪山系の山々は、本州の秋の日本アルプス並みの気候であるということ。・・この点についての認識不足が、ツアー企画者と、ツアー参加者にあったものと考えられる。認識不足が重なったのではない、認識不足が共有されていたのである。
さらにこの認識不足は、裏返せば現場の登山者にとっては予期せぬ「想定外の悪天候」となる。

そして、この認識不足が共有されている状況下で、夏のかきいれどき、いわゆる本州からの登山者が多数来訪する時期の、判断予測が難しい天候となった日には、天候予測に失敗するケースが頻発し、ひいては同時多発の山岳救急事故を引き起こすことになるのである。

結論  同時多発性の解明

1 夏の大雪山系の山々の山岳気象への認識不足が共有されていたこと。
2 当日の天気が天候予測の判断が難しい微妙な天気であったこと。
3 おりしも、夏山シーズンで本州からの登山客が多数入山していたこと。
4 ガイドによるツアー登山で、ツアー客全員を巻き込んでしまったこと。

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①トムラウシ遭難関連

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雪の残るトムラウシ山山頂付近=17日午前5時47分、共同通信社ヘリから
http://sankei.jp.msn.com/photos/affairs/disaster/090717/dst0907171004006-p4.htm

トムラウシ遭難 全員凍死 防寒具不備か ツアー会社本社も道警捜索 (07/18 21:21、07/19 08:28 更新)

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遺族が確認するため、新得町の町民体育館に運び込まれる遭難者の遺品となった登山用ストック=18日午後2時45分

 大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で、中高年のツアー客ら8人が死亡した遭難事故で、道警は18日午後、業務上過失致死の疑いで行っていたツアー企画会社「アミューズトラベル」(東京)に対する家宅捜索を終え、関係書類などを押収した。事故当時、現場は雨と強風が吹いており、道警は参加者の装備など、防寒装備を含め、同社の安全対策に問題がなかったか捜査している。

 また、司法解剖の結果、8人の死因はいずれも低体温症による凍死と判明。

 トムラウシ山を単独登山中に死亡した茨城県の男性、美瑛岳(2052メートル)で死亡した女性を含め、今回、同山系で遭難、亡くなった10人全員が凍死だった。

 家宅捜索されたのは、東京都千代田区内の同社東京本社と、札幌市北区内の同社札幌営業所。

 道警などによると、死亡した59~69歳のツアー客7人と、同社ガイド(61)の計8人の死亡推定時刻は、遭難翌日の17日未明だった。

 救助活動を行った自衛隊員は、ツアー客の服装について「夏用の長袖シャツを着ている人もいた」と指摘。ある参加者は「防寒具などのチェックはなかった」と証言しており、防寒対策に不備があった可能性が浮上している。

 道警は、家宅捜索で、押収した悪天候など緊急時のマニュアルや、同社がガイドを対象に行っている研修内容なども調べ、客に対する装備の指示やツアー実施前のチェックなども調べる方針だ。

 同社札幌営業所の家宅捜索は18日午後4時ごろに終了。同社東京本社では、同日午後2時すぎから捜査員8人がオフィスビル4階の同社を捜索、関係書類など段ボール8箱分を押収した。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/178011_all.html

大雪山系惨事 登山者「ばたばた倒れた」 (07/17 14:32、07/17 15:32 更新)

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トムラウシ山の山頂北側の北沼近くを進む、道警などの救助隊員と登山者たち=17日午前8時50分

 【新得、美瑛】強烈な風や雨が吹きすさぶ山中で、体力を奪われた人は次々と登山道に取り残された-。大雪山系で16日起きた遭難は、トムラウシ山(2141メートル)で本州の中高年を中心とするパーティー(19人)の8人と別の1人の9人、美瑛岳(2052メートル)で1人の計10人が死亡する大惨事となった。命からがら下山した登山者は「寒さで体力が消耗し(参加者が)ばたばたと倒れていった」と語った。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/177787.html

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②美瑛岳遭難をめぐって、

場所 美瑛岳(標高2052m)

ツアー内容、メンバー 美瑛岳のツアーはコンパス社が主催。女性客三人と男性ガイド三人が三泊四日で十勝岳などを縦走する予定

経過

※道警によると、美瑛岳のパーティーから16日午後、救助要請があった。客の女性1人が低体温症で動けなくなっため、ガイド2人が付き添っている。残り3人は避難小屋に入ったという。このうち、兵庫県姫路市の尾上敦子さん(64)が死亡した。

16日 午後5時50分ごろに、「女性1人が寒さで動けなくなった」と、茨城県のツアー会社を通じて、119番通報。
16日 夜間 道警山岳救助隊ら12人が救助に向かう。
17日 未明 同岳近くの美瑛富士避難小屋と山頂付近に別れていた6人と相次いで合流。
※ このうち兵庫県姫路市の尾上敦子さん(64)の死亡が確認。低体温症の2人を含む5人は命に別条はなし。
※ 道警によると、16日夜の山頂付近は霧で氷点下5度だった。

美瑛岳で1人死亡 トムラウシでも1人意識不明 大雪山系で相次ぎ遭難 (07/17 06:41)

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トムラウシ山から無事下山し、宿舎に向かう男女2人=17日午前1時

