2009年8月4日6時57分
マウスの前歯の後ろの、口の奥に生えた再生歯。実験用に光らせている=辻教授提供
マウスの胎児から歯のもとになる細胞を取り出して培養し、痛みの感覚がある、ほぼ完全な歯に再生させることに東京理科大の辻孝教授(再生医工学)らのグループが成功した。人の歯の再生だけでなく、肝臓や腎臓などの臓器の再生医療につながる成果として期待される。米科学アカデミー紀要電子版に発表する。
奥歯の位置に移植したところ、正しいかみ合わせの位置で成長が止まり、硬さは正常な歯と同じだった。刺激を与えるとマウスの延髄に、歯痛を感じた際にできるたんぱく質がたまることから、歯と脳の神経がつながっていることも確認された。約8割で、ほぼ完全な歯ができるという。グループは、マウスの歯の再生自体には07年に成功していた。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)から歯のもとになる細胞を作り、歯周病や虫歯で失った歯の跡に移植して再生できれば、入れ歯がいらなくなると期待される。また、再生医療の臨床で応用が進んでいるのは皮膚や角膜といった比較的単純な組織が多く、今回の確認によって、歯と同じように複雑で立体的な臓器の再生医療につながる可能性が示された。(林義則)