サンゴの分布が北上する異変が国内の海で起きている。海水温度の上昇で、死滅するはずの種類のサンゴが生き残りやすくなっているからとみられる。漁業への悪影響も懸念され、国立環境研究所は少なくとも10年かけて大規模な定点監視調査に乗り出す。(山本智之)
北上現象が確認されているのは千葉県館山市沖、和歌山県南部の串本沖、長崎県の五島列島など。
館山市沖では07年、伊豆半島が北限とされるサンゴのエンタクミドリイシが発見された。串本海中公園センターの野村恵一・学芸員によると、串本では90年代半ばからサオトメシコロサンゴやスギノキミドリイシなど23種の南方系サンゴが新たに定着。五島列島では08年、福岡大の杉原薫助教が北上したクシハダミドリイシの定着を確認した。
サンゴの幼生は黒潮などの暖流で本州や四国などの沿岸に運ばれるが、南方系の種類は通常、水温の下がる冬に死滅する。国立環境研究所の山野博哉・主任研究員によると、館山市沖では2月の平均水温が85年以降、年0・06度のペースで上昇しつつある。
サンゴが増えると、それまで生えていた海藻類が減り、そこをすみかとする魚も減る恐れがある。北上してきたサンゴの種類や量を把握し、定着後の成長などの状況や温暖化の影響も調査する。