「結」むすび
6月のあの悪夢から、私は必死になって、いや躍起になっていろいろ調べた。
あっちこっちに電話しまくり、先生方にはお会いするたびに機関銃のように質問をぶつけまくった。
どうしても知りたかった。
いつになったら狂ったように繰り返している消毒をやめていいのか、いつになったら玄関の子達を腕に抱いていいのか、いつになったら玄関の子達をケージの外で遊ばせてあげられるのか、いつになったら、いつになったら他の子猫のように・・・
ネットでいろいろ調べていると、空気に乗ってウィルスが飛ぶとか、感染した猫は一生ウィルスを排出し続けるとか、3年以上は家中がウィルスに汚染されているとか、パルボの猫が家にいる人は一切出歩くなとか、窓を開けてもいけないとか、そんな噂が飛び交っていた。

毎日のように保護猫のご相談があり、中にはこちらで引取りをしなければ救えないのも含んでいて、、、でも先生方からも私がお預かりすることは大変危険だと言われ、同時に先住猫がいるお宅にパルボウィルス発生のあった環境から新たに猫をお譲りするのはとても危険だとご指摘を受けた。
ウィルスが完全になくなるまでしばらく活動そのものを休止すべきだと言われ、出歩かないほうが良いと言われ、譲渡活動も休止せざるをえなくて、私はまったく身動きが取れなかった。

保護ブログのメールボックスより、推進員なら推進員らしく誠意を見せてほしい、というような内容のメールが何通も届いた。
推進員としていったいどうするべきなのか、私は考えた。
本当に間違った情報や間違った噂を信じている人が大勢いる、だとしたら、やはりきちんとした情報を提供すべきだ、そう思った。
飛び交っている間違った噂を打開することのできるだけの正しく詳しい情報を提供すること、それが推進員としてしなくてはならないことだという答えに行き着いた。
これは自分自身へのケジメでもあった。
センターより子猫を引き出した(起)、ウィルス感染が発生して新入りすべてを喪った(承)、もともといた保護猫にもウィルス感染の恐れが出た(転)、、、と、ブログはここまでて止まってしまった。
それではただ単にブログを見てくださっている方たちにウィルスの恐ろしさを見せつけただけで、大事な「結」の部分が抜け落ちている、それではいけない、そう思った。
それで何が何でも正しい情報を得ようと必死だった。
約1ヶ月をかけて、あちらこちらに調査(勉強のためとお話して)に協力していただき、様々に専門的なことを教えていただいた。

いろいろ調べた結果、ウィルスは空気中には飛散および拡散しない(一瞬飛散しても必ずどこかに付着してのみ存在する)事がわかり、新たに受け入れる子猫をおく環境を完全に消毒殺菌し、環境内に付着している恐れのあるウィルスを新入りの子猫に接触させない事が完璧にできれば問題ない、という答えに行き着いた。
そしてもしも5姉妹が発症しないでいるだけのキャリアだった場合には、ワクチン接種によってワクチンの抗体価が上がるまでに活動休止中のウィルスが目を覚まして体の攻撃をはじめる事、初乳をほとんど飲んでいない(母子免疫の極めて少ない)ワクチン未接種の子猫がなんの症状も見せずにキャリアでいることは考えにくいこともわかり、ワクチン接種後には極度の緊張感が走ったが、大学病院の内科の先生やワクチンメーカーの責任者(獣医師資格を持つ)の方からのお話により、私は不安を拭い去ることができ、逆に勇気を与えられた。
へその緒付きで引き取った母子免疫の乏しい子猫たち5頭は、けして広いわけではない同じ家屋内にいてもワクチン未接種状態において完全にウィルスから守りきることができたし、また瀕死の重体であった極度に免疫力体力ともに低下していた2頭の子猫も、ウィルスに汚染されているであろう環境下においてもキャリアにすらしない事ができた。
そして保護部屋にいた5姉妹中の1頭は、晴れて1歳程度の先住猫のいるお宅への譲渡ができた。
これらの事実は、正しい管理ができれば守りきることができると、それを証明できたと思う。
そしてその事実は、これから保護していく方たちにも大きな勇気や励みになると思う。



