別府現代芸術フェスティバルでは、ダンスや音楽も。「オープン・ルーム―別府市中央公民館をめぐるジャーニー」では、市内の子どもたちもダンスを繰り広げた=6月14日、別府市中央公民館
別府市を舞台に6月まで約2カ月間にわたって開かれた、別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」。地元をはじめ県民の反応はいまひとつだったものの、“アートツーリズム”ともいえる泉都の新たな可能性を示した。別府という街と現代アートは今後、どのように融合していくのだろうか―。
県外の客が7割
フェスティバルのメーンプログラムは、作品を街に点在させた展覧会「アートゲート・クルーズ」。世界で活躍する8組のアーティストが会期前から別府入りし、人や建物、歴史などに触れて感じたインスピレーションを基に“別府のための作品”を制作した。
巨大な壁画、映像、街のあちこちに現れたネオン管…。街全体が大きな美術館となり、地図を手に巡る来場者は作品とともに街の散策を楽しんだ。
訪れた延べ9万人以上のうち、7割が県外客。「別府は初めてという人が多かった」(事務局)という。国際観光都市にとって無視できない数字だが、事前の観光関係者へのアプローチが十分でなく、現代芸術の“とっつきにくさ”もあって、フェスティバルを利用しようという動きはほとんどなかった。観光振興や地域活性化を目的の一つに掲げているものの、「市民の間では盛り上がらなかった」と感じてしまった人は多い。
「一番の目的は、地方でチャンスが少ない現代芸術の鑑賞機会を提供すること」と、総合プロデューサーを務めたNPO法人「BEPPU PROJECT」代表の山出淳也さん(38)。制作の場として、自然や温泉資源に恵まれ、レトロなイメージが残る別府にこだわった。
「芸術振興イコールまちづくりではない。しかし、別府という場所に結び付いたアート活動の在り方を考えれば、関係者が街をしっかりと見ていくことになり、結果的にはまちづくりにつながっていく」と話す。
市も支援に意欲
別府を見詰めた別府のための作品が誕生し、街のあちこちにアート空間が生まれる―。次第にアートに彩られる別府は、ほかの地域にない新たな切り札を手に入れることになる。そのためには今後、市民と現代芸術との接点を増やして理解を広げ、いかに街を、人を大きく巻き込むかが課題だろう。
フェスティバルは来年、再来年と小規模に開き、広報の在り方や来場者の導き方などを改善していくという。そして2012年に再び大きく開く計画。
「最低でも10年のスパンが必要。成果は(大規模に)3回開催して出てくると思っている」と山出さん。「別府の都市戦略にアートツーリズムが位置付けられたら」との期待に、古庄剛・市ONSENツーリズム部長は「これまで文化はうまく生かせてなかった。この新しい流れを続けてほしい。市としてもできる範囲で支援したい」と話す。
回を重ね、地域に根差した“祭り”となったとき、全国から、世界から人が集まる“アートの街”となるかもしれない。
(別府支社・山本吉純)
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