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編集部に質問状:「サクラダリセット」乙一が絶賛 村上春樹のような透明感 青春SFの新鋭登場

河野裕さんのデビュー作となる「サクラダリセット」
河野裕さんのデビュー作となる「サクラダリセット」

 話題の作品の魅力を担当編集者が語る「編集部に質問状」。今回は、超能力者が集う町を舞台に不思議な事件が起こる河野裕さんの青春SF小説「サクラダリセット」(角川書店)です。担当の角川スニーカー文庫編集部・長谷川高史さんに話を聞きました(本文はほぼ原文のまま)。

 --作品のあらすじについて教えてください

 舞台は、咲良田(さくらだ)という小さな都市で、いわゆる能力者が集っています。ただ、咲良田の外に出ると、能力のことを忘れてしまうので、この都市の中でしか、能力は使われない--という設定です。

 ヒロインの春埼美空(はるき・みそら)は、「リセット」という能力を持っているのですが、これは時間を3日分だけ元に戻すという非常に強力な能力です。ただし、リセットをかけてしまうと、リセット前に何が行われていたか、春埼(はるき)自身も記憶をなくしてしまいます。一方、主人公の浅井ケイは、「記憶保持」の能力をもっていて、これは「リセット」にも対抗できるくらい強力です。二人は、学校の「奉仕クラブ」に所属していて、依頼を受けて解決していく……というのが基本ラインです。設定だけ見ると、「能力バトル」もののような印象を受けるかもしれませんが、作品の魅力は、「文章そのもの」にあると思います。

 --作品の魅力は?

 本作は、光栄にも作家の乙一さんから推薦文をいただいているのですが、読者の方からの感想を見ていると、乙一さんや村上春樹さんにも通じる、「透明感のある文章」に引かれる方が多いようです(ちょっとほめすぎですが)。

 次に、主人公のケイとヒロイン・春埼(はるき)の関係ですね。春埼(はるき)は、少し変わった性格なんですが、ケイに対してはかなり一途です。この二人の関係にキュン!とくる読者の方も多いですね。なお、作品の雰囲気は、CMで、少しお分かりいただけると思います。ナレーションはアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」の長門有希役の声優・茅原実里さんです。

 --作品の誕生した経緯は

 作者の河野さんは、神戸にあるグループSNEというクリエーター集団に属しています。「ソード・ワールド」を展開している会社といったほうが分かりやすいでしょうか? また、SNE出身の作家さんには、「ロードス島戦記」「魔法戦士リウイ」の水野良さんや、「神は沈黙せず」「妖魔夜行」の山本弘さんなどがいらっしゃいます。

 実は、SNEとは長い付き合いなのですが、あるとき、SNE所属の作家さんに、「こんな原稿があるんですが、読んでみますか?」と言って渡されたのが、「サクラダリセット」でした。ただ、原稿を渡してくれた作家さんが「ライトノベルっぽくないんですが……」と自信なさげだったので、期待せずに読み始めました。ところが、これがものすごく面白くて! あっという間に読み終えて、翌日、SNEの安田均社長に電話して、「出版させてください」とお願いをしました。

 --作者の河野裕さんはどんな方ですか。

 非常に素直な好青年です。ああ、こういう人が、こういう小説を書くんだなあ、という感じの。SNE所属なのでゲーム関係の仕事もされてるんですが、今は、とにかく忙しいみたいです。でも、若いから大丈夫だろう、と勝手に思っています。小説に関しては、どんなことを書いてくるか、書き上がるまで想像がつかないところが、楽しみでもあり、怖いところでもあります。

 --イラストの椎名優さんを起用したのは。

 椎名さんのイラストの特徴は、「物語性がある」ということだと思います。「サクラダリセット」の雰囲気、透明感を表現できるのは、椎名さんしかいないと考え、出版を決めてから、すぐさま椎名さんに連絡をとりました。

 ただ、これまでの椎名さんの絵でいくのではなく、新しいことに挑戦してみたい、新しい椎名ワールドを展開してみたいという意気込みがありました。ご本人に相談したところ、こちらの提案に非常に乗り気になってくださったので、あれやこれやと試しています。ぜひ、実際に本をご覧になってみてください。河野さんの文章と椎名さんのイラストのコラボが素晴らしいです。

 --読者にひと言お願いします。

 発売前は、こうした作品が受け入れられるのか、不安がありました。しかし、発売3週間で3刷りが決まりました。ライトノベルとしては地味な作品ですが、じっくりいい作品を作って、きちんと読者に届けていきたいと思います。

 本作は、2巻の発売も決定していますので、そちらのほうも、お待ちいただければと思います。

 また、発売中の雑誌「ザ・スニーカー8月号」には、河野さんと椎名さんのコンビで特別読み切りを掲載しています。「サクラダリセット」とは別作品となります。「八月一日〇時一八分〇八秒」というタイトルで、ミニスカートをはいた死神の女の子と、うそつきな少年のお話です。そちらもぜひご覧ください。がんばっていきますので、応援よろしくお願いします!

「サクラダリセット」 河野裕著 椎名優画 角川書店 1巻が発売中 620円

2009年7月14日

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