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教育環境の整備・充実に注力

中国で活動 「僻地で学校を建設しよう」

四川大地震で被害を受けた校舎は阿含宗などの支援で再建

 今年4月14日、中国・四川省名山県黒竹鎮で小学校の校舎の完工を祝う式典が行われた。ここは昨年5月の四川大地震で大きな被害を受けた地域のひとつで小学校も全壊した。あれからほぼ1年、新校舎は鉄筋コンクリート造り6階建てで、700人の生徒たちが学ぶことになる。子供たちが演奏する鼓笛隊のメロディーにも待ちに待った学舎の完成を喜ぶ気持ちが満ちているようだった。

 黒竹鎮は州都の成都市から車で約3時間の農村。成都からの幹線道路も地震の被害に遭った。復旧が進んでいるものの、今も途中から未舗装のまま。道路網ばかりか地震のつめ跡はそこここに残っている。校舎も1日も早い復旧が待たれていた。そこに阿含宗から支援の手がもたらされた。それは「僻地(へきち)へ学校を建設しよう」と2001年から中国で実施している社会活動の一環で、黒竹鎮は9校目になる。

 そして地元では感謝の気持ちを表そうと「黒竹鎮桐山希望小学校」と命名。完成式典には日本から阿含宗の関係者も駆けつけたが、一行を前に生徒らが次々に感謝のあいさつを披露した。

 「阿含宗の皆さまは私たちに水晶のような美しい愛の心を届けてくださいました」(5年女子)、「皆さまの期待に応えて社会に役立つ人間になりたい」(5年男子)、「皆さまのように困った人を助けてあげられるような人間を目指します」(6年男子)

 また、小学校の校長(40歳代女性)は「桐山管長と阿含宗の皆さまへの感謝の気持ちを決して忘れないよう子供たちに教えてまいります。生徒たちとともに優秀な成績でもって、このご恩にお応えするよう努力します」と気持ちのこもったあいさつを述べた。

 桐山管長はかつて「平和には、争いと争いの間に訪れるわずかな期間の平和と恒久平和の2種類がある。恒久平和の実現には道なお遠い現実を前に、果たして心の底から命がけで平和を祈ってきただろうか、と反省している」と語ったことがある。日常の活動のなかで積み上げたそばから崩れる砂上の楼閣のように平和運動の難しさ、もろさ、手応えのなさを実感してきたからこその心情の発露ではないか。

 阿含宗は宗教教団が社会や文化に貢献することも重要な宗教活動のひとつと位置付けている。宗教行事を行い、世界平和を祈ることは宗教教団として当然のことであるが、同時に社会や人類に貢献する具体的な活動を継続して展開することも世界平和の実現に不可欠であると考えるからだ。

 1980年代からアフリカ問題に関心を持ち、アフリカ飢餓基金への寄付、スーダンに井戸を寄付、チャド共和国にトラック寄付などの活動に取り組んできた。

 また中国との友好にも力を入れてきた。1999年に阿含宗中国事業管理委員会を設立、中国との交流に多面的に取り組む体制を確立した。僻地に小学校を建設する運動もそのひとつで「毎年1校」を目標に、これまでに遼寧省、甘粛省、河北省、山東省、湖南省、貴州省、青海省、広西自治区などで校舎の新・改築事業に貢献している。

 教育環境の整備・充実に注力しているのは「教育こそが人間形成の根幹であり、国の基盤を形成する。それゆえ経済的に恵まれない家庭の子息にも教育を受ける機会を与えたい。教育を通じて次の世代の担い手を育てることも平和運動」との考えによる。
 

1994年から始まったスリランカでの教育支援活動で延べ8275人の奨学生が誕生

 スリランカでは、「スリランカ・阿含宗友好財団」を通じて経済的な理由で教育を受けられない小・中・高校生へ毎年750人規模での奨学金授与を十数年間続けている。現地の高校に事務所を設け、ボランティアの力で小さな子供たちには教科書や文房具、衣類などのほか、毎月1回食料品と学費を手渡すというきめ細かな活動を続けてきた。

 2008年度まで計16回で延べ8275人が受給、そのなかには日本留学を実現した奨学生や、社会の一線で活躍している奨学生も少なくない。また財団の目指す人材育成活動は奨学金制度だけではなく、図書館や職業訓練校の開設などの社会教育環境の充実にも及んでいる。

 このほかイタリア、タイ、ブータン、チベット、モンゴルなどで継続的な奨学金や教育支援活動を行っている。フランス・ルーブル美術館に視覚障害者用展示室を寄贈した(2002年)ことがきっかけになり同美術館の教育文化活動で継続しての寄付契約を結んでいる。

 教育・社会活動で最も重要なのは「無欲・無心」を貫くこと。ある国の高官に継続しての寄付行為を申し出た際、「何を見返りに期待しているのか」と聞き返されたことがあった。桐山管長は強い口調で「そんな卑劣な気持ちはみじんもない」と切り返し、以後その国と強い信頼関係を構築している。これも優れた「命がけ」の宗教活動といえないか。

【写真説明】
(上)四川大地震で被害を受けた校舎は阿含宗などの支援で再建(今年4月14日、四川省黒竹鎮で)
(下)1994年から始まったスリランカでの教育支援活動で延べ8275人の奨学生が誕生(昨年11月コロンボ市での第16回授与式の模様)

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