 【新得、美瑛】16日午後、十勝管内新得町の大雪山系トムラウシ山(2141メートル)を登山中の本州の中高年を中心とする山岳ツアーパーティーが悪天候のため遭難、7人が山頂付近に取り残された。このうち、女性1人が意識不明、男女5人が衰弱状態。さらに下山途中の男性1人が動けなくなっている。上川管内の美瑛岳(2052メートル)でも本州からの登山パーティーが遭難し、女性1人の死亡が確認された。

 道警などによると、トムラウシ山で遭難したパーティーは、東京の山岳ツアー会社「アミューズトラベル」が募集。参加者19人は、仙台、愛知、岐阜、岡山など道外7県の55歳から69歳までの男女15人と、案内役の同社ガイド多田宇央さん(32)=札幌市北区=と道外の山岳ガイド3人。

 一行は14日に上川管内東川町の旭岳温泉から入山。初日は道内最高峰の旭岳に登り、白雲岳の避難小屋に宿泊。2日目は忠別岳経由で稜線(りょうせん)近くのヒサゴ沼避難小屋に泊まり、16日はトムラウシ山頂を経て、十勝管内新得町のトムラウシ温泉に下山する予定だった。

 一方、美瑛岳で遭難したのは、兵庫県などの男女6人の登山パーティー。16日午後5時50分ごろに、「女性1人が寒さで動けなくなった」と、茨城県のツアー会社を通じて、119番通報があった。道警山岳救助隊ら12人が同日夜、救助に向かい、17日未明に同岳近くの美瑛富士避難小屋と山頂付近に別れていた6人と相次いで合流したが、このうち兵庫県姫路市の尾上敦子さん(64)の死亡が確認された。また、低体温症の2人を含む5人は命に別条はないという。
 道警によると、16日夜の山頂付近は霧で氷点下5度だった。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/177689.html

「強風で動き鈍くなった」=美瑛岳遭難
7月17日12時7分配信 時事通信

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北海道美瑛岳(2052メートル)から下山した山岳ガイドの白石淳也さん(中央)。「十勝岳を過ぎたあたりから風が強くなり、徐々にみんなの動きが鈍くなった」と語った(17日午前9時50分ごろ、美瑛岳登山口)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090717-00000014-jijp-soci.view-000

北海道・大雪山系遭難:美瑛岳で死亡の尾上さん、奉仕団体で活躍 /兵庫
 北海道大雪山系で発生した2パーティーの遭難事故で、美瑛岳で死亡した姫路市新在家本町の尾上あつ子さん(64)は、女性奉仕団体「国際ソロプチミスト姫路」のメンバーとして長年、ボランティア活動を続けてきた。突然の悲報に、関係者は大きなショックを受けた。

 ソロプチミスト関係者によると、尾上さんは20年以上前にメンバーとなり、今年は姫路の奉仕委員長として活躍していた。メンバーの女性は「明るく活発な人で、若いころから山登りが趣味だった。書写山で清掃活動を行ったときも、ロープウエーや車を使わずに歩いて登っていた」と思い出を語った。別のメンバーは「姫路にはなくてはならない人だった」と涙を流していた。

 尾上さん、一緒に登山ツアーに参加して救助された姫路市の大西倫子さん(55)の2人は、ともに姫路市の登山用具店の常連だった。店によると、尾上さんらは今回の登山に備えて5月ごろから準備を進めていたという。男性店員は「2人は北海道の山を楽しみにしていた。ともに経験豊富で十分な装備を準備しており、普通なら考えられない事故だ」と語った。【石川勝己、久野洋、山川淳平】
〔播磨・姫路版〕
http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20090718ddlk28040460000c.html

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③竹内栄さん 単独登山中、南沼キャンプ場付近で死亡(凍死) 関連記事

トムラウシ遭難 遺体は旭医大に搬送 地元新得にも大きな衝撃 (07/18 11:46)
 【新得】大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で遭難、死亡した中高年の登山ツアー客8人の遺体は18日、旭川医大(旭川市)での司法解剖のため、安置されていた十勝管内新得町の町民体育館から同大へと向かった。

 また、ツアーとは別の個人登山者1人の遺体の身元は同日午前、茨城県笠間市住吉、パート従業員、竹内栄さん(64)と家族が確認、これでトムラウシ山で遭難死した9人全員の身元が判明した。竹内さんについて道警は凍死とみており、司法解剖しない方針。

 同体育館には午前3時ごろに遺体搬送のためのバス4台が到着、警察官が遺体を納めたひつぎを一つ一つ慎重に運び、悲しみの対面をした遺族の元を離れた。

 道外などから駆けつけた約35人の遺族は、体育館などで一夜を過ごした。同館内には線香の香りが立ち込め、白っぽいカーテンが閉じられたまま、ひっそりと静まり返っていた。

 関係者によると、今回のツアー客が下山する予定だった、トムラウシ山の登山口まで行きたいと希望している遺族もいるという。

 一方、地元の新得町も9人もの登山客が亡くなる大惨事に強いショックを受け、遺体が置かれていた町民体育館などの一般利用を中止。町民からも「家族の思いは察するに余りある。トムラウシ山は地元にとって自慢の山だけに、今回の遭難事故は大きなショック」といった声が出ている。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/177931.html



by segl | 2009-07-22 15:12 | Ⅶ 省察


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