県や保護活動をしている仲間や先生方から、どうしてパルボ発生などと正直にブログに書いたのだと指摘された。
椿の出産の時にも、先輩からはいちいち本当のことを書かず、後々親子で保護したと紹介すれば良いと、それが自分を守るためでもあるとご指摘を受けた。
もちろん書かない事は簡単だったし、(ネット上では)隠す事だってできた。
けれど私はそうしたくなかった。
以前に仲間と話したことがある。
いつまでも拾い続けていないで、そろそろ啓発半分と政治的な動き(役所などに要望を出し、制度を変えたり新しい制度を作ったりする働きかけ)をすべきではないかと。
けれど私はこう答えた。
ビニール袋に入れられて川を流れてきた子猫を拾ったことがなければ、川に流される子猫のことは語れないし、センターに収容された子猫を見たことがなければ、センターに収容された子猫のことは語れない、と。
事実をありのまま見て体験し、ありのままに伝えなければ真の啓発はできない、それが私の考え方だった。
だから私はパルボの事をブログでありのままリアルタイムで公表したことについて、それによって自分で自分の首を絞めてしまったことについて、まったく後悔していない。
もし、どこかで子猫を拾った人が私のブログを偶然見てくれたとき、その恐ろしさと虚しさを身近に感じ、その上で正しい知識を持ってくれたら、それで書いたことには書いただけ意味がある。

こう書くとまたご指摘を受けそうだが、私は今まで、いつか芽を出してくれる事を祈ってたくさんの「幸せの種」を蒔きたいと思ってきた。
こうしている今も、小さな命を拾い上げてくれる人や、メス猫の捕獲を試みようと、心が動いている方が大勢いらっしゃる。
あっちこっちでその種が発芽し、発芽したことを教えてくれるメールが届くのを拝見するたびに、ブログを書いていて良かったと思う。
本当はまだまだ書きたいことはたくさんある。
下半身不随の猫にも生きる権利があること、猫が苦手な方も好きになってくれるような猫の魅力について、実際に拾ってしまった方々が参考にできるような記事、たくさんの猫を取り巻いている現実、日々の思い、毎日毎日綴り続け、そしてブログを通じても(実際にお会いすることが困難な距離にお互いに住んでいても)多くの方と交流を持ちたい。
・・・その思いは変わらない。
6月の終わりごろ、8月からブログを再開すると決めていた頃は、まだこれまで通りに更新を再開しようと思っていたし、それだけのエネルギーも持っていた。
けれど書き続けることへの意欲やエネルギーは日々減少し続け、ブログを見てくださった方からのコメントを受け止めるだけの気持ちの余裕が今は持っていないことに気づいた。
本当に情けない話で、自分がそんなに弱かったのかと、これまでのはただの強がりだったのかと自分自身に呆れるのだが、やはり何かを発信していくことに今はかなりの恐怖を感じてしまう。

保護ブログはもともと日常的に書くブログとはスタンスが違った。
日常ブログが広く多くの方に私の体験したことや思いなどを読んでいただき、一緒に考えたり意見交換したりするための交流の場でもあったのに対し、一方の保護ブログは、保護している猫を欲しいと思ってくださる方と保護している猫を繋ぐ為に設けたブログであったため、日常的なことや私の思いなどは極力書かないようにしてきたし、最低限の啓発内容と猫を迎えた方が参考にできるような内容と、そしてその猫のエピソードや魅力などを綴る為の単なる情報提供の為のブログであった。
開設当初からコメント欄は閉じてあり、ネット上で個人的に交流があったり気に入って訪問しているサイトのリンクなども行わなかった。
これからもそのスタンスは変えるつもりはないのだが、日常的な事から極力私の感情を省いた事実のみをメモとして残し、家の猫と犬の事も紹介程度に載せるようにし、今後は保護ブログの更新のみにしていくつもりでいる。
ただ、書きたい思いが消えうせたわけではないので、いずれ新しくブログを立ち上げることができたらいいなと、その日が来ることを祈り、このブログの更新は、これをもって終了とする。

ブログの終了にあたり、ずっとブログリンクをしようと思いながら後回しになってしまっていたので、その方達のブログを訪問し、リンクの承諾を得た方たちのブログをリンクしたいと思う。
それからすでにリンクしてある方たちには、おひとりずつご挨拶に向かうつもりでいる。
先にTOP記事を修正し、それからひとつずつ作業していこうと思う。
今の気持ちは、長年通った会社を退くのと似ているかも知れない。
まだまだ続けたいという気持ちとここで終止符を打つべきだという気持ち、まだまだすべき事やできる事があるはずだという気持ちとすべてを出し切った脱力感に似た気持ち、大好きだった場所に通えなくなる寂しさと責任を降ろす安堵感にも似た寂しさ、恋人と別れなければならないような、そんな気持ちに似ているかも知れない。

by kotokoto_kotoko | 2009-08-02 23:38 | 徒然帖
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彼らの世界はきっと、人間界のような愚かな世界とは違うのでしょう。彼らは人間にひどく傷つけられても、それでも尚人間を愛してくれるのです。

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